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第2話 遊園地で仲良し作戦!
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ここで一度、視点を友沢 幸人に切り替えてみよう。
______
怜央とぼく、お互いが同じ人を好きだと発覚したあの日の翌日から、ぼくは本格的に櫻木くんへのアプローチを開始した。お昼に誘ったり、放課後一緒に出かけようと誘ったり……。
もちろん、それは怜央も同じだ。どうにか怜央と差をつけることはできないか……。
そう考えていた時、櫻木くんからレーブ・パラダイスの話を聞いた。……柄にもなく浮かれていたと、自分でも思う。
櫻木くん曰く、レーブ・パラダイスは恋人の聖地だという。
その話を自分に対して熱心にしてくれたということは、ようやく自分をそういう相手だと認識してくれたのだと舞い上がってしまっていた。
……まぁ、結局はぼくの早とちり、そして思い違いで、どういうわけかぼくと怜央、そして櫻木くんの3人でレーブ・パラダイスへ遊びに行くことになってしまった。
正直落胆しなかったかといえば嘘ではない。けれど、この話を電話で怜央に伝えた時、彼は逆に嬉しそうに笑ってこう言った。
『それってさあ……櫻木ちゃんがチャンスくれたってことじゃねえか?』
『チャンス……?』
『そう、その遊園地デートで、俺たちがどれだけ櫻木ちゃんのハートを掴めるか……そういうルールのゲームを、櫻木ちゃんは仕掛けてきたってわけさ』
『またそんな根拠のない解釈を……』
櫻木くんに告白を聞かれた時と言い、彼はポジティブ・シンキングの天才なのだろうか。
『まあでも、変にネガティブに考えるよりはマシだろ?』
『…………』
……怜央の極端にポジティブで楽観的な思考には呆れることが多いけれど、たしかに彼の言うことには一理ある。
思惑が外れたからって変にうじうじするよりも、学校以外にも櫻木くんと接近するチャンスができたと考える方が、心にも余裕ができる。
悩むのをやめて、思考を切り替えるとしよう。
『そうなると、今度の遊園地デートの最終目標は……』
『あぁ、どちらかが先に隠れラーピッドちゃんを見つけるってことだな……』
見つけたカップルは永遠に幸せになると言われる隠れラーピッドちゃん。櫻木くんが特に熱が入っていたのはそれについて話す時だった。
つまり、櫻木くんはぼくと怜央のどちらかが、隠れラーピッドちゃんを見つけることを望んでいる。
必ず見つけて、少しでも櫻木くんにそういう相手として意識してもらうんだ……!!
そして遊園地デート当日。ぼくたちは早速隠れラーピッドちゃん探しを始めた。ぼくは隠れラーピッドちゃんを見つけた人たちがSNSに投稿したヒントを検索し、そこから予想される場所へ、櫻木くんと怜央を案内した。
まず最初の場所は__。
「……なぁ、幸也。お前本当にここに入る気か?」
例えるならば、『勉強しないで期末テストに挑むぞ!』と言われた時のような正気を疑うような顔をしながら、怜央はぼくに尋ねる。
その質問の意味がわからず、ぼくは目を瞬かせた。
「どうして?ヒントのひとつによれば、一番可能性のある場所じゃないか__」
そう言ってぼくは、目の前の建物を仰ぎ見る。
「__このゴーストの館……つまり、お化け屋敷ならさ」
そう、ヒントのひとつには『暗い場所』とあった。遊園地で暗い場所と聞いてまず思いつくものといえば……。お化け屋敷じゃないか。
「まあそうだけど……お前が本当にいいなら入るぞ?いいか?ほんっっっとうにいいんだな?」
「しつこいな、いいって言ってるだろう。」
お化け屋敷に入ることを、怜央がどうしてこんなに躊躇うのか、ぼくにはわからなかった。彼、どちらかといえばホラー映画は喜んで見るほどの怖いもの好きだったはずだったけど……。
まあいいか……。あぁそうだ、忘れちゃいけないのが、櫻木くんのことだ。
「ごめん、勝手に話すすめちゃったけど、櫻木くんは怖いの平気?」
「うーん……ホラー漫画とかアニメはよく見るんですけど……ちょっと苦手……かな」
「そう……なら、外で待ってる?」
「いえ!せっかく来たんですから、頑張って入ります!」
うーん……怜央から聞いた通り、櫻木くんはぼくが思うより強い子のようだ。強がりじゃないといいけど……。
「じゃあ俺が先導して歩くからさ、櫻木ちゃんと幸人は手を繋いで、後ろからついてきてくれ」
「え?」
突然の怜央の提案に、ぼくと櫻木くんの戸惑いの声がハモる。
「い、いえ!ぼくが前を歩くので……!」
「いいっていいって!櫻木ちゃん怖いの得意じゃないだろうし、無理しなくていいよ。それに……幸人と手ぇ繋いでくれてた方が、安心するだろうし……」
……なんだ?怜央は一体何を企んでいる?怜央の提案通りにすれば、ぼくと櫻木くんは距離が近くなってしまう。彼が考えなしにぼくが有利になるような行動を取るとは思えないし……。
一体、何を思ってぼくに櫻木くんと手を繋ぐ行動を取らせたんだ?
「さーて、そういうわけでしゅっぱーつ!」
悶々と考えるぼくを他所に、怜央は呑気な声を上げて、ゴーストの館に向かってスタスタと歩き出した。
__怜央がなぜあのような言動を取ったのかを僕が知ったのは、それから約10分後のことだった……。
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怜央とぼく、お互いが同じ人を好きだと発覚したあの日の翌日から、ぼくは本格的に櫻木くんへのアプローチを開始した。お昼に誘ったり、放課後一緒に出かけようと誘ったり……。
もちろん、それは怜央も同じだ。どうにか怜央と差をつけることはできないか……。
そう考えていた時、櫻木くんからレーブ・パラダイスの話を聞いた。……柄にもなく浮かれていたと、自分でも思う。
櫻木くん曰く、レーブ・パラダイスは恋人の聖地だという。
その話を自分に対して熱心にしてくれたということは、ようやく自分をそういう相手だと認識してくれたのだと舞い上がってしまっていた。
……まぁ、結局はぼくの早とちり、そして思い違いで、どういうわけかぼくと怜央、そして櫻木くんの3人でレーブ・パラダイスへ遊びに行くことになってしまった。
正直落胆しなかったかといえば嘘ではない。けれど、この話を電話で怜央に伝えた時、彼は逆に嬉しそうに笑ってこう言った。
『それってさあ……櫻木ちゃんがチャンスくれたってことじゃねえか?』
『チャンス……?』
『そう、その遊園地デートで、俺たちがどれだけ櫻木ちゃんのハートを掴めるか……そういうルールのゲームを、櫻木ちゃんは仕掛けてきたってわけさ』
『またそんな根拠のない解釈を……』
櫻木くんに告白を聞かれた時と言い、彼はポジティブ・シンキングの天才なのだろうか。
『まあでも、変にネガティブに考えるよりはマシだろ?』
『…………』
……怜央の極端にポジティブで楽観的な思考には呆れることが多いけれど、たしかに彼の言うことには一理ある。
思惑が外れたからって変にうじうじするよりも、学校以外にも櫻木くんと接近するチャンスができたと考える方が、心にも余裕ができる。
悩むのをやめて、思考を切り替えるとしよう。
『そうなると、今度の遊園地デートの最終目標は……』
『あぁ、どちらかが先に隠れラーピッドちゃんを見つけるってことだな……』
見つけたカップルは永遠に幸せになると言われる隠れラーピッドちゃん。櫻木くんが特に熱が入っていたのはそれについて話す時だった。
つまり、櫻木くんはぼくと怜央のどちらかが、隠れラーピッドちゃんを見つけることを望んでいる。
必ず見つけて、少しでも櫻木くんにそういう相手として意識してもらうんだ……!!
そして遊園地デート当日。ぼくたちは早速隠れラーピッドちゃん探しを始めた。ぼくは隠れラーピッドちゃんを見つけた人たちがSNSに投稿したヒントを検索し、そこから予想される場所へ、櫻木くんと怜央を案内した。
まず最初の場所は__。
「……なぁ、幸也。お前本当にここに入る気か?」
例えるならば、『勉強しないで期末テストに挑むぞ!』と言われた時のような正気を疑うような顔をしながら、怜央はぼくに尋ねる。
その質問の意味がわからず、ぼくは目を瞬かせた。
「どうして?ヒントのひとつによれば、一番可能性のある場所じゃないか__」
そう言ってぼくは、目の前の建物を仰ぎ見る。
「__このゴーストの館……つまり、お化け屋敷ならさ」
そう、ヒントのひとつには『暗い場所』とあった。遊園地で暗い場所と聞いてまず思いつくものといえば……。お化け屋敷じゃないか。
「まあそうだけど……お前が本当にいいなら入るぞ?いいか?ほんっっっとうにいいんだな?」
「しつこいな、いいって言ってるだろう。」
お化け屋敷に入ることを、怜央がどうしてこんなに躊躇うのか、ぼくにはわからなかった。彼、どちらかといえばホラー映画は喜んで見るほどの怖いもの好きだったはずだったけど……。
まあいいか……。あぁそうだ、忘れちゃいけないのが、櫻木くんのことだ。
「ごめん、勝手に話すすめちゃったけど、櫻木くんは怖いの平気?」
「うーん……ホラー漫画とかアニメはよく見るんですけど……ちょっと苦手……かな」
「そう……なら、外で待ってる?」
「いえ!せっかく来たんですから、頑張って入ります!」
うーん……怜央から聞いた通り、櫻木くんはぼくが思うより強い子のようだ。強がりじゃないといいけど……。
「じゃあ俺が先導して歩くからさ、櫻木ちゃんと幸人は手を繋いで、後ろからついてきてくれ」
「え?」
突然の怜央の提案に、ぼくと櫻木くんの戸惑いの声がハモる。
「い、いえ!ぼくが前を歩くので……!」
「いいっていいって!櫻木ちゃん怖いの得意じゃないだろうし、無理しなくていいよ。それに……幸人と手ぇ繋いでくれてた方が、安心するだろうし……」
……なんだ?怜央は一体何を企んでいる?怜央の提案通りにすれば、ぼくと櫻木くんは距離が近くなってしまう。彼が考えなしにぼくが有利になるような行動を取るとは思えないし……。
一体、何を思ってぼくに櫻木くんと手を繋ぐ行動を取らせたんだ?
「さーて、そういうわけでしゅっぱーつ!」
悶々と考えるぼくを他所に、怜央は呑気な声を上げて、ゴーストの館に向かってスタスタと歩き出した。
__怜央がなぜあのような言動を取ったのかを僕が知ったのは、それから約10分後のことだった……。
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