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ミツハナ脱退編
脱退
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夢の合宿から六週間が経ったが、あけみっちからは特に何も言ってこない。
週明けの月曜日。今日も元気にあけみっちは教壇に立った。
「みんな、おはよう。二学期も二週目に入り中途半端と言えば中途半端なんだけど、来週、席替えをしまーす」
クラス中から、うおーという太い声が聞こえる。男子どもの歓声だ。
「帆乃花ちゃん、席替えのこと聞いてた?」
「ううん」
「サッチは?」
前に座るサッチに帆乃花ちゃんが確認する。
「聞いてないよ」
席替え委員である二人が聞いていないとは……、あけみっちの突然のひらめきか?
多分、近いうちに、二人に呼び出しがあるのだろう。
その日の帰り、玄関でサッチに呼び止められた。
「明日、あけみっちのマンションでミツハナだって。さっき、あけみっちに呼ばれたから席替えのことだと思ったけど、ミツハナでそのこと話すのかな?」
席替えの話をわざわざミツハナで?
もしかすると『おめでた』の話か……。
翌日、いつものように、ファストフード店で集合となった。帆乃花ちゃん、友巴ちゃんとともにコーヒーを飲んでサッチを待つ。
「コーヒー飲めば、本当にあの甘い香りに惑わされないのかな?」
そう言い友巴ちゃんがアイスコーヒーを見つめる。
「もしあけみっちのマンションに行ってあの香りが炊かれていて、さらにヒデキがいたら大変だから、効くと信じるしかないね」
ヒデキにそれとなく今日の予定を聞いたら、用事があるとしか言わなかった。その用事がミツハナという可能性もある。
「サッチにもカフェインのこと伝えたら、私は私の思うままに行動するって……」
うーん、それが一番楽しく生きられるけど、一定の倫理観は必要だと思うぞ。
そのサッチが来たのであけみっちのマンションに向かい、ロビーに入った。
あけみっちがオートロックを解除してくれたが、誰か来ている雰囲気はなかったし、周りを見てもヒデキや藤木さんの姿はない。
今日もコンシェルジュのシズカさんが出迎えてくれた。
彼女は俺に対してどこか冷たい視線を送ってくるが今回もそうである。男を毛嫌いしているというよりもミツハナに男がくることが嫌なのだろう。住民と思われる男性、宅配業者の男性には高級ホテル並みの丁寧な対応をしているのをさきほど見た。
部屋着ではなく学校にいた時の少しかっちりめの服装のまま、あけみっちが玄関扉を開けた。
「いらっしゃい。どうぞ」
少し警戒し、あけみっち宅のリビングに入ったが例のにおいはしない。
「適当に座って」
友巴ちゃんと帆乃花ちゃんが並んで座ったため、俺はサッチの左隣に座った。
「さて。今日は大事な話があって集まってもらったの」
ケーキとおそらく中身はアイスティーのグラスを出しながらあけみっちが言った。
大事な話って、あけみっちが休むこと? その原因が俺があけみっちのアソコに中出しだという告白?
「この秘蜜の花園クラブの新しいメンバーの件なんだけど……」
ふう。その話ね。良かった……。
って、良くない、良くない。
「新メンバー候補がみんなもよく知っている藤木さんなんだけど、ちょっと問題があってね」
「問題って?」
友巴ちゃんが聞いた。
「うん。藤木さん、あなたたち三人に憧れていてね、三人みたいになりたいからクラブに入りたいと言ってはくれているんだけど……」
あけみっちが言葉を濁す。
「基本的に男子がいるのは嫌なんだって。ただ、ある男子なら大丈夫だって……」
「それがシュウゴくん?」
帆乃花ちゃんが尋ねる。
「ううん。それが北川くんらしいの。だからみんながどうしたいのかの相談。選択肢はいくつかあるの」
「選択肢?」
サッチが尋ねる。
「そう。一つ目に、藤木さんはクラブに入れない。今までどおりね。二つ目は藤木さんに入ってもらうけど、藤木さんが活動するときは梅谷くんは休み。この場合、北川くんを梅谷くんの代わりに入れるか入れないか。つまり選択肢は三つね」
「藤木さんを説得して、シュウゴも北川くんもまとめて一緒にしようよ。人数多くて楽しそうじゃん」
「私はシュウゴくん以外の男子が入るのは絶対、絶対無理」
「私もホノカちゃんと同じ。シュウゴくん以外に、その……見られたくも触られたくもない」
俺も友巴ちゃんと帆乃花ちゃんの裸は誰にも見せたくないし、指一本触れさせたくない。
「そう。わかったわ。じゃあ、藤木さんに入ってもらうけど、藤木さんが参加する時は、梅谷くんはお休みということでいいかしら」
友巴ちゃんと帆乃花ちゃんが俺の顔を見てくる。
今があのことを言う良い機会だ。
「あけみっち。そのことだけど、俺たちクラブを抜けようかと……」
「何かあった?」
「うーん、何ということはないんだけど、このままだと受験にも影響ありそうだし……」
「そう。で、俺たちっていうのは?」
「俺と友巴ちゃんと帆乃花ちゃん」
あけみっちが二人の顔を見るが、二人とも目を伏せてしまった。
あけみっちは怒っているようでも、悲しんでいるようでもない。ただ腕を組んで考えこむ様子を見せた。
「ちょっとぉ。私だけ仲間はずれみたいじゃん」
サッチが立ち上がる。こちらは明らかに怒っている。
「サッチだってあけみっちとの話を私たちにしてくれないじゃん。それにシュウゴくんの代わりに北川くんが入ってくること承知したんでしょ」
「それは、あけみっちに内緒って言われてて……。ってホノカ、盗み聞きしてたの?」
「はいはい。二人ともそこまで。私がちゃんとこれからのこと言わなかったのがいけなかったわね」
あけみっちが割って入る。
「いい? クラブに入れる時は慎重に考える。けど、去るもの追わずだから止めないし、去ってももちろん険悪な関係ではなく、これまでどおりの関係でいること。特に須藤さんと佐原さんは昔からの親友でしょ」
「とにかく、私はもうミツハナはやめる。サッチは自分の好きなようにすればいいよ。任せる」
帆乃花ちゃんがサッチに言う。
「……。ミツハナが私の居場所だから私は残る」
「わかったわ。須藤さんは残り、梅谷くん、佐原さん、森崎さんはやめる。藤木さんが入り、北川くんは……」
ヒデキは?
「梅谷くんと同じね」
週明けの月曜日。今日も元気にあけみっちは教壇に立った。
「みんな、おはよう。二学期も二週目に入り中途半端と言えば中途半端なんだけど、来週、席替えをしまーす」
クラス中から、うおーという太い声が聞こえる。男子どもの歓声だ。
「帆乃花ちゃん、席替えのこと聞いてた?」
「ううん」
「サッチは?」
前に座るサッチに帆乃花ちゃんが確認する。
「聞いてないよ」
席替え委員である二人が聞いていないとは……、あけみっちの突然のひらめきか?
多分、近いうちに、二人に呼び出しがあるのだろう。
その日の帰り、玄関でサッチに呼び止められた。
「明日、あけみっちのマンションでミツハナだって。さっき、あけみっちに呼ばれたから席替えのことだと思ったけど、ミツハナでそのこと話すのかな?」
席替えの話をわざわざミツハナで?
もしかすると『おめでた』の話か……。
翌日、いつものように、ファストフード店で集合となった。帆乃花ちゃん、友巴ちゃんとともにコーヒーを飲んでサッチを待つ。
「コーヒー飲めば、本当にあの甘い香りに惑わされないのかな?」
そう言い友巴ちゃんがアイスコーヒーを見つめる。
「もしあけみっちのマンションに行ってあの香りが炊かれていて、さらにヒデキがいたら大変だから、効くと信じるしかないね」
ヒデキにそれとなく今日の予定を聞いたら、用事があるとしか言わなかった。その用事がミツハナという可能性もある。
「サッチにもカフェインのこと伝えたら、私は私の思うままに行動するって……」
うーん、それが一番楽しく生きられるけど、一定の倫理観は必要だと思うぞ。
そのサッチが来たのであけみっちのマンションに向かい、ロビーに入った。
あけみっちがオートロックを解除してくれたが、誰か来ている雰囲気はなかったし、周りを見てもヒデキや藤木さんの姿はない。
今日もコンシェルジュのシズカさんが出迎えてくれた。
彼女は俺に対してどこか冷たい視線を送ってくるが今回もそうである。男を毛嫌いしているというよりもミツハナに男がくることが嫌なのだろう。住民と思われる男性、宅配業者の男性には高級ホテル並みの丁寧な対応をしているのをさきほど見た。
部屋着ではなく学校にいた時の少しかっちりめの服装のまま、あけみっちが玄関扉を開けた。
「いらっしゃい。どうぞ」
少し警戒し、あけみっち宅のリビングに入ったが例のにおいはしない。
「適当に座って」
友巴ちゃんと帆乃花ちゃんが並んで座ったため、俺はサッチの左隣に座った。
「さて。今日は大事な話があって集まってもらったの」
ケーキとおそらく中身はアイスティーのグラスを出しながらあけみっちが言った。
大事な話って、あけみっちが休むこと? その原因が俺があけみっちのアソコに中出しだという告白?
「この秘蜜の花園クラブの新しいメンバーの件なんだけど……」
ふう。その話ね。良かった……。
って、良くない、良くない。
「新メンバー候補がみんなもよく知っている藤木さんなんだけど、ちょっと問題があってね」
「問題って?」
友巴ちゃんが聞いた。
「うん。藤木さん、あなたたち三人に憧れていてね、三人みたいになりたいからクラブに入りたいと言ってはくれているんだけど……」
あけみっちが言葉を濁す。
「基本的に男子がいるのは嫌なんだって。ただ、ある男子なら大丈夫だって……」
「それがシュウゴくん?」
帆乃花ちゃんが尋ねる。
「ううん。それが北川くんらしいの。だからみんながどうしたいのかの相談。選択肢はいくつかあるの」
「選択肢?」
サッチが尋ねる。
「そう。一つ目に、藤木さんはクラブに入れない。今までどおりね。二つ目は藤木さんに入ってもらうけど、藤木さんが活動するときは梅谷くんは休み。この場合、北川くんを梅谷くんの代わりに入れるか入れないか。つまり選択肢は三つね」
「藤木さんを説得して、シュウゴも北川くんもまとめて一緒にしようよ。人数多くて楽しそうじゃん」
「私はシュウゴくん以外の男子が入るのは絶対、絶対無理」
「私もホノカちゃんと同じ。シュウゴくん以外に、その……見られたくも触られたくもない」
俺も友巴ちゃんと帆乃花ちゃんの裸は誰にも見せたくないし、指一本触れさせたくない。
「そう。わかったわ。じゃあ、藤木さんに入ってもらうけど、藤木さんが参加する時は、梅谷くんはお休みということでいいかしら」
友巴ちゃんと帆乃花ちゃんが俺の顔を見てくる。
今があのことを言う良い機会だ。
「あけみっち。そのことだけど、俺たちクラブを抜けようかと……」
「何かあった?」
「うーん、何ということはないんだけど、このままだと受験にも影響ありそうだし……」
「そう。で、俺たちっていうのは?」
「俺と友巴ちゃんと帆乃花ちゃん」
あけみっちが二人の顔を見るが、二人とも目を伏せてしまった。
あけみっちは怒っているようでも、悲しんでいるようでもない。ただ腕を組んで考えこむ様子を見せた。
「ちょっとぉ。私だけ仲間はずれみたいじゃん」
サッチが立ち上がる。こちらは明らかに怒っている。
「サッチだってあけみっちとの話を私たちにしてくれないじゃん。それにシュウゴくんの代わりに北川くんが入ってくること承知したんでしょ」
「それは、あけみっちに内緒って言われてて……。ってホノカ、盗み聞きしてたの?」
「はいはい。二人ともそこまで。私がちゃんとこれからのこと言わなかったのがいけなかったわね」
あけみっちが割って入る。
「いい? クラブに入れる時は慎重に考える。けど、去るもの追わずだから止めないし、去ってももちろん険悪な関係ではなく、これまでどおりの関係でいること。特に須藤さんと佐原さんは昔からの親友でしょ」
「とにかく、私はもうミツハナはやめる。サッチは自分の好きなようにすればいいよ。任せる」
帆乃花ちゃんがサッチに言う。
「……。ミツハナが私の居場所だから私は残る」
「わかったわ。須藤さんは残り、梅谷くん、佐原さん、森崎さんはやめる。藤木さんが入り、北川くんは……」
ヒデキは?
「梅谷くんと同じね」
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