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修学旅行編
第一話 新学期
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2年A組では、ただいま自己紹介の真っ最中。
今年一年、仲良くなれそうな気の良い男子、できるものなら仲良くなりたい可愛い女子、またはその逆がいないか、言い方は悪いがクラスメイトを品定めする新学期恒例のあれだ。
自己紹介する順番は、男子のあいうえお順。
俺の名は『梅谷柊伍』で、『う』で始まるため、割と順番は早く四番目だ。
特段、変わった趣味も特技もないので、毎回、自己紹介に困る。
なんせ、中学三年三学期の通知表はオール3。体重はやや軽いが身長はぴったり平均。身体が平均なら、顔もどこにでもいる平凡な面だ。家は貧乏でも金持ちでもない。高校生らしく羽目を外してみたいが、根は真面目。そんな『THE普通』な高校男子だからだ。
ウケ狙いすることなく、ごく普通のあいさつをして席についた。まあ、他人の自己紹介など、数日後、いや数時間後には忘れてしまうものだ。
順番は、あっという間に男子から女子に移った。ここまでで、まあ仲良くできそうな男子は数名いた。女子はどうだ。
スーッと教室を見回す。
ふーん、今年の女子はレベルが割と高めで良い感じだな。
だが、席順の最後から二番目の彼女を見た瞬間、その気持ちがいっきに吹き飛んだ。
『レベルが高い可愛い女子』、とは違う次元、唯一無二の女子がそこにいた。
その娘の名は『森崎友巴』。
小柄で細身、センター分けのボブの彼女を見た瞬間、俺は人生で初めて恋に落ちた。
小学校、中学校、それに高校一年の時にもよく目立つ可愛い女子はいたし、好きかもという感情はあった。
だが森崎さんを見た時の衝撃は相当なもので、思わずその場で立ち上がりそうになったくらいだ。
その目、鼻、口、眉毛から、髪型、体型、デコ出しルック、声まで何もかもが俺の好みにピッタリと当てはまる。一目惚れという域を大きく超えていた。
言うなれば、広大な砂漠の中から、探し求めていた一粒の砂金を偶然見つけた感じである。
そんな衝撃的な高二の初日であったが、田舎の中学出で、奥手の俺は女子とは全く話すことなく、あっという間にゴールデンウィークを迎えた。
当然のことながら森崎さんとの会話時間は、ひと月で『ゼロ秒』だ。
そしてゴールデンウィーク明け。ここから少しずつ、いや急展開で俺と森崎さん、それと彼女らとの関係が動き出す。
久しぶりに見る森崎さんは、四月と変わらず女友だちと教室後方で静かにおしゃべりをしている。その女友だちはみな、クラスでは完全に地味な部類に入る。俺の中では世界一、いや宇宙一である森崎さんも決して目立つタイプではない。
対して教室の真ん中ではクラスのアイドル的存在の女子二人がその友人たちとゴールデンウィークの出来事をケタケタ笑いながら話している。
ガラガラ
「みんな元気そうね。よしよし」
教室に入ってきたのは、二十代後半のスラリとした女教師だ。
クラスでは四月早々から『あけみっち』と呼ばれている。本名は角倉朱海でこのクラスの担任でもあり音楽の先生でもある。
高一からの俺の友人、ヒデキの情報によると学校の近くのマンションで一人暮らしだそうだ。ちなみに、そのマンションには音楽関係を職としている人が多く住んでおり、『完璧な防音』が施されているらしい。
ピアノ専攻らしいすらっとした細い指で平たい小さめの缶箱を持っている。
テーマパークの周年柄でちょっとお値段高めのチョコレートかクッキーでも入っていたのだろう。このゴールデンウィークのお土産にしては少し古い。
「ゴールデンウィーク明けといえば、みんなお待ちかねの席替えね」
そう言い教壇に立った担任の顔がニヤつく。そのニヤつきの意味を考えたがさっぱりわからない。
「加えて二年の一学期といえば大きな行事のアレがあるわよね。でね、担任である私からの勝手な提案なんだけど、今回の席替えで隣同士になったペアでその……」
あけみっちは、そこで言葉を止める。
ペアでその? 何?
教室中が沈黙し、その続きを待った。
<次話:運命の女神様>
果たして俺の隣に座るのは?
今年一年、仲良くなれそうな気の良い男子、できるものなら仲良くなりたい可愛い女子、またはその逆がいないか、言い方は悪いがクラスメイトを品定めする新学期恒例のあれだ。
自己紹介する順番は、男子のあいうえお順。
俺の名は『梅谷柊伍』で、『う』で始まるため、割と順番は早く四番目だ。
特段、変わった趣味も特技もないので、毎回、自己紹介に困る。
なんせ、中学三年三学期の通知表はオール3。体重はやや軽いが身長はぴったり平均。身体が平均なら、顔もどこにでもいる平凡な面だ。家は貧乏でも金持ちでもない。高校生らしく羽目を外してみたいが、根は真面目。そんな『THE普通』な高校男子だからだ。
ウケ狙いすることなく、ごく普通のあいさつをして席についた。まあ、他人の自己紹介など、数日後、いや数時間後には忘れてしまうものだ。
順番は、あっという間に男子から女子に移った。ここまでで、まあ仲良くできそうな男子は数名いた。女子はどうだ。
スーッと教室を見回す。
ふーん、今年の女子はレベルが割と高めで良い感じだな。
だが、席順の最後から二番目の彼女を見た瞬間、その気持ちがいっきに吹き飛んだ。
『レベルが高い可愛い女子』、とは違う次元、唯一無二の女子がそこにいた。
その娘の名は『森崎友巴』。
小柄で細身、センター分けのボブの彼女を見た瞬間、俺は人生で初めて恋に落ちた。
小学校、中学校、それに高校一年の時にもよく目立つ可愛い女子はいたし、好きかもという感情はあった。
だが森崎さんを見た時の衝撃は相当なもので、思わずその場で立ち上がりそうになったくらいだ。
その目、鼻、口、眉毛から、髪型、体型、デコ出しルック、声まで何もかもが俺の好みにピッタリと当てはまる。一目惚れという域を大きく超えていた。
言うなれば、広大な砂漠の中から、探し求めていた一粒の砂金を偶然見つけた感じである。
そんな衝撃的な高二の初日であったが、田舎の中学出で、奥手の俺は女子とは全く話すことなく、あっという間にゴールデンウィークを迎えた。
当然のことながら森崎さんとの会話時間は、ひと月で『ゼロ秒』だ。
そしてゴールデンウィーク明け。ここから少しずつ、いや急展開で俺と森崎さん、それと彼女らとの関係が動き出す。
久しぶりに見る森崎さんは、四月と変わらず女友だちと教室後方で静かにおしゃべりをしている。その女友だちはみな、クラスでは完全に地味な部類に入る。俺の中では世界一、いや宇宙一である森崎さんも決して目立つタイプではない。
対して教室の真ん中ではクラスのアイドル的存在の女子二人がその友人たちとゴールデンウィークの出来事をケタケタ笑いながら話している。
ガラガラ
「みんな元気そうね。よしよし」
教室に入ってきたのは、二十代後半のスラリとした女教師だ。
クラスでは四月早々から『あけみっち』と呼ばれている。本名は角倉朱海でこのクラスの担任でもあり音楽の先生でもある。
高一からの俺の友人、ヒデキの情報によると学校の近くのマンションで一人暮らしだそうだ。ちなみに、そのマンションには音楽関係を職としている人が多く住んでおり、『完璧な防音』が施されているらしい。
ピアノ専攻らしいすらっとした細い指で平たい小さめの缶箱を持っている。
テーマパークの周年柄でちょっとお値段高めのチョコレートかクッキーでも入っていたのだろう。このゴールデンウィークのお土産にしては少し古い。
「ゴールデンウィーク明けといえば、みんなお待ちかねの席替えね」
そう言い教壇に立った担任の顔がニヤつく。そのニヤつきの意味を考えたがさっぱりわからない。
「加えて二年の一学期といえば大きな行事のアレがあるわよね。でね、担任である私からの勝手な提案なんだけど、今回の席替えで隣同士になったペアでその……」
あけみっちは、そこで言葉を止める。
ペアでその? 何?
教室中が沈黙し、その続きを待った。
<次話:運命の女神様>
果たして俺の隣に座るのは?
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