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修学旅行編
第七話 透ける服
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明かりはそれぞれ持参の懐中電灯のみだ。
暗闇が嫌いな俺は、アメリカの軍隊が使用するというハイパーでスーパーな懐中電灯をネットで購入し、持ってきた。警棒みたいな形で、いざという時には武器にもなる。
対する佐原さんのものは、懐中電灯とは言えないようなオマケ程度の灯りで、手のひらにすっぽり入るくらいの円柱型のものだ。
佐原さんの歩みは遅い。前を行く森崎さんのペアに追いつくどころか、引き離されているだろう。
しばらく無言で並んで歩いていると佐原さんの懐中電灯の明かりがチラチラとしてきた。
「あー、やっぱりこれじゃあダメね。梅谷くん、しっかり照らしてね」
そう言うと佐原さんは、ズボンのポケットに懐中電灯をしまい、俺の左腕にピッタリと体を絡ませてきた。
ランキング三位の胸がむにゅっと当たってくる。
残念ながら下着があるため本来の胸の柔らかさはわからない。
だが、ほんのり体温は伝わってきて、自然と下半身が疼いてくる。
これはいかん、何か話をして気を紛らわせないと。
「さ、佐原さん。女子三人で帰る時って、どんな話してるの?」
「三人って、私、トモハちゃん、サッチのこと?」
俺は、コクっとうなずいた。
「どんな話って……梅谷くんの前では言えないかな」
って俺のことをネタにしてる? 俺の今の評価は??
「えっ、めっちゃ興味があるんだけど」
「私やサッチは良いけど……、トモハちゃんの名誉のために言えません」
うん? 森崎さんの名誉のため??
「はい。話を変えて、梅谷くん、今好きな人いるんでしょ。誰?」
おいおい、ど直球だな。
佐原さんの目を見ると、冗談で返せない雰囲気を発している。
「えーっと……」
「待って。ここは楽しくイエス、ノー方式にしよう」
俺がその提案にノーと言う前に、一つ目の質問が来た。
「ではまずは、その人は同じ高校にいる」
「……イエス」
「その人は、二年A組の生徒である」
「……イ、イエス」
このまま対象がどんどん絞られていくのだろう。どこかでノーコメントとしなくては。
「その人は、男子である」
「……イエ、ではなくてノー、ノー」
「ふふっ。その人は、窓際、真ん中、廊下側の列で言うと、廊下側の列にいる」
この辺でノーコメントとしなくては。
「ノー」
「ノーお?」
「……コメント」
「ノーコメントかい。ノーじゃなくて良かったんだけど、冗談なしね」
その時、恵みの雨が降り出した。
最初はポツポツであったが、すぐに雨脚は強まった。
「うわー、これはダメね。あけみっちが言っていた小屋まで走りましょ」
これには速攻イエスと答えた。
二人で走ったが、なかなか小屋は見えず、仕方なく大きな木の下で一時的に雨宿りをした。
「大丈夫?」
そう声をかけ、佐原さんを見ると、白い半袖体操服が雨で透け、下着がモロに見えている。
色は薄いピンクで、刺繍もわかるほどだ。
「うん」
このような時は、自分のジャージを貸したり、タオルを貸したりするのが男というものだろうが、あいにく両方とも持っていない。仕方なく、ズボンのポケットに入れていたタオルハンカチを渡した。
「これしかないけど」
「ありがとう。優しいね」
そう言い、佐原さんは軽くポンポンとタオルハンカチで顔を拭いた。
「洗って返すね。そう言えば、あけみっちが小屋に迎えに来るって言ってたよね。時間がないから、もう一度走って小屋に向かいましょ」
時間がないと言っても、みんなを返して傘をホテルに取りに行くって言ってたからすぐには来れないはずだけど……。
まあ、森崎さんたちも小屋に避難しているだろうから早く合流しよう。あわよくば森崎さんの体操服も雨で濡れて……。
そんな妄想をしていると左手が引っ張られた。佐原さんが俺の手を握って引っ張ったのだ。脚が反射的に動き出す。そしていつの間にか、手を握りなおし、俺が佐原さんを引っ張っていた。雨で濡れて冷たいはずの手も温かい。
三百メートルほど走ると明かりのもれる建物が見えてきた。おそらくあそこがあけみっちが言っていた小屋だ。
<次話:服を脱ぐ>
小屋の中で、濡れた服を乾かそうと……。
暗闇が嫌いな俺は、アメリカの軍隊が使用するというハイパーでスーパーな懐中電灯をネットで購入し、持ってきた。警棒みたいな形で、いざという時には武器にもなる。
対する佐原さんのものは、懐中電灯とは言えないようなオマケ程度の灯りで、手のひらにすっぽり入るくらいの円柱型のものだ。
佐原さんの歩みは遅い。前を行く森崎さんのペアに追いつくどころか、引き離されているだろう。
しばらく無言で並んで歩いていると佐原さんの懐中電灯の明かりがチラチラとしてきた。
「あー、やっぱりこれじゃあダメね。梅谷くん、しっかり照らしてね」
そう言うと佐原さんは、ズボンのポケットに懐中電灯をしまい、俺の左腕にピッタリと体を絡ませてきた。
ランキング三位の胸がむにゅっと当たってくる。
残念ながら下着があるため本来の胸の柔らかさはわからない。
だが、ほんのり体温は伝わってきて、自然と下半身が疼いてくる。
これはいかん、何か話をして気を紛らわせないと。
「さ、佐原さん。女子三人で帰る時って、どんな話してるの?」
「三人って、私、トモハちゃん、サッチのこと?」
俺は、コクっとうなずいた。
「どんな話って……梅谷くんの前では言えないかな」
って俺のことをネタにしてる? 俺の今の評価は??
「えっ、めっちゃ興味があるんだけど」
「私やサッチは良いけど……、トモハちゃんの名誉のために言えません」
うん? 森崎さんの名誉のため??
「はい。話を変えて、梅谷くん、今好きな人いるんでしょ。誰?」
おいおい、ど直球だな。
佐原さんの目を見ると、冗談で返せない雰囲気を発している。
「えーっと……」
「待って。ここは楽しくイエス、ノー方式にしよう」
俺がその提案にノーと言う前に、一つ目の質問が来た。
「ではまずは、その人は同じ高校にいる」
「……イエス」
「その人は、二年A組の生徒である」
「……イ、イエス」
このまま対象がどんどん絞られていくのだろう。どこかでノーコメントとしなくては。
「その人は、男子である」
「……イエ、ではなくてノー、ノー」
「ふふっ。その人は、窓際、真ん中、廊下側の列で言うと、廊下側の列にいる」
この辺でノーコメントとしなくては。
「ノー」
「ノーお?」
「……コメント」
「ノーコメントかい。ノーじゃなくて良かったんだけど、冗談なしね」
その時、恵みの雨が降り出した。
最初はポツポツであったが、すぐに雨脚は強まった。
「うわー、これはダメね。あけみっちが言っていた小屋まで走りましょ」
これには速攻イエスと答えた。
二人で走ったが、なかなか小屋は見えず、仕方なく大きな木の下で一時的に雨宿りをした。
「大丈夫?」
そう声をかけ、佐原さんを見ると、白い半袖体操服が雨で透け、下着がモロに見えている。
色は薄いピンクで、刺繍もわかるほどだ。
「うん」
このような時は、自分のジャージを貸したり、タオルを貸したりするのが男というものだろうが、あいにく両方とも持っていない。仕方なく、ズボンのポケットに入れていたタオルハンカチを渡した。
「これしかないけど」
「ありがとう。優しいね」
そう言い、佐原さんは軽くポンポンとタオルハンカチで顔を拭いた。
「洗って返すね。そう言えば、あけみっちが小屋に迎えに来るって言ってたよね。時間がないから、もう一度走って小屋に向かいましょ」
時間がないと言っても、みんなを返して傘をホテルに取りに行くって言ってたからすぐには来れないはずだけど……。
まあ、森崎さんたちも小屋に避難しているだろうから早く合流しよう。あわよくば森崎さんの体操服も雨で濡れて……。
そんな妄想をしていると左手が引っ張られた。佐原さんが俺の手を握って引っ張ったのだ。脚が反射的に動き出す。そしていつの間にか、手を握りなおし、俺が佐原さんを引っ張っていた。雨で濡れて冷たいはずの手も温かい。
三百メートルほど走ると明かりのもれる建物が見えてきた。おそらくあそこがあけみっちが言っていた小屋だ。
<次話:服を脱ぐ>
小屋の中で、濡れた服を乾かそうと……。
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