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第2話 遊園地で仲良し作戦!
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日曜日。この日は清々しい程の晴天に恵まれた。遊園地、レーブ・パラダイスは、休日である今日は特にたくさんのお客さんで賑わっていた。
家族、若者集団、カップル……、それぞれがいきいきとした表情でレーブ・パラダイスを散策している。
……そんな中、ぼくの沈んだ顔はさぞ浮いて見えただろう。
「いやー、遊園地なんて何年ぶりだろうなぁ!」
「ふふ、無事に晴れて良かったね」
ぼくの両隣にいる大神先輩と友沢先輩は、ぼくとは正反対で楽しそうな笑顔を浮かべている。
当然だが今日の先輩たちは、学校にいる時とは違って、星彩高等学校の制服ではなく、私服を着ている。
大神先輩は文字入りTシャツにジーパン、そして赤いキャップという、イメージ通りのラフでスポーティな服装。
一方の友沢先輩は、グレーのシャツの上から白いデニムジャケットを羽織っている。いつものきっちりとした制服姿とは違って、なんというか爽やかでスタイリッシュなファッションだ。
……そう、いつもとは違う私服での遊園地デート。ここまではぼくが望んでいた通りだ。だけど問題は、ぼくがこの場にいるということだ。
あの日のお昼休みでレーブ・パラダイスの話をした時、結局『3人で行こう』という結論に落ち着いてしまった。
ああもう、こんなはずじゃなかったのに……!本当は友沢先輩と大神先輩の2人きりでデートに行ってもらうはずだったのに……!
「櫻木ちゃん、どうかした?」
大神先輩に話しかけられ、ハッと我に返る。ぼくより背の高い大神先輩が、心配そうにぼくの顔を覗き込んでいた。
「腹でも痛てぇの?」
「具合が悪いのなら、あんまり無理をしないでね」
優しい声で友沢先輩も言う。
罪悪感で胸がチクリと痛んだ。
そうだよ、2人とも忙しい中、時間を作って来てくれたんだ。なのにぼくがしょげた顔をしてたら、せっかく来た遊園地を楽しんでもらえないじゃないか……!
ぼくは軽い力で両頬を両手でパチン、と叩き、精一杯の笑顔を先輩たちに向けた。
「心配させてごめんなさい!大丈夫です!遊園地って小学生の頃に家族と行った以来だから、ちょっと緊張しちゃって……」
「そっか、なら今日はいっぱい楽しまないとね」
「はい!」
友沢先輩の呼びかけに、ぼくは大きく頷いた。そうだよ、せっかくの遊園地なんだから思い切り楽しまなきゃ!
それに、考えようによっては先輩たちの恋をサポートするチャンスだし!……小説のネタ探しもできるし。
前向きに行こう!
「……んで、櫻木ちゃんの目的は……」
スマホを操作しながら大神先輩は言う。直後すっとこちらに向けられたスマホの画面には、ここ、レーブ・パラダイスのマスコット、ラーピッドちゃんのシルエットの画像が表示されていた。
「この隠れラーピッドちゃんを見つけること、だよな?」
まるで暗殺者がターゲットを確認するような不敵な笑みと気迫にちょっぴりたじろぎつつも、ぼくは頷く。
「は、はい……!どうしても先輩たちと見つけたくて……」
正確には先輩たちとじゃなくて先輩たちになんだけど。
「そうかそうか!任せとけ櫻木ちゃん!俺がバシッと見つけてやるよ!」
「ぼくも頼りにしてほしいな、櫻木くん。こう見えて探し物を見つけるのは得意なんだ」
各々自信ありげに語る先輩たち。
後輩のささやかな願いを叶えようと張り切るその姿は、やはり皆から慕われる学校のツートップなんだなと実感させられる。
……一瞬、獣を狙う狩人のように視線が鋭くなったように見えたのは、気のせいだろうか。
「つっても、どうやって探す?運営側が『隠れラーピットちゃんの場所は見つけても絶対に写真に撮ってSNS等に公開しないように』って呼び掛けてるから、情報ゼロだぜ?」
「なるほど、簡単に見つけられたらおもしろくありませんし、隠れの意味なくなっちゃいますもんね」
となると、やみくもに園内を歩き回るしかないのかな……。そう思っていると。
「いや、ヒントを投稿するのはOKになってるから、見つけた人がヒントを出してくれてるはずだ。それをもとにして探し回ってみよう」
と、友沢先輩が冷静に提案してくれた。さすが生徒会長、頼りになるな……。
「あ、せっかく遊園地にきたんだし、乗り物にのるのも忘れねーようにしねえとな!あと食べ物も!」
「わかってるわかってる。さ、櫻木くん」
友沢先輩がぼくの方に手を差し伸べる。大神先輩も友沢先輩に続けて、手のひらをぼくの方に向ける。
「行こうか」
「行こうぜ」
同時にかけられる優しい声。じんわりと胸が温まると共に、少しだけ胸がキュッと締め付けられる。
だって、僕がその手を取れば、2人が手を繋げないのだから。
見つけたら永遠の愛に結ばれると言われる、隠れラーピッドちゃん。絶対に先輩たちに見つけてもらって、お互いのことをもっと意識してもらうぞ!
決意を胸に、ぼくは両手で2人の手を取った。
__こうして、隠れラーピッドちゃん探しを兼ねた遊園地デート(?)は幕を開けたのだった。
家族、若者集団、カップル……、それぞれがいきいきとした表情でレーブ・パラダイスを散策している。
……そんな中、ぼくの沈んだ顔はさぞ浮いて見えただろう。
「いやー、遊園地なんて何年ぶりだろうなぁ!」
「ふふ、無事に晴れて良かったね」
ぼくの両隣にいる大神先輩と友沢先輩は、ぼくとは正反対で楽しそうな笑顔を浮かべている。
当然だが今日の先輩たちは、学校にいる時とは違って、星彩高等学校の制服ではなく、私服を着ている。
大神先輩は文字入りTシャツにジーパン、そして赤いキャップという、イメージ通りのラフでスポーティな服装。
一方の友沢先輩は、グレーのシャツの上から白いデニムジャケットを羽織っている。いつものきっちりとした制服姿とは違って、なんというか爽やかでスタイリッシュなファッションだ。
……そう、いつもとは違う私服での遊園地デート。ここまではぼくが望んでいた通りだ。だけど問題は、ぼくがこの場にいるということだ。
あの日のお昼休みでレーブ・パラダイスの話をした時、結局『3人で行こう』という結論に落ち着いてしまった。
ああもう、こんなはずじゃなかったのに……!本当は友沢先輩と大神先輩の2人きりでデートに行ってもらうはずだったのに……!
「櫻木ちゃん、どうかした?」
大神先輩に話しかけられ、ハッと我に返る。ぼくより背の高い大神先輩が、心配そうにぼくの顔を覗き込んでいた。
「腹でも痛てぇの?」
「具合が悪いのなら、あんまり無理をしないでね」
優しい声で友沢先輩も言う。
罪悪感で胸がチクリと痛んだ。
そうだよ、2人とも忙しい中、時間を作って来てくれたんだ。なのにぼくがしょげた顔をしてたら、せっかく来た遊園地を楽しんでもらえないじゃないか……!
ぼくは軽い力で両頬を両手でパチン、と叩き、精一杯の笑顔を先輩たちに向けた。
「心配させてごめんなさい!大丈夫です!遊園地って小学生の頃に家族と行った以来だから、ちょっと緊張しちゃって……」
「そっか、なら今日はいっぱい楽しまないとね」
「はい!」
友沢先輩の呼びかけに、ぼくは大きく頷いた。そうだよ、せっかくの遊園地なんだから思い切り楽しまなきゃ!
それに、考えようによっては先輩たちの恋をサポートするチャンスだし!……小説のネタ探しもできるし。
前向きに行こう!
「……んで、櫻木ちゃんの目的は……」
スマホを操作しながら大神先輩は言う。直後すっとこちらに向けられたスマホの画面には、ここ、レーブ・パラダイスのマスコット、ラーピッドちゃんのシルエットの画像が表示されていた。
「この隠れラーピッドちゃんを見つけること、だよな?」
まるで暗殺者がターゲットを確認するような不敵な笑みと気迫にちょっぴりたじろぎつつも、ぼくは頷く。
「は、はい……!どうしても先輩たちと見つけたくて……」
正確には先輩たちとじゃなくて先輩たちになんだけど。
「そうかそうか!任せとけ櫻木ちゃん!俺がバシッと見つけてやるよ!」
「ぼくも頼りにしてほしいな、櫻木くん。こう見えて探し物を見つけるのは得意なんだ」
各々自信ありげに語る先輩たち。
後輩のささやかな願いを叶えようと張り切るその姿は、やはり皆から慕われる学校のツートップなんだなと実感させられる。
……一瞬、獣を狙う狩人のように視線が鋭くなったように見えたのは、気のせいだろうか。
「つっても、どうやって探す?運営側が『隠れラーピットちゃんの場所は見つけても絶対に写真に撮ってSNS等に公開しないように』って呼び掛けてるから、情報ゼロだぜ?」
「なるほど、簡単に見つけられたらおもしろくありませんし、隠れの意味なくなっちゃいますもんね」
となると、やみくもに園内を歩き回るしかないのかな……。そう思っていると。
「いや、ヒントを投稿するのはOKになってるから、見つけた人がヒントを出してくれてるはずだ。それをもとにして探し回ってみよう」
と、友沢先輩が冷静に提案してくれた。さすが生徒会長、頼りになるな……。
「あ、せっかく遊園地にきたんだし、乗り物にのるのも忘れねーようにしねえとな!あと食べ物も!」
「わかってるわかってる。さ、櫻木くん」
友沢先輩がぼくの方に手を差し伸べる。大神先輩も友沢先輩に続けて、手のひらをぼくの方に向ける。
「行こうか」
「行こうぜ」
同時にかけられる優しい声。じんわりと胸が温まると共に、少しだけ胸がキュッと締め付けられる。
だって、僕がその手を取れば、2人が手を繋げないのだから。
見つけたら永遠の愛に結ばれると言われる、隠れラーピッドちゃん。絶対に先輩たちに見つけてもらって、お互いのことをもっと意識してもらうぞ!
決意を胸に、ぼくは両手で2人の手を取った。
__こうして、隠れラーピッドちゃん探しを兼ねた遊園地デート(?)は幕を開けたのだった。
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