俺らが好きなのはキミだけっ!

コハク

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第2話 遊園地で仲良し作戦!

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「次どこに行きます?」

「そろそろパレード始まんじゃね?」

 パンフレットを広げながら、みどり怜央れおは次の行き先について話をしている。
 …… 幸人ゆきとはといえば、そんな彼らを横目に、先程ラーピッドちゃんシアター内で撮った写真を眺めていた。
 写真には、スクリーン裏に描かれている隠れラーピッドちゃんと一緒に、今日という日がどれだけ楽しかったかを表すように笑顔を浮かべている碧と怜央、そして、幸人の姿が写っていた。




 結局、『3人で一緒に写真を撮りましょうよ!』という碧の提案により、シアター内にいたスタッフに頼み、3人一緒に写真を撮ることになった。

 写真を撮った直後、碧は言った。

「そういえば言い忘れてたんですけど、隠れラーピッドちゃんって、カップル以外にもご利益があるらしいですよ」

「……カップル以外?どういうこと?」

「隠れラーピッドちゃんは、『永遠不滅の友情を与えてくれる』なんてジンクスもあるんですって」

「おいおい、ラーピッドちゃんに仕事与えすぎなんじゃねーの?」

 半ば呆れたように、もう半分は面白がっているように言う怜央。
 それに対して碧は、『たしかにそうかもしれませんね』と、苦笑いしながら頷くと、2人の顔色を伺うような表情をしながら『でも__』と話を紡いだ。

「ぼく、隠れラーピッドちゃんには悪いけど、そのご利益にほんのちょっと頼ろうと思います」

「……どういうこと?」

「今日一緒に過ごしてみて思ったんです。もっと先輩たちと、こんな風に楽しく過ごせたらいいなって……。だから……図々しいお願いですけど、よかったら……ぼくとお友だちに、なってください!」

 緊張が伝わっているのか声が震え、それでもはっきりと自分の意志を伝えた碧。
 そんな彼の言葉を聞いた幸人は、内心複雑な気持ちを抱いていた。

 ……。今日という日を経ても、結局自分は碧から恋愛対象として見てもらうことができなかった。
 幸人にとっては、それだけが残念でならないのだ。しかし残念であると同時に、__

(……でも、今はそれでいいかもしれない)

 __幸人はそう考えていた。

 思えば自分は、『早く碧の隣に立てるような存在になりたい』と、少し焦りすぎていたのかもしれない。まだ彼のことを、上辺だけしか知らなかったというのに。

 図書室で初めて碧と出会い、自身に向けた笑顔を見た時から、彼のことを『守ってあげたくなるような儚い存在』だと思っていた。
 だから、年上であり生徒会長という立場を持つ自分が守らなければ。そう思い込んでいた。

(そんなのは単なる思い上がり、だったわけだけど……)

 ゴーストの屋敷では、自分の方が碧にフォローされていた。隠れラーピッドちゃんを見つけたのも、碧の閃きのおかげだった。

(……。怜央が彼のこと、そう言ってたっけ……)

 碧に一目惚れをしたあの日から、誰よりも彼の隣に立てる存在でありたいと願っていた。
 けれど、自分が好きだったのは、という碧の上辺だけだったかもしれない。

 だから__

「……うん、改めて友だちとしてよろしくね、

 __今は、友だちとして彼のことをじっくり知っていきたい。自分のことも、少しずつ知ってもらいたい。そう思いなおしたのだ。

「……!」

 幸人の言葉を聞いた碧は、大きな目を瞬かせながらも、その後すぐにはにかみながら言った。

「はい!!よろしくお願いします!」



「ゆーきとっ、何ニヤニヤしてんの?もうすぐパレード始まっちまうぜ?」

「……あ、あぁ、今行くよ、怜央」

 碧と友だちとして、関係が一歩深まったこと。そして、碧から下の名前で呼んでもらえたことの喜びに浸っていた幸人は、怜央の呼びかけによって現実へと戻ってきた。
 前方に視線を向けると、少し離れているところにいる碧が、自分を呼ぶように手を振っている。
 その微笑ましい仕草に、思わず口元が緩んだ。

「よかったじゃねえの、櫻木ちゃんに名前で呼んでもらえて」

「なんだ、拗ねているのかい?怜央もあの流れに乗って、『名前で呼んで』ってお願いすればよかったじゃないか」

 碧のもとへ向かいながら投げかけられた怜央の言葉に、『どうせいつものからかいだろう』と、幸人はいつもの調子で返す。

「碧くんはいい子だから、きっとすぐに受け入れてくれるし、怜央ともいい友だちとして__」

「__友だちじゃダメなんだよ」

「……え?」

 幸人の言葉を遮った怜央の顔には、いつもの愉快な雰囲気はなかった。まるで、雨の日の空のように、暗く沈んでいた。

「ダメなんだ、友だちなんて、生半可な関係じゃ……櫻木ちゃんは、もっと……」

「……怜央?」

 いつもと違う幼なじみに、幸人は心配になって彼に呼びかける。

 ……少し間が空いたあと、幸人に向けた怜央の表情は、いつもの明るい顔に戻っていた。

「……なーんて、冗談だよ!お前がちょいと調子にのってっから、からかっただけだっての!」


 いつものように幸人の背中をバシバシと叩きながらそう言えば、怜央は彼を追い越し、早足で碧の方へと向かっていった。
 しかし……。

「……本当に、冗談で済ませていいのか……?」

 幸人の心に抱いた違和感は、どうしても拭うことができなかったのだった。

【第二話 END】
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