席替えから始まる学園天国

空ー馬(くーま)

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ミツハナ脱退編

誕生日会(俺)

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 今日は10月の土曜日で俺の19歳※の誕生日だ。
 ※この世界では高校2年生の誕生日で19歳となる。

 突然の雨で、集合場所に来る途中で少し濡れてしまったが、そこからは相合傘で帆乃花ちゃんと歩けたのは嬉しい。帰りは友巴ちゃんと相合傘をする予定だ。
 そして今、俺たちはこの地域最大のショッピングモールにいる。
 隅から隅まで一店舗ずつ見ていたら、一日では回れない広さだ。
 友巴ちゃんと帆乃花ちゃんはN市のオシャレスポットで俺の服を買ってくれる気でいたが、どの店舗もブランド物の高い服ばかりのためショッピングモールにしてもらった。
 もっともセンスのない俺がオシャレスポットに行くことを躊躇したのもあるのだけど。
 
 午前中にショッピングモールで買い物をし、昼ごはんを食べたあと、友巴ちゃんおススメのケーキ屋でケーキを買い、ココアの部屋で改めてお祝いを二人からしてもらうという予定だ。

「トモハちゃん、これなんてどう?」
「おお、いいね! さすがホノカちゃん。候補の一つにしとこう」

 このような調子でショッピングモールの隅から順にメンズファッションの店を回っている。
 五店舗目に入る前に、俺一人、トイレに行ったのだが、店に入ると若い男に二人が声をかけられているところであった。
 
 おいおい、気安く俺の友巴ちゃんと帆乃花ちゃんに笑顔で声をかけるな。

 俺は急いで二人の元に行った。

「ん? この怖い顔をしている男子が君たちがプレゼントしようとしている相手?」

「そうです。この人に合う服ってどれですか?」

「んー、うちの商品だったら……」
 
 なんだ、店員だったのか。
 彼女が可愛いと他の男どもの接触にも気を遣ってなかなか大変だ。
 
 一階から三階までひととおり見終えたところで、帆乃花ちゃんが俺の前に出て、クルッと回った。
 その仕草が可愛いな。

「シュウゴくん、今までの間で気に入ったものあった?」

「ホノカちゃんはセンス良いから、どれもおススメだよ」
 
 友巴ちゃんが、帆乃花ちゃんと腕を組む。

「トモハちゃんの選んだのもシュウゴくんに似合うよ」
 
 二人ともホント仲が良いな。
 
 どれが俺に合うかどうか正直わからないが、二人のセンスに間違いないだろう。
 二人ともアルバイトなどしていない。つまりお小遣いの範囲で買ってくれようとしているのだ。
 そのため、別の服を二人が選んでいる間に、こそっと候補の服の値段を見ておいた。
 一番安いものを選ぶと値段で決めたと思われる。それに上下ともに帆乃花ちゃん、または友巴ちゃんが選んだものというのも気まずい。
 俺は一番安いものよりも若干高く、上は帆乃花ちゃん、下は友巴ちゃんおススメの服を選んだ。
 
 ふーっ。買ってもらうのもなかなか気を使うものだ。
 
 少し昼を回ったところで、フードコートで昼ごはんを食べることにした。
 四人がけテーブルに、まず友巴ちゃんと帆乃花ちゃんが並んで座る。こういう時どちらの前に座るかいつも悩むが、今回は椅子を一つどかし、二人の正面真ん中に座った。
 選んだものは、友巴ちゃんが海鮮丼、帆乃花ちゃんがパスタだ。俺はあまり食欲がなく、イチゴのスムージーにしておいた。

「さっきね、店員さんが、シュウゴくんのことを普通って褒めてたよ」

「褒めてた? 普通って?」

「そう。だから、なんでも似合うって」

「あー、トモハちゃんが言っている普通って、体型が普通ってことだよ」

「俺、顔も、性格も普通だから特に気にしてないよ」

「そこが良いんじゃない。ね、ホノカちゃん」
 
 ここで思い切って、確認しよう。

「友巴ちゃんは、イケメンの方が好きなんじゃ……」

「え? なんで? 私そんなこと言ったっけ?」

「だって、サッチや藤木さんと一緒に、帆乃花ちゃんのお兄さんに……」

「あー、それヤキモチ? ホノカちゃんのお兄ちゃんは、まあ言うならアイドルかな。別に付き合いたいとか結婚したいとかそういう対象じゃないよ」
 
 そうなんだ。その言葉を聞いて安心した。

「あ、でも、もし結婚したらホノカちゃんと姉妹だね。それ良いかも。私が姉でホノカちゃんが妹。わー、私より背が高い妹だ」

「じゃあ、これからトモハねえって呼ぼうかな」

「やだそれ。姉御風じゃん。せめてトモハお姉様で」
 
 冗談ですよね、それ。

 昼ごはんを食べ、プレゼントの服を買ってもらい、ココア部屋に移動することとなった。
 正直、いろいろと気を遣って疲れた。
 ココア部屋に着いたら少し休もう。そして、友巴ちゃんオススメのケーキを食べて、デザートとして二人を美味しくいただこう。
 その時は、あけみっちに教えてもらったテクニックを使って二人をメロメロに……。それが二人がくれたプレゼントのお返しだ。
 
 ショッピングモールからケーキ屋「ムーン&ムーン」まで、友巴ちゃんと相合傘で歩き、そこで別れた。どんなケーキを買うかはお楽しみだそうで、俺だけ先にマンションに行くこととなった。傘は、帆乃花ちゃんの無地の水色のものを借りた。友巴ちゃんの花柄の傘は流石にさせない。
 
 マンションにつき、リビングに入ったところから記憶がない。
 気づいたら布団の中だった。

「ホノカちゃん。シュウゴくん気づいたよ!」
 
 身体を起こそうとしたが、重い。それに頭痛がする。

「寝ておいた方がいいよ。雨に濡れたし多分風邪だと思うけど……」
 
 帆乃花ちゃんはそう言うと俺のおでこに手を当てた。

「うーん、熱もあるみたい。少し休んだら家に帰ってちゃんと寝た方がいいかも」

「でも、せっかく友巴ちゃんが選んでくれたケーキが……」
 
 それに、二人をいただくという最高のプレゼントが……。

「ケーキは、二人で美味しくいただいておくからまた今度ね」

「そうだね。無理したらだめ。シュウゴくん、身体が動くまでちょっと休んでいて。何かあったら言ってね」
 
 そう言うと帆乃花ちゃんは友巴ちゃんとベッドルームを出ていった。
 
 こうして俺の19歳の誕生日会は終わった……。
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