席替えから始まる学園天国

空ー馬(くーま)

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ミツハナ脱退編

クリスマス その1

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 気づくと朝八時であった。

「おい、サッチ。もう朝だ」

 朝から俺はココアルームの掃除、サッチはあけみっちの手伝いをしないといけない。

「おはよう。じゃなくてメリクリ、あけおめ……」

 そう言いサッチはまた目を閉じた。

「おいおい、寝ぼけてる場合じゃない。あけみっちのマンション、行かなくていいのか?」
「今何時?」
「八時過ぎてるぞ」
「え? 本気まじで?」

 サッチが今度はバッチリ目を開けた。

「もうあけみっちのマンションに行かないと」
「俺ももう出るから、一緒に行くぞ」
「もう出ちゃうの? ちゃんといかせてよお」

 寝起きでその発言はやめろ。

 外に出ると快晴の青空であった。

「ねえシュウゴ。ちゃんと私に変なことした?」
「してない」
「もう。せっかく一夜をともにしたのに。私って魅力ないのかな……」
「い、いや……。十分魅力的だけど」
「はあ……。もういいよ。あけみっちのところに行くね。シュウゴと一夜をともにしたって言っとく。じゃ」
「おいおい」

 間違ってないが、サッチと一夜をともにして何もなかったなんて誰も信じない。

「冗談だよ」

 ダウンジャケットを乱暴に俺に返しサッチは去っていった。

 ずいぶん怒ってたな、サッチ……。
 まあ良い。俺はココアマンションに行くぞ。その前に……。

『おはよう。今日のクリスマス、楽しみだね。先にココアマンションに行って掃除しておきます。黒タイツ持ってきてください』

 よし、サラッと黒タイツのことを書けたぞ。

 送信ボタンを押して二人それぞれにメッセージを送った。

 マンションに着くとなんだかホッとした。ここがもう我が家のようになっている。
 ソファに座りぼーっとしているとスマホからピピっと音がなった。この音は友巴ちゃんだ。

『メリークリスマス! 黒タイツね。了解。何に使うかわからないけど持っていきます!』

 お願いしますというスタンプを送ってすぐ、今度はピ、ピっとスマホがなる。この音は帆乃花ちゃんだ。

『おはよう、シュウゴくん。いきなり黒タイツって w  そういう趣味だったけ? 』

 やばい。帆乃花ちゃんに変な奴と思われてる。

『趣味じゃないけど、お楽しみに』

『はーい。楽しみにしてます。またあとで』

 ふう。帆乃花ちゃんもサラッと流してくれた。

 さてさて。二人が集合するのは十時だ。
俺は掃除担当。友巴ちゃんがムーン&ムーンでケーキを買ってくる担当。帆乃花ちゃんが食材を買ってくる担当だ。

 俺はウキウキと風呂掃除に取り掛かった。

 あー、今日も三人で一緒に入れるかな。

 風呂掃除の後、リビングの掃除機がけをしていると玄関からガチャっと音がした。
 玄関に向かったがなかなか入ってこない。
 扉を開けると帆乃花ちゃんが両手いっぱいに買い物袋を下げていた。

「おはよう、シュウゴくん」

 黒色コートに包まれた帆乃花ちゃんがニッコリと微笑んだ。あー、今日も可愛いなぁ。
 コートの前から、クリーム色のピッタリニットがのぞいている。ボディラインを強調し、くびれた腰、豊満な胸がはっきりとわかる。可愛い上にセクシーだなんて反則だ。早く帆乃花ちゃんの腰に手を回し、ぎゅっと抱きしめたい。

 帆乃花ちゃんの手から買い物袋を受け取り、中に導いた。

「トモハちゃん、ちょっと遅れるって。ムーン&ムーンが激混みみたい」
「そうなんだ。クリスマスだから人気店は特に混むよね」
「先に二人で準備しておこっか」

 準備といってもクリスマスツリーやクリスマスの飾りがあるわけではない。料理の準備だ。
 コートを脱いだ帆乃花ちゃんは自分の荷物からエプロンを取り出し、着けた。

 あー、新婚なら裸エプロンしてもらうのにな。

「買い物袋、持ってきてくれる?」

 帆乃花ちゃんは腕まくりし、キッチンに向かった。
 いつものポニーテールがサラっと揺れる。

 うーん。今日も帆乃花ちゃんの良い香りが漂いクラっとする。

「何か手伝う?」
「じゃあ、野菜を洗ってくれる?」
「了解」

 俺も腕まくりをし、帆乃花ちゃんの隣に立った。

「ふふ。こうしてキッチンに二人で並んでいると、なんだか新婚さんみたいだね」
「新婚ならもっとくっついていい?」
「ダメだよ。包丁持ってるから危ないでしょ。またあとでくっつこうね」

 こんな会話も新婚のようだ。

 メニューはホワイトシチューで、昼はそのまま、夜はグラタン風にアレンジするのだそうだ。
 具材を炒め、後は鍋で煮込むだけとなった時、帆乃花ちゃんを後ろから抱きしめた。

「もう。シュウゴくん」
「包丁持ってないでしょ」

 俺はエプロンの中に手を突っ込み、ニット越しに帆乃花ちゃんの柔らかい胸を優しく撫でた。

「んん……。まだ早いよ」

 構わず帆乃花ちゃんの丸いお尻に俺の股間を押し付ける。

 ガチャ

 玄関ドアが開く音がしたため急いで帆乃花ちゃんから離れた。

「ごめーん。遅くなっちゃった」
「トモハちゃん、来たよ。私、火を見ておくから迎えに行ってあげて」

 はいっと返事をして、そそくさと玄関に向かう。
 玄関に行くと、友巴ちゃんがロングブーツを脱ぐところであった。
 その仕草が、友巴ちゃんのキャラクターにないものだったのでドキリとした。

「うー、寒かった。はい。クリスマスケーキ。絶対美味しいよ」
「そりゃ楽しみだ」
「ホノカちゃんは?」
「今、シチュー作ってて、火を見てるよ」
「了解。ホノカちゃーん、遅くなってごめんね」

 帆乃花ちゃんもキッチンから顔を出し応える。

「トモハちゃんもケーキ買うのに大変だったでしょ。ごめんね」
「クリスマスだからね。予約してて良かったよ。さて私もごはん手伝うよ」
「じゃあシュウゴくんもキッチンに来て。聞きたいことあるし」

 聞きたいこと?

 友巴ちゃんはパステルカラーのブルーのコートをハンガーにかけ、俺はケーキを冷蔵庫に入れ、キッチンに三人が集合した。

「帆乃花ちゃん、聞きたいことって?」
「黒タイツ。黒タイツを何に使うの?」
「何に使うって……」

 どうせお願いするんだ。もう言ってしまおう。

「実は二人に着て欲しいものがあって」

 俺はリビングに戻りサンタガールの衣装をカバンから取り出した。

「今日しか着れないこの衣装」

 サッチが着ていたのと同じだから、スカート部分は結構なミニで胸の部分も大胆に開いているものだ。
 広げると嫌だと言われかねない。袋に入った状態でOKをもらおう。

「これって女子用サンタコスプレ?」
「結構セクシー系だね……」

 この流れだと嫌だと断られるか……。

「私、一度着てみたかった」
「クリスマスしか着れないしね」

 おおっ! 意外や意外。すんなり受け入れられたぞ。

「で、これ着て黒タイツをはいてほしかったんです」
「そういうことね。でも黒タイツじゃなくて、黒ストッキングじゃない? これに合うのって。ほら写真も」
「ん?」

 なんと! この写真のこの黒い履き物は黒タイツではなく黒ストッキングだったのか。思えばサッチが履いていたのも黒タイツと思っていたが、あれが黒ストッキングだったのか。

「もうしょうがないな。コンビニで二人分買ってくるよ。トモハちゃんは、ここで火を見ながら身体温めていて」
「わがまま言ってすみません……」

 俺はスマホを取り出し、とりあえず二千円、帆乃花ちゃんに送金した。

「帆乃花ちゃん。今、送金しておいたから足りなかったら言ってね」
「え? 別にいいのに」
「俺のわがままだし」
「わかった。じゃあ行ってきます」
「ありがとう、ホノカちゃん。寒いから気をつけてね」
「はーい。でもコンビニ、目の前だよ」
「ははっ、そうだね」

 帆乃花ちゃんがコンビニに行き、友巴ちゃんと二人になった。

「シュウゴくんと二人きりになるの久しぶりだね」
「そうだね。ちょっとドキドキするね」

 なんせ友巴ちゃんは初恋の相手だ。

「シュウゴくんもドキドキしてるの? 私も」

 そう言い友巴ちゃんは俺の手を取った。
 二人きりだからだろうか。友巴ちゃんと初めて手を繋いだ時のようにビビッと電気が身体に走る。

 友巴ちゃんは俺の手を自分の胸に持ってきた。

「ほら、こんなに」
「伝わってくるよ。でもこれからもっとドキドキすることしようね」
「ふふっ。心臓止まっちゃうかも。そしたらシュウゴくん、人工呼吸お願い」
「心臓止まらなくてもキスするけどね」

 あと心臓マッサージという名の胸揉みも。
 俺はニットの上から友巴ちゃんの胸を優しく揉んだ。

「あん。もう今すぐキスしたくなっちゃうよ」
「まだダメ。とっておきのキスをしてあげる」

 突然、友巴ちゃんが俺の腰に手を回し抱きついてきた。
 俺も抱きしめ返す。

 友巴ちゃんは身長が低いから、いつものことながら俺が友巴ちゃんを包み込むようになった。

 その時だ。

 鍋から香ばしいにおいがしてきた。

「うわ、焦げる!」

 慌てて火を止めた。

「あー。ホノカちゃんに怒られるね……」
「正直に言うしかないね」
「二人で抱き合ってて鍋見てなかったって?」
「いやいや。よそ見してて焦がしちゃったって。混ぜたらダメかな?」
「全体がこげくさくなるからやめといた方がいいかも」

 換気扇を最強にして回したが、鍋は友巴ちゃんの言うことに従いそのままにした。

 そうこうしていると帆乃花ちゃんが帰ってきた。

「あらら、やっちゃたね」
「ごめん、帆乃花ちゃん。よそ見してた」
「私も。ごめん……」
「まあ、かき混ぜてないようだから、ギリギリセーフかな。上の方は別の鍋に移して、こげくさい下の方は夜のグラタンに使うから大丈夫」
「おおっ、さすが帆乃花ちゃん!
「天才、ホノカちゃん!」

 友巴ちゃんも帆乃花ちゃんをほめる。

「私も同じこと、前にやっちゃったんだ。失敗したら、それをいかにカバーするか、だね」

 帆乃花ちゃんは別の鍋を取り出し、シチューの上の方をお玉で移しながらそう言った。

「ねえ、それよりも聞いて。コンビニで売ってたストッキング、黒は膝上のしかなかったの。絶対、店長の趣味だよ」
「えー、見せて見せて。うわ、しかも一番上のところがレースのやつだね。セクシー路線バリバリ」

 うぉ!俺的には大歓迎です!

「トモハちゃん、これで大丈夫? シュウゴくんは大丈夫そうだけど」
「むしろこれが良いって目をしてるね……。まあ一度履いてみる。私に合うかわからないけど」
「じゃあ、私も履いてみようかな」
「うん。とりあえず、気分を盛り上げるために、このサンタの格好してから昼ごはん食べよ」
「そうだね。プレゼント交換もしないとね。それにトモハちゃんが買ってきてくれたケーキも食べたい」

 さらに、二人もいただきたいです。

「じゃあシュウゴくん。私たち向こうで着替えてくるから、シチュー見ててね。今度は焦がしたらダメだよ。ぐつぐつしかかったら火を止めてね」
「了解」
「あとのお楽しみだからのぞいたらダメだよ」
「……了解」

 これって振りじゃないよね。
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