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最強ノ戦士、死ス!?
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その急報は伝令兵によってもたらされた。
『…ザ…う報!! ザザッ…急…う!! ザザッ…パンッ…マ…ザッ…ロ伍長…パンッ…死に…ザザッ…すっ!!』
BGMに発砲音が鳴り響く、雑音混じりの無線が緊急事態を告げる。
「……っんの、馬鹿がっ」
硝煙の臭いも遠い場所で、そう吐き捨てて白衣を脱いだ茶髪の男は愛用のライフルを手に外へ飛び出す。一連のやりとりを聞いていた待機中の兵士達は、それぞれに武器を手にして彼の後に続いた。
通信室の通信兵が気を回して、下に車を一台用意させるように指示する。
下に降りた男たちは、勝手知ったる様子で回されていた車の荷台に飛び乗った。
銃撃戦の音が実際に聞こえ始めた頃、車を停めさせ徒歩で移動する。音の方向から銃撃戦が繰り広げられている位置を割り出し、見える場所を探した。
高所から見おろせば、そこはすぐに見つかった。
「マホロ伍長は相変わらず化物っすね。ハルク中尉」
「ただの馬鹿だ」
部下の無駄口へ冷淡に切り返すと、車上で準備を終えていたライフルのスコープを覗き込んだ茶髪の男は照準を合わせた相手へ躊躇いなく引金を引いた。
「いやー、助かりましたぁ。敵の偵察に行ったら、敵の部隊に見つかっちゃいまして。こっち3人だったでしょう? 銃撃戦が始まって逃げるのも難しいし困っちゃいました。敵兵撃退してくれて、ありがとうございます。ハルク中尉」
体に埋まった銃弾を摘出されながら、へらへらと笑って話している相手に、ハルク中尉と呼ばれた茶髪で白衣を血に染めている男が冷たい声で返す。
「マホロ伍長。そのとりあえず取り繕ったような言い方をやめろ」
「えー。だって、僕が伍長でハルクが中尉なら、ハルクが上官でしょう? 昨日は上の人が来て、僕の態度を改めろって言われたから」
「出来んことをするな、阿呆が。お前がさっきの言葉遣いを上官に対するものとして正しいと思っているなら、一兵卒からやり直せ」
「伍長って、一兵卒とあんまり変わんないよぉ」
カシャン、と金属製のトレイに音を立てて、最後の銃弾が摘出された。合計13個だった。
頭部、心臓、内臓などの重要な部分は自軍の技術力を結集して作り上げた防弾服やヘルメットをしていたので問題はないが13発もの弾をくらいながら平然としているマホロに、ハルクは無事だったその頭を叩きたくなった。
医者として怪我人にそんな真似はしたくても出来ないが。
「縫合も完了。おい、輸血!」
「ええー、やだよー。血は怖いよー」
「こんだけ盛大に血を流しといて、何言ってんだ?」
マホロも自分の血で血塗れなら、手術していたハルクもマホロの血で血塗れだ。
さらに言うなら、マホロの救助のために敵兵を狙撃した時に盛大に血は流れていたし、マホロが敵兵を殺すときには返り血を浴びるのも珍しくない。
「見てるのはいいけど、体に入って来るんだよー? 怖いよ」
子供のようなことを言うマホロに、ハルクの堪忍袋の緒がギチギチと音を立てる。それでも相手は怪我人だと自分を制して、
「……死にてぇのか、テメェ」
と、個人的には穏当な対応を行った。
しかし、マホロは、
「平気だって。死なないよー」
「今、目の前で死にかけといて何言ってやがる!?」
血圧・体温ともに低下。顔色は真っ青で、医者に毛が生えた程度の無能な藪医者ならすでに今夜が峠だと宣告している状態だ。
怒鳴り声が続くかと思うタイミングで、
「輸血の準備が出来ました。刺しますね」
注射が上手なハルクの部下がささっとマホロの左腕をとり、輸血用の針をブスリと刺した。
「ああー、注射怖いよー。血が入ってくるのも怖いよー。気持ち悪いよー」
「はいはい。マホロ伍長が怖いとおっしゃっていても、始まりましたからね。気分は悪くないですか?」
「平気だよー」
「それは何よりです」
気の抜けたやりとりに気勢が逸れたハルクは、マホロを部下に任せ、カルテを書くために処置室に隣接する医務室へ向かう。
マホロと同じ任務に当たっていた2人の兵士の治療を任せた部下達も、処置を終わらせて医務室でカルテを書いているようだった。
「オレが治療に当たった伝令兵、脇腹に一発銃弾食らってましたけど、内臓までは傷ついてませんでした。今は高熱が出ていますけど、5日もすればだいぶ回復するかと思います」
「私が治療に当たった兵士は、足を3カ所打たれて左足の膝から下の骨が粉砕されてます。切断まではしませんでしたが、壊死するようなら切断も考えています。少なくとも、あの足では回復しても足手まといにしかなりません。傷病兵として帰還させるしかありませんね」
ハルクがカルテを書いている最中に部下が書き上がったカルテを持って来て、部下達が負傷兵の状態を説明する。
脇腹を負傷した伝令兵をしばらくの間は後方作業に移すよう伝令部隊の隊長に進言し、足を負傷した兵士には傷病兵として帰還を認める決裁を行う。
「マホロ伍長、相変わらず不死身ですね。13発の銃弾なんて、普通なら死んでいてもおかしくないのに……。しかも、痛みで暴れるどころか平然と会話まで」
「生身で引っこ抜いた大木を武器に他の木々を敵兵ごと薙ぎ倒すなんて人間が出来ることとは思えませんよ」
「援護射撃している間に手足に13発食らった状態で、意識のない2人を抱えてスゴイ速さで遁走したって聞きました」
「マホロ伍長って、本当に人間なんでしょうか? ハルク中尉と同郷とのことですけど……」
「実は軍が作った人造人間とか言われても、驚かないよね」
勝手にカルテを盗み見ている部下達を睨んで黙らせた後、
「あれは、昔からただの筋肉馬鹿だ。人間の能力値を超える馬鹿だとは認めるが、軍が作ったにしては馬鹿すぎてお粗末な馬鹿だよ」
とハルクは吐き捨てた。
『…ザ…う報!! ザザッ…急…う!! ザザッ…パンッ…マ…ザッ…ロ伍長…パンッ…死に…ザザッ…すっ!!』
BGMに発砲音が鳴り響く、雑音混じりの無線が緊急事態を告げる。
「……っんの、馬鹿がっ」
硝煙の臭いも遠い場所で、そう吐き捨てて白衣を脱いだ茶髪の男は愛用のライフルを手に外へ飛び出す。一連のやりとりを聞いていた待機中の兵士達は、それぞれに武器を手にして彼の後に続いた。
通信室の通信兵が気を回して、下に車を一台用意させるように指示する。
下に降りた男たちは、勝手知ったる様子で回されていた車の荷台に飛び乗った。
銃撃戦の音が実際に聞こえ始めた頃、車を停めさせ徒歩で移動する。音の方向から銃撃戦が繰り広げられている位置を割り出し、見える場所を探した。
高所から見おろせば、そこはすぐに見つかった。
「マホロ伍長は相変わらず化物っすね。ハルク中尉」
「ただの馬鹿だ」
部下の無駄口へ冷淡に切り返すと、車上で準備を終えていたライフルのスコープを覗き込んだ茶髪の男は照準を合わせた相手へ躊躇いなく引金を引いた。
「いやー、助かりましたぁ。敵の偵察に行ったら、敵の部隊に見つかっちゃいまして。こっち3人だったでしょう? 銃撃戦が始まって逃げるのも難しいし困っちゃいました。敵兵撃退してくれて、ありがとうございます。ハルク中尉」
体に埋まった銃弾を摘出されながら、へらへらと笑って話している相手に、ハルク中尉と呼ばれた茶髪で白衣を血に染めている男が冷たい声で返す。
「マホロ伍長。そのとりあえず取り繕ったような言い方をやめろ」
「えー。だって、僕が伍長でハルクが中尉なら、ハルクが上官でしょう? 昨日は上の人が来て、僕の態度を改めろって言われたから」
「出来んことをするな、阿呆が。お前がさっきの言葉遣いを上官に対するものとして正しいと思っているなら、一兵卒からやり直せ」
「伍長って、一兵卒とあんまり変わんないよぉ」
カシャン、と金属製のトレイに音を立てて、最後の銃弾が摘出された。合計13個だった。
頭部、心臓、内臓などの重要な部分は自軍の技術力を結集して作り上げた防弾服やヘルメットをしていたので問題はないが13発もの弾をくらいながら平然としているマホロに、ハルクは無事だったその頭を叩きたくなった。
医者として怪我人にそんな真似はしたくても出来ないが。
「縫合も完了。おい、輸血!」
「ええー、やだよー。血は怖いよー」
「こんだけ盛大に血を流しといて、何言ってんだ?」
マホロも自分の血で血塗れなら、手術していたハルクもマホロの血で血塗れだ。
さらに言うなら、マホロの救助のために敵兵を狙撃した時に盛大に血は流れていたし、マホロが敵兵を殺すときには返り血を浴びるのも珍しくない。
「見てるのはいいけど、体に入って来るんだよー? 怖いよ」
子供のようなことを言うマホロに、ハルクの堪忍袋の緒がギチギチと音を立てる。それでも相手は怪我人だと自分を制して、
「……死にてぇのか、テメェ」
と、個人的には穏当な対応を行った。
しかし、マホロは、
「平気だって。死なないよー」
「今、目の前で死にかけといて何言ってやがる!?」
血圧・体温ともに低下。顔色は真っ青で、医者に毛が生えた程度の無能な藪医者ならすでに今夜が峠だと宣告している状態だ。
怒鳴り声が続くかと思うタイミングで、
「輸血の準備が出来ました。刺しますね」
注射が上手なハルクの部下がささっとマホロの左腕をとり、輸血用の針をブスリと刺した。
「ああー、注射怖いよー。血が入ってくるのも怖いよー。気持ち悪いよー」
「はいはい。マホロ伍長が怖いとおっしゃっていても、始まりましたからね。気分は悪くないですか?」
「平気だよー」
「それは何よりです」
気の抜けたやりとりに気勢が逸れたハルクは、マホロを部下に任せ、カルテを書くために処置室に隣接する医務室へ向かう。
マホロと同じ任務に当たっていた2人の兵士の治療を任せた部下達も、処置を終わらせて医務室でカルテを書いているようだった。
「オレが治療に当たった伝令兵、脇腹に一発銃弾食らってましたけど、内臓までは傷ついてませんでした。今は高熱が出ていますけど、5日もすればだいぶ回復するかと思います」
「私が治療に当たった兵士は、足を3カ所打たれて左足の膝から下の骨が粉砕されてます。切断まではしませんでしたが、壊死するようなら切断も考えています。少なくとも、あの足では回復しても足手まといにしかなりません。傷病兵として帰還させるしかありませんね」
ハルクがカルテを書いている最中に部下が書き上がったカルテを持って来て、部下達が負傷兵の状態を説明する。
脇腹を負傷した伝令兵をしばらくの間は後方作業に移すよう伝令部隊の隊長に進言し、足を負傷した兵士には傷病兵として帰還を認める決裁を行う。
「マホロ伍長、相変わらず不死身ですね。13発の銃弾なんて、普通なら死んでいてもおかしくないのに……。しかも、痛みで暴れるどころか平然と会話まで」
「生身で引っこ抜いた大木を武器に他の木々を敵兵ごと薙ぎ倒すなんて人間が出来ることとは思えませんよ」
「援護射撃している間に手足に13発食らった状態で、意識のない2人を抱えてスゴイ速さで遁走したって聞きました」
「マホロ伍長って、本当に人間なんでしょうか? ハルク中尉と同郷とのことですけど……」
「実は軍が作った人造人間とか言われても、驚かないよね」
勝手にカルテを盗み見ている部下達を睨んで黙らせた後、
「あれは、昔からただの筋肉馬鹿だ。人間の能力値を超える馬鹿だとは認めるが、軍が作ったにしては馬鹿すぎてお粗末な馬鹿だよ」
とハルクは吐き捨てた。
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