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修学旅行編
第十二話 作戦の全貌 【修学旅行編 完】
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するはずのない所から、するはずのない音が聞こえた。
玄関の鍵が開く音だ。
これには俺も帆乃花ちゃんも驚いた。
驚きすぎると動けないものだ。二人とも固まっていると、鍵を開けた人物がぬっと入ってきた。
隣の部屋からは、まだ友巴ちゃんの甘い喘ぎ声が聞こえてくる。
姿を現したのは、あけみっちだった。
俺は慌てて座布団で下半身を隠す。
「あらまあ、こんなにも作戦がうまくいくとはね」
さ、作戦?
あけみっちは帆乃花ちゃんに微笑みかけ、ふすまをサッと開けた。
おいおい。裸同士の教え子を見ても、何もないの?
「須藤さん、もう時間切れ。お香も片付けて」
「えー。もうちょっとでトモハちゃん、もう一回いくところだったのに。マンションで……」
先生は須藤さんに、シーっと言うジェスチャーをしスマホを取り出した。
「もしもし、角倉です。ええ、合流できました。はい、そうです。申し訳ないですが、他の生徒全員、各自の部屋でシャワーや明日の準備などをさせておいてください。あと三十分くらいで戻れると思います。それでは」
「あけみっち、今の誰?」
須藤さんが裸のまま、あけみっちに近寄る。
「夏川先生よ。副担だしホテルの玄関にいてもらってたの。それより須藤さん、作戦バッチリだったようね」
須藤さんが大きくうなずく。
「せ、先生、作戦って……?」
「まあそれは後から説明するわ。君は、とりあえずこれしかないけど着て」
そう言いあけみっちが渡してきたのはホテルの部屋備え付けの室内用浴衣だ。
「三人はこれね。はい」
女子三人にも浴衣が渡された。簡易的なものだが外出もできる色鮮やかな浴衣だ。
俺のと差がありすぎじゃないか。
身体を隠しながら友巴ちゃんが恥ずかしそうに浴衣を受け取る。可愛いな。
「で、作戦のことだったわね」
あけみっちの話によると、修学旅行で帆乃花ちゃんを女にすることが目的だったらしい。
この上なく、『可愛い女子』を好きなあけみっちが、須藤さんを自宅マンションに連れ込んだのが始まりで、そこで須藤さんにいろいろな技を教え、自分を攻めさせたそうだ。
次にあけみっちが目をつけたのが、帆乃花ちゃん。
ところが帆乃花ちゃんは男性経験がなく、秘密の所の奥深くに性玩具を入れることができなかった。そこで、帆乃花ちゃん自ら、初体験を希望したのだが、その相手として、帆乃花ちゃんの口から出たのが俺の名前だったそうだ。
さらに人数は奇数より偶数の方が何かと都合が良いということで、三人が友巴ちゃんに目をつけた。
友巴ちゃんも『可愛い女子』としてあけみっちたちに認められたのだ。
俺と友巴ちゃんを引き込んだ方法は例の席替えだ。
俺、友巴ちゃん、帆乃花ちゃん、須藤さんの席はくじを引くまでもなく、あらかじめ決まっていて、残りの三十二人の席をくじで決めたそうだ。
で、帆乃花さんの処女喪失は、本人希望により、夏休み前の修学旅行と定め、肝試しを仕掛けた。
というのが作戦の全貌だ。
ちなみに、友巴ちゃんは、あけみっちのマンションに数回誘われ、今も三人に色々と仕込まれている最中ということだ。
「あけみっち。トモハちゃんも梅谷くんに処女捧げたよ。一年の時から好きだったんだって」
え? 一年の時から? 俺、そのころ、友巴ちゃんのこと知らないよ。
「森崎さんも梅谷くんのこと好きだったの? 須藤さん、本気で言ってる?」
「うん。私も肝試しで歩いている途中で知ったの」
「森崎さん、マンションでは恥ずかしがって、好きな人のことなかなか言わなかったもんね。これぞ修学旅行マジック」
「ねえあけみっち。梅谷くんもマンションに呼んでいい?」
「私は女子だけで良いかな。梅谷くん、嫌いじゃないけど」
「もう。あけみっちが「時代はLGBTQだ」って言ってたじゃん」
その使い方は違うと思うけど。
「うーん、わかった。あなたたちには玩具だけじゃなくて本物も必要だしね。どうしても玩具だと……。それに梅谷くん使って……」
あけみっちと須藤さんの会話はまだまだ続きそうだ。
「ちょ、ちょっと待った。森崎さんや佐原さんは俺が入ってきてもいいの?」
「私は……梅谷くんにもっと入れてほしい……」
そう言い、帆乃花ちゃんが顔を赤らめる。
女子四人のグループに俺が入ってきて邪魔じゃないか聞いたんだけど……。
「……、私にも入れて」
まじか。友巴ちゃんのその言葉に昇天しそうだ。
「なに、二人とも。その言い方、いやらしい。まあいいわ。じゃ決まりということで。さっそくあけみっち、修学旅行明けの火曜日、よろしくー」
「はいはい、まったく須藤さんは。私も昔を思い出して梅谷くんを喜ばせられるように頑張ろうかな。さ、雨も止んだし、ホテルに戻りましょ。浴衣を着ていれば、他のクラスの子たちに見つかっても散歩してたように見えるでしょ」
俺だけ、オートロックで締め出され、部屋の前でウロウロする間抜けな奴に見えるけど……。
ホテルに戻る道すがら、あけみっちと須藤さんは女子トークで弾んでいる。
一方、俺は、友巴ちゃんと帆乃花ちゃんと無言だ。ちょっと気まずい。
「……梅谷くんの初めての相手が、トモハちゃんでよかった」
帆乃花ちゃんがつぶやく。
「ごめんね。ホノカちゃんも、梅谷くんのこと好きだったのに」
友巴ちゃんの言葉に、帆乃花ちゃんがうなずく。
ここで気の利いた一言でも言えればいいが、普通男子の俺は黙りこくっている。
「まあ、あけみっちのマンションで、この三人で楽しみましょ。私、梅谷くんもトモハちゃんも大好きだし」
「私も。ホノカちゃんのこと尊敬してるし、大大好き。今日はホノカちゃんとしなかったけど、火曜日はいつもみたいに……」
「ふふっ。いつもみたいに私が攻めちゃおうかな。それともたまには逆にする? 梅谷くんは……」
何か訳の分からないことを言っているが、どうやら二人の仲は気まずくないようで安心した。
何はともあれ、この日から俺の本当の学園天国は始まった。そして、それはまわりを巻き込み思わぬ方向へ進むことになる。
「ねえ、あけみっち、また奇数になっちゃったよ。あと一人だけ誘うなら藤木さんでどう? 彼女、磨けば光るよ」
「いいわねー、須藤さん。今度はどんな作戦にする?」
【修学旅行編 完】
修学旅行編、お読みいただきありがとうございました。
一応、ここで「完」とする予定でしたが修学旅行2日目、3日目のエピソードも簡単に次回、公開します。
また、夏休み編など学園生活エピソードを第二章、第三章という形で書いていこうと思っています。
みなさま、応援のほど、よろしくお願いいたします。
玄関の鍵が開く音だ。
これには俺も帆乃花ちゃんも驚いた。
驚きすぎると動けないものだ。二人とも固まっていると、鍵を開けた人物がぬっと入ってきた。
隣の部屋からは、まだ友巴ちゃんの甘い喘ぎ声が聞こえてくる。
姿を現したのは、あけみっちだった。
俺は慌てて座布団で下半身を隠す。
「あらまあ、こんなにも作戦がうまくいくとはね」
さ、作戦?
あけみっちは帆乃花ちゃんに微笑みかけ、ふすまをサッと開けた。
おいおい。裸同士の教え子を見ても、何もないの?
「須藤さん、もう時間切れ。お香も片付けて」
「えー。もうちょっとでトモハちゃん、もう一回いくところだったのに。マンションで……」
先生は須藤さんに、シーっと言うジェスチャーをしスマホを取り出した。
「もしもし、角倉です。ええ、合流できました。はい、そうです。申し訳ないですが、他の生徒全員、各自の部屋でシャワーや明日の準備などをさせておいてください。あと三十分くらいで戻れると思います。それでは」
「あけみっち、今の誰?」
須藤さんが裸のまま、あけみっちに近寄る。
「夏川先生よ。副担だしホテルの玄関にいてもらってたの。それより須藤さん、作戦バッチリだったようね」
須藤さんが大きくうなずく。
「せ、先生、作戦って……?」
「まあそれは後から説明するわ。君は、とりあえずこれしかないけど着て」
そう言いあけみっちが渡してきたのはホテルの部屋備え付けの室内用浴衣だ。
「三人はこれね。はい」
女子三人にも浴衣が渡された。簡易的なものだが外出もできる色鮮やかな浴衣だ。
俺のと差がありすぎじゃないか。
身体を隠しながら友巴ちゃんが恥ずかしそうに浴衣を受け取る。可愛いな。
「で、作戦のことだったわね」
あけみっちの話によると、修学旅行で帆乃花ちゃんを女にすることが目的だったらしい。
この上なく、『可愛い女子』を好きなあけみっちが、須藤さんを自宅マンションに連れ込んだのが始まりで、そこで須藤さんにいろいろな技を教え、自分を攻めさせたそうだ。
次にあけみっちが目をつけたのが、帆乃花ちゃん。
ところが帆乃花ちゃんは男性経験がなく、秘密の所の奥深くに性玩具を入れることができなかった。そこで、帆乃花ちゃん自ら、初体験を希望したのだが、その相手として、帆乃花ちゃんの口から出たのが俺の名前だったそうだ。
さらに人数は奇数より偶数の方が何かと都合が良いということで、三人が友巴ちゃんに目をつけた。
友巴ちゃんも『可愛い女子』としてあけみっちたちに認められたのだ。
俺と友巴ちゃんを引き込んだ方法は例の席替えだ。
俺、友巴ちゃん、帆乃花ちゃん、須藤さんの席はくじを引くまでもなく、あらかじめ決まっていて、残りの三十二人の席をくじで決めたそうだ。
で、帆乃花さんの処女喪失は、本人希望により、夏休み前の修学旅行と定め、肝試しを仕掛けた。
というのが作戦の全貌だ。
ちなみに、友巴ちゃんは、あけみっちのマンションに数回誘われ、今も三人に色々と仕込まれている最中ということだ。
「あけみっち。トモハちゃんも梅谷くんに処女捧げたよ。一年の時から好きだったんだって」
え? 一年の時から? 俺、そのころ、友巴ちゃんのこと知らないよ。
「森崎さんも梅谷くんのこと好きだったの? 須藤さん、本気で言ってる?」
「うん。私も肝試しで歩いている途中で知ったの」
「森崎さん、マンションでは恥ずかしがって、好きな人のことなかなか言わなかったもんね。これぞ修学旅行マジック」
「ねえあけみっち。梅谷くんもマンションに呼んでいい?」
「私は女子だけで良いかな。梅谷くん、嫌いじゃないけど」
「もう。あけみっちが「時代はLGBTQだ」って言ってたじゃん」
その使い方は違うと思うけど。
「うーん、わかった。あなたたちには玩具だけじゃなくて本物も必要だしね。どうしても玩具だと……。それに梅谷くん使って……」
あけみっちと須藤さんの会話はまだまだ続きそうだ。
「ちょ、ちょっと待った。森崎さんや佐原さんは俺が入ってきてもいいの?」
「私は……梅谷くんにもっと入れてほしい……」
そう言い、帆乃花ちゃんが顔を赤らめる。
女子四人のグループに俺が入ってきて邪魔じゃないか聞いたんだけど……。
「……、私にも入れて」
まじか。友巴ちゃんのその言葉に昇天しそうだ。
「なに、二人とも。その言い方、いやらしい。まあいいわ。じゃ決まりということで。さっそくあけみっち、修学旅行明けの火曜日、よろしくー」
「はいはい、まったく須藤さんは。私も昔を思い出して梅谷くんを喜ばせられるように頑張ろうかな。さ、雨も止んだし、ホテルに戻りましょ。浴衣を着ていれば、他のクラスの子たちに見つかっても散歩してたように見えるでしょ」
俺だけ、オートロックで締め出され、部屋の前でウロウロする間抜けな奴に見えるけど……。
ホテルに戻る道すがら、あけみっちと須藤さんは女子トークで弾んでいる。
一方、俺は、友巴ちゃんと帆乃花ちゃんと無言だ。ちょっと気まずい。
「……梅谷くんの初めての相手が、トモハちゃんでよかった」
帆乃花ちゃんがつぶやく。
「ごめんね。ホノカちゃんも、梅谷くんのこと好きだったのに」
友巴ちゃんの言葉に、帆乃花ちゃんがうなずく。
ここで気の利いた一言でも言えればいいが、普通男子の俺は黙りこくっている。
「まあ、あけみっちのマンションで、この三人で楽しみましょ。私、梅谷くんもトモハちゃんも大好きだし」
「私も。ホノカちゃんのこと尊敬してるし、大大好き。今日はホノカちゃんとしなかったけど、火曜日はいつもみたいに……」
「ふふっ。いつもみたいに私が攻めちゃおうかな。それともたまには逆にする? 梅谷くんは……」
何か訳の分からないことを言っているが、どうやら二人の仲は気まずくないようで安心した。
何はともあれ、この日から俺の本当の学園天国は始まった。そして、それはまわりを巻き込み思わぬ方向へ進むことになる。
「ねえ、あけみっち、また奇数になっちゃったよ。あと一人だけ誘うなら藤木さんでどう? 彼女、磨けば光るよ」
「いいわねー、須藤さん。今度はどんな作戦にする?」
【修学旅行編 完】
修学旅行編、お読みいただきありがとうございました。
一応、ここで「完」とする予定でしたが修学旅行2日目、3日目のエピソードも簡単に次回、公開します。
また、夏休み編など学園生活エピソードを第二章、第三章という形で書いていこうと思っています。
みなさま、応援のほど、よろしくお願いいたします。
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