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ミツハナ脱退編
クリスマスイブ その1
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クリスマスイブとクリスマス当日をどう過ごすか。
三人で話し合った結果、簡単に言うとイブは外で、クリスマス当日はココアマンションで過ごすということになった。
クリスマスプレゼントの交換はクリスマス当日にするのだが、ココアマンションに泊まる気満々の俺は、プレゼントやお泊まりセットもカバンに入れて集合場所の駅前広場に向かった。
広場にはすでに帆乃花ちゃんと友巴ちゃんがいる。
見たところ大きな荷物は持っていないな。やっぱり今日はお泊まりは、なしか。
いや、コインロッカーに入れたのかもしれない。
俺だけお泊まりセットを持って集まるのもなんだか気恥ずかしく、プレゼントやお泊まりセットをカバンから取り出してコインロッカーに入れた。
「おはよう」
と言ってももうすぐお昼なのだが。
「おはよう」
二人が同時に声を出す。
「シュウゴくん、カバン大きいね」
帆乃花ちゃんが俺のカバンを見て言った。
「あー、シュウゴくん。プレゼント交換が今日だと思ってプレゼント持ってきちゃったんでしょ」
友巴ちゃんがそう言い笑う。
実はお泊まりセットも持ってきたんだとは言えません。
「いやー、UFOキャッチャーで大物取ろうかなって」
「そうなんだ。準備万端だね」
「でしょ。さ、まずはゲームセンターにゴー」
俺がサッと歩き出すと二人もついてきた。
今日は、ゲームセンター、映画、イルミネーションを楽しむことになっている。
とりあえず駅前のゲームセンターに向かうが、まわりはカップルだらけだ。
そのほとんどが手をつないでいる。
三人問題はここにもあらわれ、どう手をつなげばいいのか悩む。俺が真ん中、両脇に帆乃花ちゃんと友巴ちゃんだと、捕まった宇宙人の写真のような画になってしまう。
結局手をつなげないままゲームセンターに着いてしまった。
ここのゲームセンターにはアトラクション的なゲームもあり映画の上映開始時間まで楽しんだ。UFOキャッチャーでは残念ながら大物は取れなかったが、カバンの空きスペースは作っておかないといけないため結果オーライだ。
映画は今回は泣ける邦画として評価が高い恋愛ものにした。誰かお目当ての俳優が出るとかスッキリしたいという理由ではなく、単に評価が高いため選んだ。
恋愛映画なんてと思っていたが、はっきり言ってボロボロ泣けるほど悲しく感動する映画であった。
「めっちゃ泣けたね。シュウゴくんほど泣いてないけど」
「えー、帆乃花ちゃん。俺、全く泣いてないんですけど」
「私もシュウゴくんが泣いてたの気づいたよ。泣きたい時は泣けばいいのさ。うんうん」
そう言い友巴ちゃんが俺の肩をポンと叩いた。
そう言えば最後に泣いたのはいつだろうか。
映画館を出るとあたりは真っ暗になっていた。
並木が黄色、白色、青色などさまざまな電飾で彩られ感動すら覚えるほど綺麗である。
「うわー、めっちゃ綺麗」
「そうだね! 見に来て良かった。すっごい綺麗」
二人の方が綺麗だよ、と口に出すのはドラマか漫画だけだろう。
人の綺麗さとイルミネーションの綺麗さは全く別のものなのに。
ここのイルミネーションはその華やかさでテレビや雑誌でも頻繁に取り上げられるのだが、規模がすごい。そして人の数もすごい。
ゲート入り口からすでに人が詰まっている状況だ。
確かにキラキラと輝くトンネルは綺麗だが……。
「二人とも迷子にならないようにね」
「じゃあこうしよっと」
帆乃花ちゃんが俺の右腕に絡みついてきた。
「私もー」
続いて友巴ちゃんが左腕に。
夏の薄着の時と違って胸のふくらみはあまり感じないが、それでも二人の肌感が伝わってくる。
「俺、美女二人に両腕絡まれてハリウッドスターみたいじゃない?」
はっはっは。他の男ども、うらやましいだろ、と大声で言いたい。
だが気持ちが良かったのは入り口付近だけで、あまりにも人が多すぎて気持ち悪くなり、途中離脱した。
「ごめん。今まで気づかなかったけど、俺、人混みが苦手みたい」
「いいよ。私も正直、背が低いから人の圧がきつかったし」
友巴ちゃんもぐったりした表情を見せた。
「二人とも大丈夫?」
帆乃花ちゃんは意外と大丈夫そうだ。
「ここから少し離れたカフェで休んで、気分が良くなったらごはん食べよう」
「うん……」
友巴ちゃんが返事をし、俺はうなずいた。
結局、帆乃花ちゃんも含め三人ともパンケーキやパフェなど軽食を注文することにした。
「私、これ食べたら帰らないと」
「そうなの、ホノカちゃん。じゃあ私も帰ろっかな」
気づけば夜八時をすぎている。やっぱり二人とも帰るのね……。
「シュウゴくんは何時までとかあるの?」
「俺は……」
泊まる気でいたとは言いづらい。
「俺も帰ろうかな……」
「もうシュウゴくん。そんなにあからさまに落ち込まないで。明日はココアマンションで一日中パーティーだから元気出して」
「そうだよ。私とホノカちゃんと三人だけで楽しも。それに久しぶりのご褒美もね」
「……私、あけみっちに教わったことシュウゴくんにしてあげるね。この日のための特別授業だったんだもん」
帆乃花ちゃんの顔がポッと赤くなった。
「私もしたい」
「トモハちゃんは最初は見てて。見られるの恥ずかしいけど……」
何となくわかるが、帆乃花ちゃんは俺に何をしてくれようとしているのだろうか。
それを楽しみにしておけば、今晩一人で過ごしても寂しくない。
駅で二人を見送った後、コインロッカーからプレゼントと着替えを出し、一人でココアマンションに向かった。
明日のために風呂掃除でもしておこう。
ココアマンションの部屋に入り、荷物を下ろすと、インターホンがなった。
誰だ?
モニターをのぞくとサンタガールの格好をした後ろ姿が見えた。帽子を被っていてよくわからないが、帆乃花ちゃんか友巴ちゃんが来てくれたのだ。
背丈からすると友巴ちゃんっぽい。
「どうぞ」
俺はウキウキとオートロックの鍵を開ける。
絶対友巴ちゃんだ。帆乃花ちゃんが帰るから自分もという口調だった。つまり帰らなくても大丈夫だったのだ。
ん? 待てよ。友巴ちゃんならわざわざインターホンをならす必要はない。鍵を持っているからドアを自分で開けられる。
いったい誰だ?
三人で話し合った結果、簡単に言うとイブは外で、クリスマス当日はココアマンションで過ごすということになった。
クリスマスプレゼントの交換はクリスマス当日にするのだが、ココアマンションに泊まる気満々の俺は、プレゼントやお泊まりセットもカバンに入れて集合場所の駅前広場に向かった。
広場にはすでに帆乃花ちゃんと友巴ちゃんがいる。
見たところ大きな荷物は持っていないな。やっぱり今日はお泊まりは、なしか。
いや、コインロッカーに入れたのかもしれない。
俺だけお泊まりセットを持って集まるのもなんだか気恥ずかしく、プレゼントやお泊まりセットをカバンから取り出してコインロッカーに入れた。
「おはよう」
と言ってももうすぐお昼なのだが。
「おはよう」
二人が同時に声を出す。
「シュウゴくん、カバン大きいね」
帆乃花ちゃんが俺のカバンを見て言った。
「あー、シュウゴくん。プレゼント交換が今日だと思ってプレゼント持ってきちゃったんでしょ」
友巴ちゃんがそう言い笑う。
実はお泊まりセットも持ってきたんだとは言えません。
「いやー、UFOキャッチャーで大物取ろうかなって」
「そうなんだ。準備万端だね」
「でしょ。さ、まずはゲームセンターにゴー」
俺がサッと歩き出すと二人もついてきた。
今日は、ゲームセンター、映画、イルミネーションを楽しむことになっている。
とりあえず駅前のゲームセンターに向かうが、まわりはカップルだらけだ。
そのほとんどが手をつないでいる。
三人問題はここにもあらわれ、どう手をつなげばいいのか悩む。俺が真ん中、両脇に帆乃花ちゃんと友巴ちゃんだと、捕まった宇宙人の写真のような画になってしまう。
結局手をつなげないままゲームセンターに着いてしまった。
ここのゲームセンターにはアトラクション的なゲームもあり映画の上映開始時間まで楽しんだ。UFOキャッチャーでは残念ながら大物は取れなかったが、カバンの空きスペースは作っておかないといけないため結果オーライだ。
映画は今回は泣ける邦画として評価が高い恋愛ものにした。誰かお目当ての俳優が出るとかスッキリしたいという理由ではなく、単に評価が高いため選んだ。
恋愛映画なんてと思っていたが、はっきり言ってボロボロ泣けるほど悲しく感動する映画であった。
「めっちゃ泣けたね。シュウゴくんほど泣いてないけど」
「えー、帆乃花ちゃん。俺、全く泣いてないんですけど」
「私もシュウゴくんが泣いてたの気づいたよ。泣きたい時は泣けばいいのさ。うんうん」
そう言い友巴ちゃんが俺の肩をポンと叩いた。
そう言えば最後に泣いたのはいつだろうか。
映画館を出るとあたりは真っ暗になっていた。
並木が黄色、白色、青色などさまざまな電飾で彩られ感動すら覚えるほど綺麗である。
「うわー、めっちゃ綺麗」
「そうだね! 見に来て良かった。すっごい綺麗」
二人の方が綺麗だよ、と口に出すのはドラマか漫画だけだろう。
人の綺麗さとイルミネーションの綺麗さは全く別のものなのに。
ここのイルミネーションはその華やかさでテレビや雑誌でも頻繁に取り上げられるのだが、規模がすごい。そして人の数もすごい。
ゲート入り口からすでに人が詰まっている状況だ。
確かにキラキラと輝くトンネルは綺麗だが……。
「二人とも迷子にならないようにね」
「じゃあこうしよっと」
帆乃花ちゃんが俺の右腕に絡みついてきた。
「私もー」
続いて友巴ちゃんが左腕に。
夏の薄着の時と違って胸のふくらみはあまり感じないが、それでも二人の肌感が伝わってくる。
「俺、美女二人に両腕絡まれてハリウッドスターみたいじゃない?」
はっはっは。他の男ども、うらやましいだろ、と大声で言いたい。
だが気持ちが良かったのは入り口付近だけで、あまりにも人が多すぎて気持ち悪くなり、途中離脱した。
「ごめん。今まで気づかなかったけど、俺、人混みが苦手みたい」
「いいよ。私も正直、背が低いから人の圧がきつかったし」
友巴ちゃんもぐったりした表情を見せた。
「二人とも大丈夫?」
帆乃花ちゃんは意外と大丈夫そうだ。
「ここから少し離れたカフェで休んで、気分が良くなったらごはん食べよう」
「うん……」
友巴ちゃんが返事をし、俺はうなずいた。
結局、帆乃花ちゃんも含め三人ともパンケーキやパフェなど軽食を注文することにした。
「私、これ食べたら帰らないと」
「そうなの、ホノカちゃん。じゃあ私も帰ろっかな」
気づけば夜八時をすぎている。やっぱり二人とも帰るのね……。
「シュウゴくんは何時までとかあるの?」
「俺は……」
泊まる気でいたとは言いづらい。
「俺も帰ろうかな……」
「もうシュウゴくん。そんなにあからさまに落ち込まないで。明日はココアマンションで一日中パーティーだから元気出して」
「そうだよ。私とホノカちゃんと三人だけで楽しも。それに久しぶりのご褒美もね」
「……私、あけみっちに教わったことシュウゴくんにしてあげるね。この日のための特別授業だったんだもん」
帆乃花ちゃんの顔がポッと赤くなった。
「私もしたい」
「トモハちゃんは最初は見てて。見られるの恥ずかしいけど……」
何となくわかるが、帆乃花ちゃんは俺に何をしてくれようとしているのだろうか。
それを楽しみにしておけば、今晩一人で過ごしても寂しくない。
駅で二人を見送った後、コインロッカーからプレゼントと着替えを出し、一人でココアマンションに向かった。
明日のために風呂掃除でもしておこう。
ココアマンションの部屋に入り、荷物を下ろすと、インターホンがなった。
誰だ?
モニターをのぞくとサンタガールの格好をした後ろ姿が見えた。帽子を被っていてよくわからないが、帆乃花ちゃんか友巴ちゃんが来てくれたのだ。
背丈からすると友巴ちゃんっぽい。
「どうぞ」
俺はウキウキとオートロックの鍵を開ける。
絶対友巴ちゃんだ。帆乃花ちゃんが帰るから自分もという口調だった。つまり帰らなくても大丈夫だったのだ。
ん? 待てよ。友巴ちゃんならわざわざインターホンをならす必要はない。鍵を持っているからドアを自分で開けられる。
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