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ミツハナ脱退編
友巴の希望
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月曜の朝、教室にはまだ生徒の姿はまばらだ。俺の席の周りには誰もいない。
教室の窓から朝陽がきらめいている海を眺めていると元気な声が聞こえた。
「おはよう、シュウゴくん」
朝からニッコリと微笑んでくれる可愛い天使、友巴ちゃんだ。
「友巴ちゃん、おはよう」
「ホノカちゃんの誕生日会はどうだった?」
友巴ちゃんは、ふわっと俺の隣に座った。
「うーん、ひとことでは言えないけど、ホテルは豪華だったし、テーマパークもアトラクションはあんまり乗れなかったけど厳選して乗ったから楽しかったよ」
「ホノカちゃん、喜んでた?」
「たぶん。そうだといいけど」
おそらく帆乃花ちゃんは大満足のはずだ。
帆乃花ちゃんとの二人っきりデートのことを、友巴ちゃんに根掘り葉掘り聞かれるのが、なぜか気が引けて話題を変えた。
「友巴ちゃんの誕生日会はどんな風に過ごしたい?」
「実はね、私、ずーっと前からシュウゴくんとの二人っきりデートのこと考えてたの」
「え、いつから?」
「一年生の頃からだよ。シュウゴくんとクラスメイトになる前から」
「一年の頃から俺とデートすること考えてたの? めっちゃ嬉しいけど、早く言ってよぉ。すぐにデートしたのに」
「だって私、地味だもん」
「いやいや。たしかに以前は大人しめの印象だったけど、今や学校トップレベルの可愛さだよ。俺の中ではダントツ、ぶっちぎりの可愛さだけどね」
なんせクラス、いや学校のアイドル、帆乃花ちゃんを差し置いて、一目惚れ、初恋の相手ですから。
「ありがとう。へへ、シュウゴくんに言ってもらうとすっごい嬉しい」
照れてる友巴ちゃん、めっちゃキュートや~。
「で、どんな二人っきりデートをご希望ですか?」
「ズバリ、胸キュンデートがいい!」
「む、胸キュンデート??」
「そう。胸がキュンってするデート」
それはわかるけど……。
「えーっと具体的には?」
「私の誕生日だから、シュウゴくんが考えてくれると嬉しいな」
友巴ちゃんが頬杖をついて天使の微笑みを見せる。その笑顔とその仕草に、俺の口から勝手に言葉が出る。
「わかった。任せておいて。でも、友巴ちゃん的に例えばを教えて……」
「おはよー、二人とも」
「あっ。おはよう、ホノカちゃん。昨日は楽しかったみたいだね。ホテルも豪華だったって……」
帆乃花ちゃんが楽しそうにホテルやテーマパークの話をする。それに友巴ちゃんがキャっと言ったり笑ったりする。
女子トークが弾むのはいいけど、もう少し声を小さくお願いします……。
はあっ……。結局、友巴ちゃんの具体的なデートイメージが聞けなかった。胸キュンデートってなんだ……。まったりデートならココアマンションでゆっくりと友巴ちゃんとエッチが、いや友巴ちゃんのお祝いができるんだけど……。
そうだ。ホテルのお礼も兼ねてあけみっちに相談してみよう。あけみっちが高校生の時に胸キュンデートしていた可能性はおおいにある。
音楽室から優雅なピアノの音が聞こえてくる。
あけみっちには、授業後に相談があることを事前に伝えておいた。音楽室にはあけみっち一人だけのはずだ。
ノックして入る。
ピアノの演奏をやめ、あけみっちが俺に微笑む。
友巴ちゃんは天使、帆乃花ちゃんはアイドルの笑顔だとしたら、あけみっちはセクシーな女神の笑顔だ。
「また相談? 今度は何かしら」
あけみっちは嫌がるそぶりではなく、興味津々と言った口調で聞いてきた。
「あけみっち。高校時代を思い出して、胸キュンデートのこと教えて」
「なんだ、そんなことね」
あけみっちのテンションが少し下がったような気がする。
「胸キュンデートの何を教えてあげればいいの?」
「具体的に、胸がキュンとなるデートってどんなことをすればいいのか……」
「うーん、そうね……。好きな人と一緒にいるだけで、キュンってなるものだけど、だんだん新鮮味がなくなってくるのも事実よね。だから普段とは違う梅谷くんの姿を見せたり行動するといいかもね」
「普段とは違う姿や行動……。うーん」
「まあ定番だけど、手の繋ぎ方を普段より親密にしたり、一つのイヤホンを共有して音楽を聴くとかかな」
「なるほど……」
「あとは、梅谷くんは王子様キャラじゃないから、王子様キャラっぽくしてみるのもいいかもね。でもボロが出るからそれは一回きりね」
「王子様キャラって?」
「自然の流れでそんなことする人は実際にはいないけど、壁ドンシチュエーションを二人で演じてみるとおもしろいかも。それいいなー。梅谷くん、私としてみる?」
「なるほど、なるほど。二人で演じてみるとたしかにおもしろそう」
友巴ちゃんはノリノリで演じそうだな。
「まあいいわ。ところで大阪のホテルはどうだった?」
「あ、そうだ。ホテル、ありがとう。お土産はあけみっちが学校を卒業するときに渡すのでお楽しみに」
「ふふ、何かしら。楽しみにしておくわ」
あけみっちが学校を辞める際に、クラスメイトの写真や寄せ書きポストカードを入れたアルバムを渡す。このことは、帆乃花ちゃんだけでなく友巴ちゃんにも言ってある。サッチは口が軽そうなので、まだ黙っているが。
「あの部屋はスイートルーム?」
「そうよ。ジュニアスイートがたまたま空いていたから。梅谷くん、お客様様目線で駄目だと思った点を率直に教えてくれる? 今後の参考にするわ」
「うーん、駄目な点か……」
駄目な点なんてあるわけがないのだが、あけみっちの役に立つなら何か搾り出そう。
「あえて言うなら、お風呂の鏡が曇り止めされていると良かったかも」
曇っていたせいで鏡越しに帆乃花ちゃんのエッチな姿が見られなかったよ……。
「そうね。早急に改善しておく。次は?」
「つ、次? うーん……。細かいことだけど、冷蔵庫の中がフリーなのはいいけど、硬水のミネラルウォーターとは別に軟水のミネラルウォーターも欲しかったなぁ」
「そうなのね。硬水の方が美容に効くからって評判が高いんだけど、飲み慣れない人には軟水の方がいいかもね。うん、両方置くことにするわ。ありがとう。他にも思い出したら言ってくれる? ホテルのためになるから」
「わかった」
「じゃあ準備室に行くわよ」
「何かあるの?」
「せっかくのサブスクなのに、利用しないの? 胸キュンシーンからの対面立位を教えてあげる」
「胸キュンシーンからの対面立位?」
教室の窓から朝陽がきらめいている海を眺めていると元気な声が聞こえた。
「おはよう、シュウゴくん」
朝からニッコリと微笑んでくれる可愛い天使、友巴ちゃんだ。
「友巴ちゃん、おはよう」
「ホノカちゃんの誕生日会はどうだった?」
友巴ちゃんは、ふわっと俺の隣に座った。
「うーん、ひとことでは言えないけど、ホテルは豪華だったし、テーマパークもアトラクションはあんまり乗れなかったけど厳選して乗ったから楽しかったよ」
「ホノカちゃん、喜んでた?」
「たぶん。そうだといいけど」
おそらく帆乃花ちゃんは大満足のはずだ。
帆乃花ちゃんとの二人っきりデートのことを、友巴ちゃんに根掘り葉掘り聞かれるのが、なぜか気が引けて話題を変えた。
「友巴ちゃんの誕生日会はどんな風に過ごしたい?」
「実はね、私、ずーっと前からシュウゴくんとの二人っきりデートのこと考えてたの」
「え、いつから?」
「一年生の頃からだよ。シュウゴくんとクラスメイトになる前から」
「一年の頃から俺とデートすること考えてたの? めっちゃ嬉しいけど、早く言ってよぉ。すぐにデートしたのに」
「だって私、地味だもん」
「いやいや。たしかに以前は大人しめの印象だったけど、今や学校トップレベルの可愛さだよ。俺の中ではダントツ、ぶっちぎりの可愛さだけどね」
なんせクラス、いや学校のアイドル、帆乃花ちゃんを差し置いて、一目惚れ、初恋の相手ですから。
「ありがとう。へへ、シュウゴくんに言ってもらうとすっごい嬉しい」
照れてる友巴ちゃん、めっちゃキュートや~。
「で、どんな二人っきりデートをご希望ですか?」
「ズバリ、胸キュンデートがいい!」
「む、胸キュンデート??」
「そう。胸がキュンってするデート」
それはわかるけど……。
「えーっと具体的には?」
「私の誕生日だから、シュウゴくんが考えてくれると嬉しいな」
友巴ちゃんが頬杖をついて天使の微笑みを見せる。その笑顔とその仕草に、俺の口から勝手に言葉が出る。
「わかった。任せておいて。でも、友巴ちゃん的に例えばを教えて……」
「おはよー、二人とも」
「あっ。おはよう、ホノカちゃん。昨日は楽しかったみたいだね。ホテルも豪華だったって……」
帆乃花ちゃんが楽しそうにホテルやテーマパークの話をする。それに友巴ちゃんがキャっと言ったり笑ったりする。
女子トークが弾むのはいいけど、もう少し声を小さくお願いします……。
はあっ……。結局、友巴ちゃんの具体的なデートイメージが聞けなかった。胸キュンデートってなんだ……。まったりデートならココアマンションでゆっくりと友巴ちゃんとエッチが、いや友巴ちゃんのお祝いができるんだけど……。
そうだ。ホテルのお礼も兼ねてあけみっちに相談してみよう。あけみっちが高校生の時に胸キュンデートしていた可能性はおおいにある。
音楽室から優雅なピアノの音が聞こえてくる。
あけみっちには、授業後に相談があることを事前に伝えておいた。音楽室にはあけみっち一人だけのはずだ。
ノックして入る。
ピアノの演奏をやめ、あけみっちが俺に微笑む。
友巴ちゃんは天使、帆乃花ちゃんはアイドルの笑顔だとしたら、あけみっちはセクシーな女神の笑顔だ。
「また相談? 今度は何かしら」
あけみっちは嫌がるそぶりではなく、興味津々と言った口調で聞いてきた。
「あけみっち。高校時代を思い出して、胸キュンデートのこと教えて」
「なんだ、そんなことね」
あけみっちのテンションが少し下がったような気がする。
「胸キュンデートの何を教えてあげればいいの?」
「具体的に、胸がキュンとなるデートってどんなことをすればいいのか……」
「うーん、そうね……。好きな人と一緒にいるだけで、キュンってなるものだけど、だんだん新鮮味がなくなってくるのも事実よね。だから普段とは違う梅谷くんの姿を見せたり行動するといいかもね」
「普段とは違う姿や行動……。うーん」
「まあ定番だけど、手の繋ぎ方を普段より親密にしたり、一つのイヤホンを共有して音楽を聴くとかかな」
「なるほど……」
「あとは、梅谷くんは王子様キャラじゃないから、王子様キャラっぽくしてみるのもいいかもね。でもボロが出るからそれは一回きりね」
「王子様キャラって?」
「自然の流れでそんなことする人は実際にはいないけど、壁ドンシチュエーションを二人で演じてみるとおもしろいかも。それいいなー。梅谷くん、私としてみる?」
「なるほど、なるほど。二人で演じてみるとたしかにおもしろそう」
友巴ちゃんはノリノリで演じそうだな。
「まあいいわ。ところで大阪のホテルはどうだった?」
「あ、そうだ。ホテル、ありがとう。お土産はあけみっちが学校を卒業するときに渡すのでお楽しみに」
「ふふ、何かしら。楽しみにしておくわ」
あけみっちが学校を辞める際に、クラスメイトの写真や寄せ書きポストカードを入れたアルバムを渡す。このことは、帆乃花ちゃんだけでなく友巴ちゃんにも言ってある。サッチは口が軽そうなので、まだ黙っているが。
「あの部屋はスイートルーム?」
「そうよ。ジュニアスイートがたまたま空いていたから。梅谷くん、お客様様目線で駄目だと思った点を率直に教えてくれる? 今後の参考にするわ」
「うーん、駄目な点か……」
駄目な点なんてあるわけがないのだが、あけみっちの役に立つなら何か搾り出そう。
「あえて言うなら、お風呂の鏡が曇り止めされていると良かったかも」
曇っていたせいで鏡越しに帆乃花ちゃんのエッチな姿が見られなかったよ……。
「そうね。早急に改善しておく。次は?」
「つ、次? うーん……。細かいことだけど、冷蔵庫の中がフリーなのはいいけど、硬水のミネラルウォーターとは別に軟水のミネラルウォーターも欲しかったなぁ」
「そうなのね。硬水の方が美容に効くからって評判が高いんだけど、飲み慣れない人には軟水の方がいいかもね。うん、両方置くことにするわ。ありがとう。他にも思い出したら言ってくれる? ホテルのためになるから」
「わかった」
「じゃあ準備室に行くわよ」
「何かあるの?」
「せっかくのサブスクなのに、利用しないの? 胸キュンシーンからの対面立位を教えてあげる」
「胸キュンシーンからの対面立位?」
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