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修学旅行編
第六話 肝試しスタート
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長崎での昼食、集団行動、個人行動ともにヒデキたち男子五人で固まって行動した。
さすがにこの時も席のペアで行動とはならなかった。
ヒデキたちと歩いている間も、ずっと佐原さんのお尻の感触が忘れられない。
「なあ、長崎は今日も雨だったっていう歌知ってるか?」
「……ん?」
ヒデキが聞いてきたが俺を含め皆首を横に振った。
「長崎って雨が降りやすいのか」
「いや、よく知らんが今晩から明日にかけて雨が降る予報になった。さっきまでは曇り予報だったんだけどな」
肝試しは中止になるかもしれない。その場合の代替イベントを佐原さんたちは考えているのだろうか。
ヒデキのように女子と肝試しを楽しみにしている男子のテンションがいっきに下がった。一方、別に楽しみにしていない男子は内心、喜んでいるだろう。中止になったらざまをみろと。
夕飯をホテルで食べた後、一部の生徒がお待ちかねの肝試しとなった。幸い雨は降っていない。
みな半袖長ズボンの体操服姿でホテルのロビーに集まった。
男子の目はクラスのアイドル佐原さんと須藤さんに集中している。制服姿だけでなく体操服姿ももちろん可愛いのだ。それにどうしても胸の膨らみに自ずと視線が向いてしまう。
一方、ヒデキはというと藤木さんを凝視している。
大丈夫か、藤木さん。こいつと一緒に肝試しって。
かく言う俺も、須藤さんの隣で微笑んでいる森崎さんに目を引かれているのだが。
肝試しはクラス行事のため、2年A組だけホテルから徒歩で移動した。それぞれ懐中電灯を持参している。
「懐かしいわね。全然変わってない」
そう呟いたのは、あけみっちだ。どうやらあけみっちが肝試しをしたのはこの離島だったようだ。
「はーい。それでは……」
あけみっちは、顔の下から懐中電灯を当て振り返った。一部の女子がぎゃっとなる。
普段の愛くるしい顔もさすがに怖い。
あけみっちは、してやったり顔でライトを下げた。
「ここからペアもしくは四人グループで道沿いに進みます。そこの左の道を進みグルーっと回ると、そこの右の道に戻ってきます。一本道だし大丈夫。別に私が何か仕掛けているわけではないけど、ここは豊臣秀吉の時代、隠れキリシタンが迫害された島。だから見える人には見えるんだって。でも私も平気だったからみんなも安心していってらっしゃい」
「あけみっち、霊感あるの?」
誰かの質問にあけみっちが明るく答える。
「全くないよ」
おい。霊感がなければそりゃ平気だろう。
だが、よく考えると、霊感がないと見えないだけで霊はいるかもしれないということだろ。普通に怖いんですけど。
そんな俺の不安をよそに肝試しはスタートした。
順番は例のごとく窓側前列からだ。つまり俺と佐原さんのペアは一番最後となる。
五分おきに一組ずつ出発する。
戻ってくるまでの時間はまちまちで、二十分から三十分程度か。意外に距離があるようだ。
ヒデキは藤木さんと手をつないだのか。戻ってきた時、ヒデキら四人は手などつないでいなかったし他のペアもそうだ。やはり、女子が怖がって男子の手を握るなどはドラマや小説の世界なのか。
残りは森崎さん、須藤さんペアと俺たちのペアとなった。
「ちょっと四人とも聞いて。たぶん天気はもつと思うけど、万が一雨が降ったら、真ん中過ぎに少し大きめの小屋があるから雨宿りしてて。傘とかをとりに行かないと行けないから時間がかかるけど、迎えに行くから」
あけみっちが空を見上げた。遠くの空で雷がゴロゴロと鳴っている。
「あなたたち、やっぱりやめとく? 明日もあるし」
そう確認してきたため、四人で顔を見合わせる。森崎さんと目があった。
行きたいという表情に受け取れる。
「大丈夫、先生。ほらここに男子もいるし。ホノカ、雨降ったらトモハちゃんと先に小屋で雨宿りしておくから。というか、降らなくても小屋でね」
ん? 降らなくても? どういう意味?
「そうね。じゃあ気をつけて。特に雷には。他のみんなはホテルに帰しておくから心配しないでね」
森崎さんと須藤さんが出発した。ぎゅっとお互いの手を握っているのが暗闇の中でも良く見えた。
「あなたたち、すぐ、出発してもいいわよ」
「じゃあ……」
「大丈夫です」
俺が出発しますと言おうとした矢先に、佐原さんがキッパリとあけみっちの提案を断った。
「あんまり早く行ったら、二人に追いついちゃってつまらないもん」
俺としては女子三人に囲まれたいわけでも、森崎さんと一緒になりたいのでもなく、正直暗闇が嫌なので、少しでも人数が欲しかったのだが。
きっかり五分後、最終ペアの俺と佐原さんは暗闇に向け、出発した。
その先に待っていたのは暗闇だけでなく、初めての体験であった……。
<次話:透ける服>
やはり雨が降り出し、佐原さんの体操服はビシャビシャに……。どうする俺?
さすがにこの時も席のペアで行動とはならなかった。
ヒデキたちと歩いている間も、ずっと佐原さんのお尻の感触が忘れられない。
「なあ、長崎は今日も雨だったっていう歌知ってるか?」
「……ん?」
ヒデキが聞いてきたが俺を含め皆首を横に振った。
「長崎って雨が降りやすいのか」
「いや、よく知らんが今晩から明日にかけて雨が降る予報になった。さっきまでは曇り予報だったんだけどな」
肝試しは中止になるかもしれない。その場合の代替イベントを佐原さんたちは考えているのだろうか。
ヒデキのように女子と肝試しを楽しみにしている男子のテンションがいっきに下がった。一方、別に楽しみにしていない男子は内心、喜んでいるだろう。中止になったらざまをみろと。
夕飯をホテルで食べた後、一部の生徒がお待ちかねの肝試しとなった。幸い雨は降っていない。
みな半袖長ズボンの体操服姿でホテルのロビーに集まった。
男子の目はクラスのアイドル佐原さんと須藤さんに集中している。制服姿だけでなく体操服姿ももちろん可愛いのだ。それにどうしても胸の膨らみに自ずと視線が向いてしまう。
一方、ヒデキはというと藤木さんを凝視している。
大丈夫か、藤木さん。こいつと一緒に肝試しって。
かく言う俺も、須藤さんの隣で微笑んでいる森崎さんに目を引かれているのだが。
肝試しはクラス行事のため、2年A組だけホテルから徒歩で移動した。それぞれ懐中電灯を持参している。
「懐かしいわね。全然変わってない」
そう呟いたのは、あけみっちだ。どうやらあけみっちが肝試しをしたのはこの離島だったようだ。
「はーい。それでは……」
あけみっちは、顔の下から懐中電灯を当て振り返った。一部の女子がぎゃっとなる。
普段の愛くるしい顔もさすがに怖い。
あけみっちは、してやったり顔でライトを下げた。
「ここからペアもしくは四人グループで道沿いに進みます。そこの左の道を進みグルーっと回ると、そこの右の道に戻ってきます。一本道だし大丈夫。別に私が何か仕掛けているわけではないけど、ここは豊臣秀吉の時代、隠れキリシタンが迫害された島。だから見える人には見えるんだって。でも私も平気だったからみんなも安心していってらっしゃい」
「あけみっち、霊感あるの?」
誰かの質問にあけみっちが明るく答える。
「全くないよ」
おい。霊感がなければそりゃ平気だろう。
だが、よく考えると、霊感がないと見えないだけで霊はいるかもしれないということだろ。普通に怖いんですけど。
そんな俺の不安をよそに肝試しはスタートした。
順番は例のごとく窓側前列からだ。つまり俺と佐原さんのペアは一番最後となる。
五分おきに一組ずつ出発する。
戻ってくるまでの時間はまちまちで、二十分から三十分程度か。意外に距離があるようだ。
ヒデキは藤木さんと手をつないだのか。戻ってきた時、ヒデキら四人は手などつないでいなかったし他のペアもそうだ。やはり、女子が怖がって男子の手を握るなどはドラマや小説の世界なのか。
残りは森崎さん、須藤さんペアと俺たちのペアとなった。
「ちょっと四人とも聞いて。たぶん天気はもつと思うけど、万が一雨が降ったら、真ん中過ぎに少し大きめの小屋があるから雨宿りしてて。傘とかをとりに行かないと行けないから時間がかかるけど、迎えに行くから」
あけみっちが空を見上げた。遠くの空で雷がゴロゴロと鳴っている。
「あなたたち、やっぱりやめとく? 明日もあるし」
そう確認してきたため、四人で顔を見合わせる。森崎さんと目があった。
行きたいという表情に受け取れる。
「大丈夫、先生。ほらここに男子もいるし。ホノカ、雨降ったらトモハちゃんと先に小屋で雨宿りしておくから。というか、降らなくても小屋でね」
ん? 降らなくても? どういう意味?
「そうね。じゃあ気をつけて。特に雷には。他のみんなはホテルに帰しておくから心配しないでね」
森崎さんと須藤さんが出発した。ぎゅっとお互いの手を握っているのが暗闇の中でも良く見えた。
「あなたたち、すぐ、出発してもいいわよ」
「じゃあ……」
「大丈夫です」
俺が出発しますと言おうとした矢先に、佐原さんがキッパリとあけみっちの提案を断った。
「あんまり早く行ったら、二人に追いついちゃってつまらないもん」
俺としては女子三人に囲まれたいわけでも、森崎さんと一緒になりたいのでもなく、正直暗闇が嫌なので、少しでも人数が欲しかったのだが。
きっかり五分後、最終ペアの俺と佐原さんは暗闇に向け、出発した。
その先に待っていたのは暗闇だけでなく、初めての体験であった……。
<次話:透ける服>
やはり雨が降り出し、佐原さんの体操服はビシャビシャに……。どうする俺?
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