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第2話 遊園地で仲良し作戦!
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そして10分後。ゴースト屋敷から出た彼らを、大神 怜央視点で見てみよう。
_____
隠れラーピッドちゃんを探しにゴースト屋敷に入って、10分くらい経った後。
「んー……隠れラーピッドちゃんは見つからなかったな……」
「配られた懐中電灯の明かりだけじゃわからないところにあったとか?」
「えー、そんな意地悪なとこに隠すか普通?」
ゴースト屋敷の入口付近、俺と櫻木ちゃんは互いの顔を見合わせ、首を傾げていた。
俺の頼み通り、櫻木ちゃんはしっかりと幸人の手を握ってくれている。
で、そんな幸人はどうしたのかというと……。
「……ッ、………!」
……櫻木ちゃんの手どころか、肩にまでしがみつき、目をうるませ、ガタガタと身体を震わせていた。
「大丈夫かぁ、幸人?」
俺が幸人の顔を覗き込みながらそう尋ねると、幸人はこれまた可哀想なほど震えた声で答える。
「……いいい、今どきの遊園地のお化け屋敷が、あああ、あんなに、ここ、こわいなんて……おもわなかっ、たた……」
普段のキリッとしたすまし顔幸人しか知らない学校のやつらが、今のこいつを見たらさぞ仰天することだろう。
あーあ、だから「本当にいいんだな?」って何度も念を押したのに……。
幸人にしがみつかれている櫻木ちゃんが、目を見開きながら呟く。
「意外ですね、友沢先輩って、おばけ苦手だったんだ……」
「そーそ、ガキのころ、コイツの家に泊まる時に夜中には必ず『トイレについて来て』とせがんできてなぁ……」
「そ、その話はしないでくれ、怜央!!」
そう、この友沢 幸人は、成績優秀で教師や生徒からの評価も申し分無しの、非の打ち所のない男なのだが、たった一つだけ弱点がある。
それが、おばけとか幽霊とか……所謂そういうホラーの類だった。
……にも関わらず、コイツが「ゴースト屋敷に入ろう」なんて言い出した時はびっくりしたよ。高校生になった今なら大丈夫だと思ったのか、櫻木ちゃんの前でカッコつけたかったのか知らないけどさ。
案の定、ゴースト屋敷に入ってすぐ、ゴーストが飛び出した途端に女子のような甲高い悲鳴をあげて……。
その後もゾンビやドラキュラなどのおばけや、脅かし用のしかけに、出口にたどり着くまでビビり散らかしてたもんな……。
そんなことを思い返していれば、ようやく落ち着いたらしい幸人が、櫻木ちゃんの肩からゆっくり手を離して、彼に声をかけた。
「……櫻木くん」
「はい?」
「その……ごめん、見苦しいところを見せて。……幻滅、させたよね……」
痛々しいほどに落ち込んだ様子で、地面に視線を落とす幸人。無理もないな。普段弱みを見せない完璧な生徒会長様が、後輩であり想い人に、ゴーストたちに怯えてギャーギャーわめく姿を見られたら、メンツが丸つぶれだ。
……けれどまあ、それは杞憂ってもんだぜ、幸人。
「そんなことありませんよ。誰だって苦手なものはあります。むしろ、ぼくが知らない友沢先輩を知れて、嬉しいです!」
「そ……そう?」
……ほらな?櫻木ちゃんは絶対、人の欠点をバカにせずに受け入れてくれる、優しくて強い子なんだ。
「あの……怜央先輩は友沢先輩がおばけ苦手って、知っていたんですか?」
……と、ここで不意に櫻木ちゃんが俺に尋ねてきた。
「ん?そりゃまぁ、幼なじみだしなあ……。だから櫻木ちゃんに『幸人と手を繋いでて』ってお願いしたわけだし。幸人が安心できるようにさ」
「だったら、手を繋ぐのは怜央先輩でもよかったんじゃ……?ぼくよりも付き合いが長い先輩の方が、友沢先輩も安心できたでしょうし……」
「…………」
まぁ正直、幸人と櫻木ちゃんが手を繋ぐなんて癪だったけど……。
櫻木ちゃんも幸人ほどじゃないけど怖いの苦手だろうから、安心させたかったし……。
それになにより……。
「こいつ、俺の後ろがどこよりも安心するんだってさ」
「!!」
オレが歯を見せて笑って言い返せば、幸人は面白いほどに慌てながら叫んだ。
「い、いつの話をしているんだ!怜央!!」
……まあいつかって言われたら、小学校低学年くらいの話なんだけど。
はは、怜央のやつ、ゆでダコみたいに顔を真っ赤にさせてやんの。
「……ゆ、幸人先輩、そんなかわいいこと言ってたんですね……」
ん……?なんか心做しか櫻木ちゃんの顔が赤いような……。
まてよ……?そういやあ世の中には、見かけと中身が違う、そういうギャップ萌えに弱いやつがいるって聞いたことがある。
それって……一見完璧に見えて、怖いものが苦手っていう弱点を持つ、幸人にドンピシャじゃねえか!?
つまり、櫻木ちゃんは幸人のギャップ萌えにやられて……!?くそっ、思わぬとこで幸人の好感度をあげちまった~~!!
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隠れラーピッドちゃんを探しにゴースト屋敷に入って、10分くらい経った後。
「んー……隠れラーピッドちゃんは見つからなかったな……」
「配られた懐中電灯の明かりだけじゃわからないところにあったとか?」
「えー、そんな意地悪なとこに隠すか普通?」
ゴースト屋敷の入口付近、俺と櫻木ちゃんは互いの顔を見合わせ、首を傾げていた。
俺の頼み通り、櫻木ちゃんはしっかりと幸人の手を握ってくれている。
で、そんな幸人はどうしたのかというと……。
「……ッ、………!」
……櫻木ちゃんの手どころか、肩にまでしがみつき、目をうるませ、ガタガタと身体を震わせていた。
「大丈夫かぁ、幸人?」
俺が幸人の顔を覗き込みながらそう尋ねると、幸人はこれまた可哀想なほど震えた声で答える。
「……いいい、今どきの遊園地のお化け屋敷が、あああ、あんなに、ここ、こわいなんて……おもわなかっ、たた……」
普段のキリッとしたすまし顔幸人しか知らない学校のやつらが、今のこいつを見たらさぞ仰天することだろう。
あーあ、だから「本当にいいんだな?」って何度も念を押したのに……。
幸人にしがみつかれている櫻木ちゃんが、目を見開きながら呟く。
「意外ですね、友沢先輩って、おばけ苦手だったんだ……」
「そーそ、ガキのころ、コイツの家に泊まる時に夜中には必ず『トイレについて来て』とせがんできてなぁ……」
「そ、その話はしないでくれ、怜央!!」
そう、この友沢 幸人は、成績優秀で教師や生徒からの評価も申し分無しの、非の打ち所のない男なのだが、たった一つだけ弱点がある。
それが、おばけとか幽霊とか……所謂そういうホラーの類だった。
……にも関わらず、コイツが「ゴースト屋敷に入ろう」なんて言い出した時はびっくりしたよ。高校生になった今なら大丈夫だと思ったのか、櫻木ちゃんの前でカッコつけたかったのか知らないけどさ。
案の定、ゴースト屋敷に入ってすぐ、ゴーストが飛び出した途端に女子のような甲高い悲鳴をあげて……。
その後もゾンビやドラキュラなどのおばけや、脅かし用のしかけに、出口にたどり着くまでビビり散らかしてたもんな……。
そんなことを思い返していれば、ようやく落ち着いたらしい幸人が、櫻木ちゃんの肩からゆっくり手を離して、彼に声をかけた。
「……櫻木くん」
「はい?」
「その……ごめん、見苦しいところを見せて。……幻滅、させたよね……」
痛々しいほどに落ち込んだ様子で、地面に視線を落とす幸人。無理もないな。普段弱みを見せない完璧な生徒会長様が、後輩であり想い人に、ゴーストたちに怯えてギャーギャーわめく姿を見られたら、メンツが丸つぶれだ。
……けれどまあ、それは杞憂ってもんだぜ、幸人。
「そんなことありませんよ。誰だって苦手なものはあります。むしろ、ぼくが知らない友沢先輩を知れて、嬉しいです!」
「そ……そう?」
……ほらな?櫻木ちゃんは絶対、人の欠点をバカにせずに受け入れてくれる、優しくて強い子なんだ。
「あの……怜央先輩は友沢先輩がおばけ苦手って、知っていたんですか?」
……と、ここで不意に櫻木ちゃんが俺に尋ねてきた。
「ん?そりゃまぁ、幼なじみだしなあ……。だから櫻木ちゃんに『幸人と手を繋いでて』ってお願いしたわけだし。幸人が安心できるようにさ」
「だったら、手を繋ぐのは怜央先輩でもよかったんじゃ……?ぼくよりも付き合いが長い先輩の方が、友沢先輩も安心できたでしょうし……」
「…………」
まぁ正直、幸人と櫻木ちゃんが手を繋ぐなんて癪だったけど……。
櫻木ちゃんも幸人ほどじゃないけど怖いの苦手だろうから、安心させたかったし……。
それになにより……。
「こいつ、俺の後ろがどこよりも安心するんだってさ」
「!!」
オレが歯を見せて笑って言い返せば、幸人は面白いほどに慌てながら叫んだ。
「い、いつの話をしているんだ!怜央!!」
……まあいつかって言われたら、小学校低学年くらいの話なんだけど。
はは、怜央のやつ、ゆでダコみたいに顔を真っ赤にさせてやんの。
「……ゆ、幸人先輩、そんなかわいいこと言ってたんですね……」
ん……?なんか心做しか櫻木ちゃんの顔が赤いような……。
まてよ……?そういやあ世の中には、見かけと中身が違う、そういうギャップ萌えに弱いやつがいるって聞いたことがある。
それって……一見完璧に見えて、怖いものが苦手っていう弱点を持つ、幸人にドンピシャじゃねえか!?
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