俺らが好きなのはキミだけっ!

コハク

文字の大きさ
上 下
9 / 12
第2話 遊園地で仲良し作戦!

5

しおりを挟む
 視点は櫻木さくらぎ みどりへ戻る。

 _____

 ぼくは今日という日に感謝してもしきれない。やっぱり今日は来て良かった!!
 なんてったって、推したちの萌えを間近で感じることができたのだから!

 ゴースト屋敷に入る時に「幸人ゆきとと手を繋いでくれ」って大神先輩から言われた時は、心の中で「2人が手を繋げばいいじゃん!!」って思わず叫んじゃっけどね。
 「友沢先輩がおばけが苦手だという事実を、大神先輩が知っていた」と聞いた時はなおさら……。こういうのは幼なじみの大神先輩の方が適任だろうし。
 ……別に、2人が手を繋いでる姿を見たかったわけじゃなくてね?

 けれど、大神先輩がそうしたのは、「友沢先輩が一番落ち着く場所が大神先輩の背中」ということを知っていたからってわけで……やっぱり、大神先輩は友沢先輩のことを誰よりも理解してると痛感させられた。

 しかも、ゴースト屋敷の中でおばけが飛び出した時、悲鳴をあげる友沢先輩をサッと自分の背中に隠して、『大丈夫だ、幸人。俺がいるから』と声をかける大神先輩の頼もしさといったら……。
 さながら騎士!友沢先輩も大神先輩に惚れ直したに違いない!

 ……それにしても、友沢先輩になんて弱点があるとは、ちょっと意外だったな。
 まあでも、大神先輩が隣にいたら、どんな弱点からでも守ってもらえそうだけど……。友沢先輩も、そんな大神先輩の傍だからこそ安心できるんだろうなぁ……。

 いやー、こういうという幼なじみならではの関係性っていいよねぇ!
 インスピレーションがどんどん湧いてくる!
 家に帰ったら新作小説のアイデアをまとめないと!

 なんて浮き足立つ中、ぼくは先輩たちと共に、引き続きSNSに投稿されたヒント頼りに隠れラーピッドちゃんを探し続けた。

 『スリルを味わえる場所』というヒントを見つければジェットコースターの座席を。
 『キャラクターの魅力に触れられる!』というヒントを見つけれればラーピッドちゃんとその仲間たちのことをよく知れるを。
 『ゆっくり座席に座れる』というヒントを見つければメリーゴーランドの馬を。

 ……といった具合に次々と見回ったものの、隠れラーピッドちゃんはなかなか見つからない。まあ見つからないこそ、ラーピッドちゃんなんだろうけど。

 朝からずっと歩き回ったせいで疲れてしまったところで、ぼくたちはレーブパラダイス内にあるカフェ、『ラーピッドちゃんの甘味処かんみどころ』で休憩することにした。

「わぁ、どれもすっごく美味しそう!」

「遊園地のスイーツって、キャラクターものばっかりだと思っていたけど、普通に美味しそうなものもあるんだね……」

「レーブパラダイスはカップル以外の大人子供のお客にも楽しめるように、いろいろ工夫してるみたいですからね!」

 カフェに入ってスタッフに案内された席に座り、メニューを眺めながら友沢先輩と雑談をしていれば。

「俺ジャンボパフェ!」

 と、横から大神先輩の元気な声が聞こえてきた。
 それを『わかったから落ち着け』と、友沢先輩が宥める。
 こういう遠慮ない態度も、幼なじみゆえのものなんだろうな。微笑ましい。

_____

「大神先輩は、甘いものがお好きなんですか?」

 ぼくはラーピッドちゃんパンケーキ、友沢先輩はティラミス、そして大神先輩はジャンボパフェと、それぞれ頼んだ物を食べる中、大神先輩にそう質問をした。

「大神先輩、ぼくをお昼に誘ってくれる時、いつも甘いものを進めてくださいますし……」

「あったりー!意外っしょ?よく言われんだよな、『肉とかガツガツ食ってそうな見た目してパフェかよ』って!」

「んーでも、何が好きかなんて自分の勝手ですし、いいと思いますよ、ぼくは」

「それな!櫻木ちゃんわかってるー!」

 大神先輩はぼくに向かって笑いかける。まるでぼくの答えを喜んでいるように、楽しそうに。
 ……なんて、少し思い上がりかな?

 そんなことを思っていれば、間近から視線が痛いほど突き刺さってきた。
 視線を感じる方をふりかえると、友沢先輩がじっ、とこちらを見つめている。

(いけない……!友沢先輩を差し置いて、ぼくみたいな部外者が大神先輩と楽しく会話をするなんて、見守る側としてなんという失態を……!!)

「櫻木くん、あんまりコイツを甘やかさない方がいいよ。コイツ、いつも甘いものばっかり食べすぎてるから、そのうち身体を壊してしまう……」

 な、なんだ、ただ大神先輩の健康を心配してただけか……。
 緊張で強ばっていた体の力が、ふっと抜けた。

「お前は俺のオカンかよ……」

「事実だろう?この間バスケ部の後輩と映画を見に行った時も、キャラメルポップコーン2つも食べたそうじゃないか。しかもLサイズ」

「ぽ、ポップコーン2つ!?それもL!?」

「いいじゃん別に!腹減ってたら映画に集中できねえだろ!?」

 呆れたような表情を浮かべる友沢先輩と、その前でむくれたり駄々を捏ねたりする大神先輩。
 こう見ると、幼なじみというよりは親子みたいだ。

(それにしても、ポップコーンLサイズをふたつも食べるなんて、おなかいっぱいになって映画どころじゃないんじゃ……。……ん?映画?)

 ぼくの脳内で、今までのキーワードの点と点が、線になっていく……。そしてそれは、ひとつの答えとなった。

「わかった!!」

 次の瞬間、ぼくは思わずそう叫んでいた。軽口を叩きあっていた先輩たちと周りのお客さんは、びっくりした顔を見てこちらを見ている。
 ぼくはバツが悪そうに俯く。

「す、すいません……」

「どうしたよ櫻木ちゃん、いきなりでかい声出して……」

「櫻木くん、わかったってもしかして……!」

 察したらしい友沢先輩に、ぼくは頷く。
 あそこならもしかしたら……!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハーレムは遠慮します〜みんなが俺を好きってマジですか??〜

彩ノ華
BL
自分のことを平凡でダメダメだとおもってる主人公(無自覚)が夢の中で友達に溺愛されるお話。。 これって夢なはず…だよな?

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

俺の愉しい学園生活

yumemidori
BL
ある学園の出来事を腐男子くん目線で覗いてみませんか?? #人間メーカー仮 使用しています

アリスの苦難

浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ) 彼は生徒会の庶務だった。 突然壊れた日常。 全校生徒からの繰り返される”制裁” それでも彼はその事実を受け入れた。 …自分は受けるべき人間だからと。

僕の平凡生活が…

ポコタマ
BL
アンチ転校生によって日常が壊された主人公の話です 更新頻度はとても遅めです。誤字・脱字がある場合がございます。お気に入り、しおり、感想励みになります。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

火傷の跡と見えない孤独

リコ井
BL
顔に火傷の跡があるユナは人目を避けて、山奥でひとり暮らしていた。ある日、崖下で遭難者のヤナギを見つける。ヤナギは怪我のショックで一時的に目が見なくなっていた。ユナはヤナギを献身的に看病するが、二人の距離が近づくにつれ、もしヤナギが目が見えるようになり顔の火傷の跡を忌み嫌われたらどうしようとユナは怯えていた。

処理中です...