席替えから始まる学園天国

空ー馬(くーま)

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ミツハナ脱退編

新たな展開

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 はぁー

 目の前に座る友巴ちゃんの背中を見ながらため息をつく俺。
 ブラウスに浮かぶブラホックをつまみたくてもつまめない状況にため息をついているわけではない。

 夏休みだと言うのに補講、つまり強制補習というやつで毎日学校に来なければならないのにため息をついているのだ。

 そりゃあ帆乃花ちゃんや友巴ちゃんに会えるのは嬉しいが、毎日毎日勉強ではさすがに嫌気がさしてくる。

 今は出された課題を時間内に解く練習の時間で、先生はいない。

「シュウゴくん、まったくやる気ないね」
 
 机にベターっとなりシャーペンをいじくっている俺に向かい帆乃花ちゃんが言う。

「うーん、せっかくの夏休みなのに、花火大会行けなかったし、合宿が濃かった分、やる気なし……」
「花火見たかったよね。でも合宿中に花火大会、終わっちゃったし」
「花火よりも帆乃花ちゃんの浴衣姿、見たかったよ……」
「ちょっと私やトモハの浴衣姿は?」

 サッチが首を後ろに回し聞いてくる。

「そりゃあ見たいけど……」
「じゃあ今日の帰りに緊急招集ね。いつもの店で集合~、シュウゴだけに」
 
 何だよ、ダジャレかよ。
 
 テンション低く、心の中でサッチにツッコむ。
 
 例のファストフード店に行くとすでに女子三人が四人がけテーブルについていた。華やかな女子が俺に向かって手を振る光景は誇らしい。
 サッチの横が空いていたためそこに座る。

「では早速だけど、シュウゴ、プールと海、どっちが良い?」
 
 いつものようにサッチが切り出す。サッチは合宿以来、俺を呼び捨てにする。嫌ではないが。

「突然だね」
「浴衣はおいておいて、残りの夏休みの思い出にね。合宿は山だったでしょ。次は海に行こうと思ったんだけど、ホノカとトモハがプールが良いって。シュウゴが海って言ったら二対二でジャンケンなの。やっぱり海だよね」
「海って海水がベタベタしてやだ。ねっ、トモハちゃん」
「うん。私、海の家って行ったことないから行ってみたいけど、ウォータースライダーとか流れるプールとか楽しそう」
「で、シュウゴはどっちよ」
「俺は……」
 
 水着姿を見が見られて、かつ女子たちとイチャイチャできればどっちでもいいけど。まあ海と答えてジャンケン、あとは女神様のお導きのとおりでいこう。

「海に一票」
 
 サッチが笑顔を見せる。

「よーし、ではジャンケンね」
 
 サッチと帆乃花ちゃんによるジャンケンの結果、プールに決まった。
 ジャンケンに負けたサッチの機嫌が良い。

「なんだよサッチ。プールでも良かったのか?」
「ううん。シュウゴが私の肩をもったのって初めてじゃない? だから嬉しいの」
「別に肩をもったわけでは……」
「シュウゴくんはプールで良かったの?」
 
 帆乃花ちゃんが聞いてくる。

「三人がいれば正直どこでも良い」

 二人がいればとは空気を読んで言わなかった。

 わざわざサッチの機嫌を損ねることもない。

「藤木さんも誘うけどね」
 
 サッチが軽く言う。

「え、えー? 藤木さん? もしかしてあけみっちも?」
「あけみっちは夏休みの間、忙しいから、もうミツハナはないよ。だから藤木さんのプレミツハナかな」
 
 うーん、藤木さんって友巴ちゃん以上に大人しく真面目そうだからミツハナについていけるか?

 次に日の補講後、玄関でサッチに呼び止められた。

「藤木さん、プール行くって。でも一人では不安だからもう一人誘って良いかだって」
 
 そりゃあそうだろう。

「良いんじゃない」
 
 藤木さんの友達といえば岸谷さんか広田さんあたりだろう。

「じゃあ藤木さんにオッケーって言っとく。というかもう言ってるんだけど。じゃあシュウゴ、また明日!」
 
 事後報告か。って俺に良いも悪いも決める権利はないが。

「ちなみに誰ー?」
 
 駆けて行くサッチの背中に訪ねた。サッチがこちらを向く。

「北川くんだよ!」

 北川……、北川……、ってヒデキか!?

 俺のハーレムに男が……、しかもヒデキか。
 いくら親友でもミツハナに入れたくないぞ。

「どわっ!」
 
 背中を叩かれ振り返ると渦中のヒデキがいた。

「何びっくりしてんだ? 誰かに名前を呼ばれた気がしたけど。まあいっか。さっさと帰ろうぜ」
 
 ヒデキは遊び半分で卓球部に入っており、部活がない日は一緒に帰っている。 
 ちなみに俺はとーーってもゆるい剣道部で、練習も自由だ。夏場はくさい。その理由でほぼ休部状態だ。まあ寒くなってもだだけど。
 
 駅まで歩きながら話を続ける。

「なあ、せっかくの高二の夏休みだって言うのに、思い出も何もないって寂しいよな」
「そ、そうだな」

 俺は、これからの人生の中でもめちゃくちゃ濃いであろう夏休みをすでに過ごしたが。

「なあ、せっかくだしあそこ行こうぜ、あそこ」
「ゲ、ゲーセンか? それかカラオケ?」
「そんなのいつでも行けるだろ。夏しか行けないところだ」
 
 ドキリとした。

「なんだよ、その顔。プールだよ、プール。A海浜リゾートのな。ここからすぐだし、旅行って感じじゃないけどな」
 
 やっぱりか。
 
 ちなみにヒデキの言うA海浜リゾートとは、遊園地、プール、ショッピングモールが合わさった複合施設で、教室の窓から、その観覧車も見える。

「プ、プールな。他の男子も誘ってナンパでもするか」
「シュウゴ……、わかってるだろ。藤木を誘うんだよ。で、お前は須藤を誘う」
 
 ヒデキのやつ、さっきの俺とサッチの会話を聞いていたのか?

「なんで須藤なんだよ?」
「胸でかランキング1位と2位の水着姿が見たい」
 
 そういうことね。

「頼む、シュウゴ。須藤に声かけてくれ。藤木と須藤って最近仲良いし、須藤が行くって言ったら藤木も行く気になるかもしれない。めちゃハードル高いのはわかっているけど頼む」
 
 ヒデキが手を合わせ拝みたおしてくる。
 もうハードルもなく、ゴール手前だけどな。

「仕方ないなぁ。ヒデキの頼みとあっては断れない。プール代おごれよ」
「おう、それでいいなら安いもんだ。よろしくな。なんなら、佐原か森崎を誘っても良いぞ。お前、どっちか好きなんだろ」
「あ、あほか」
「どっちが好きなのかは意見が分かれているけどな」
「ど、どういう意味だよ?」
「だから、お前がどっちが好きか、という意見がクラスの男どもの間で分かれてるということだ。お前が好きではない方にアタックするやつが出てくるかもしれん。最近、森崎はグッと可愛くなったしな。藤木ほどではないが」

 おいおい、どちらも選べないし、選んだとしてももう一人も渡せないぞ。

「まあいいや。シュウゴ、二人とも誘っちまえよ。藤木も女子が多いほうが来やすいだろ」


 水着姿の友巴ちゃんや帆乃花ちゃんをヒデキに見せるのは嫌だな。とくに帆乃花ちゃんは藤木さんとほぼ同じ胸の大きさだ。ヒデキの目も帆乃花ちゃんの胸にいくだろう。
 二人にはヒデキも来るしやめときなと言おう。

「ま、まあ声をかけてみるわ」
「おう。佐原と森崎はダメでも、須藤のこと頼んだぞ」
 
 その後はいつものようにお笑い芸人の話やら生徒の噂話やらをし、別れた。

 次の日、プールの日取りとメンバーが決まった。
 8月××日、9時に現地エントランス集合。メンバーは、俺、ヒデキ、サッチ、藤木さんに加え友巴ちゃんと帆乃花ちゃんだ。
 
 友巴ちゃんと帆乃花ちゃんに、プールやめたらと提案したが、楽しみにしてたのになんでそんなこと言うのと怒られた。
 
 そして、当日。
 集合場所に行くと藤木さんがすでに待っていた。
 あの変身後、すっかり垢抜けし、ファッションセンスも良くなった、と思う。
 俺のセンスでは正確なジャッジはできないが。
 
 藤木さんと二人でいるとヒデキに怒られそうため、少し離れた場所にで隠れていた。
 するとヒデキが現れ藤木さんに声をかける。藤木さんは照れているようだ。顔を赤らめうつむいている。
 なんだ、もう完全に相思相愛のようだ。
 
 他の女子も集まったところで俺も合流した。
 
 はー、何て素敵な女子たち。俺って幸せ。
 とヒデキは思っているに違いない。目がやばい。
 彼女らの水着姿を見たら卒倒するな、こりゃ。
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