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宵の明星
六夜 一等星
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◇◇◇
アルスラーンが戦いへと赴くのだと分かれば私の胸が早鐘のように動いた。
(怖いっ・・・)
「アルッいやよ!アルッ行かないでっ!」
でも私の声にアルは返事をしてくれない。吹き荒ぶ風の音が強すぎて聞こえないのだ。
そして直ぐに駱駝は走り出して、泣きそうになった・・・離ればなれだ。
「アルスラーンッ」
大きな声で叫べば、今度は返事があった。
「マコ様、少しお静かにっ」
幌越しでくぐもって聞こえる声はザイードさんのもの。
その声も響く風の音と、幌に叩きつけられる砂の音に紛れるほどだ。
「砂嵐に入りましたっ駱駝を伏せさせますっ」
「きゃっ」
その言葉と共に駱駝のバランスが崩れ、伏せたのが分かった。
すると直ぐに裾が捲られて、強烈な風が吹き込んでくる。隙間から入り込んでくる砂嵐に私は目を細めた。その視線の先には口元までガンドーラで覆われたザイードさんが佇んでいる。ザイードさんは手に大きな黒布を持っていて、
「さぁこれに包(くる)まれて」
と言って、有無を言わせず、私を包むとそっと私に身体を伏せさせる。そしてザイードさんもピッタリと幌の布の合わせ目を紐でつないだ後に添い寝をするように一緒に伏せてくれる・・・でも激しく揺れる幌布と囂々(ごうごう)と吹き荒ぶ砂嵐の音に不安が掻き立てられた。
やがてどれくらいの時間が経ったのか、私が耐えきれず
「・・・アルスラーンは大丈夫かな」
と尋ねると、ザイードさんは、
「あの程度の小競り合いであの御方に何かなど起こるはずがございません。」
と自信を持ったように応える。けれど私は納得がいかなかった。戦場を知らない素人だと言外にザイードさんに言われているような気もした。けれどそれでも大切な人間が争いの場に身を置いているのなら不安になるのが人の心というものだ。私はなるべく柔らかく伝わるように言葉を選びながら声をかける。
「戦場なら万が一もあるから心配しない方がおかしいでしょ?大切な人なら尚更じゃない」
返事には幾分間があった。ザイードさんは目を瞬いて私を見ている。
「・・・なるほど。これは殿下が真剣になられるのも分かりますな。」
どういうことだろうと私が尋ねるより早くザイードさんは「申し訳ありませんでした」と謝ってきた。
そして私が知らないアルスラーンのことを語ってくれたのだ。
「わたしは何も根拠なく殿下がご無事と言っているのではありません。信じているからです・・・」
「信じている?」
「そう・・・アルスラーン殿下を信じています。それは私だけじゃない。幾万幾千のイェニチェリたち全員がそうです。」
「どうして」
そこまでアルは信頼されるようになったのだろうと思えば、ザイードさんは静かな口調で語り続けた。
「殿下への信頼は戦場にて捧げたもの・・・先(さき)の戦で先帝陛下がご崩御なされた。あまりに突然の死。相手方の神子の手による神威による死・・・我が軍は瓦解し、あの時、皆がみな死を覚悟したのです。」
アルスラーンが言っていた。亡くなったお父さんのことだ。神子の神威で直接人が死ぬのかと驚く私にザイードさんは夜話(やわ)を聞かせる。まるで彼の言葉から情景が浮かび上がるような気がした。
「たなびくコンスタンティノルの旗。遥か昔に大陸を統一した国を包囲し、我々は誰もが勝利を確信していた。幾万もの軍が蜷局を巻く蛇のように連なっている勇壮な光景の中・・・神威による矢は違わず先帝陛下の胸を貫いた。」
アルスラーンはそれを間近で見ていたんだろう。だってお父さんの話をしている時、彼はとても苦しそうだった。自分の父親が胸に矢を受けて事切れる間、彼は側でずっと見ていたのだ。
「偉大な先帝陛下が目の前で倒れられる瞬間を我々は見てしまった。戦意は喪失し、心は折れた。その瞬間、コンスタンティノルを擁護する国々による十字軍は我々を包囲殲滅せんと動きだしました。」
黒いうねりの様に殺意が人の姿をして沸き上がる、その場所にアルスラーンもいたのだ。
「鎧は重く・・・殲滅され殺されてゆく一歩も動けない乱戦の中でただアルスラーン殿下の声が聞こえたんです。アルスラーン殿下は血まみれの先帝の遺体を自らの馬上に引き上げ、剣を掲げていた。」
まるでその光景がサァッと目に浮かぶようだった。
「陽光が殿下を照らしていた。殿下の髪が炎のように煌めいて・・・暁が戦場に降り立っていた。」
馬上で剣を掲げるアルスラーン。
それはきっと傷ついた兵士たちに再び立ち上がる力をくれたのだろう。
そして彼は凛とイェニチェリたちに向かい叫ぶのだ。
『暁の子等(こら)よ!!!!!砂漠に生まれは消える太陽の子等(こら)よ!!!!!いまだ我が帝国はここにあるっ!!!決して折れていないっ!!!!立てっ!!!立ち上がり剣をとれっ!!!!』
アルスラーンの朱金色の髪が太陽を受けて丁度、暁のように輝く。
兵士たちは戦場に希望を見た。
暁(アルスラーン)よ。
「我々は王たる輝きをふたたび見た・・・だからこそ十二諸侯。イェニチェリはアルスラーン殿下に従うのです。」
その瞬間の勇猛な姿を私も見たいなと思った。そしてザイードさんは再び私を抱き込んで砂から守るように黒い布を胸までかけ直してくれたのだった。
◇
どれくらいの時間が経っただろう。
吹き付ける風の音から砂嵐は大体通り過ぎたと分かったけれど、まだ風は強いようだった。
アルスラーンは大丈夫と信じているけれど、でもやっぱり心配で「アルまだかな」と呟く。
思ったより心細げに響いたその言葉で、私を砂から庇うように抱きしめているザイードさんは口まで覆った服の下で微笑んだようだった。
「女性はそんなに心配しながら待っているのですか」
「心配するでしょう?」
だって大切な人が傷つくかもしれないんだから。彼に目を向けると焦げ茶色の瞳にかち合う。彼の睫毛の先についた砂を指先ではらってあげると、彼は落ち着いた声で有難うございますと囁いた。
「ザイードさんは付き合っている人はいないの?」
「・・・付き合う?」
「あっ・・・うーん好きな人はいないの?」
「いませんね」
と言いながら私の髪を撫でる大きな優しい手。
「何をしている」
すると突然、声がかかって驚いて顔を上げると、アルスラーンが丁度、幌をめくった様子で佇んでいた。彼は私を守ってくれているザイードさんをジッと見つめている。
「殿下」
すぐにザイードさんが手を放してくれる。
「アルッ怪我はないよねっ」
起き上がり手を伸ばす私をアルスラーンも腕を伸ばして抱きしめてくれる。ぎゅっと抱きしめられて、その腕に安心感が込み上げてくる。すり寄れば、アルもふぅっと息をついて私を抱きなおす。
「ザイード……今なぜマコに触れていた。」
けれど私を優しく抱きしめる腕とは反対にアルの声は冷厳に響いて私は抱きしめられたまま戸惑った・・・だってあれはザイードさんのお仕事だった。
「申し訳ございません」
それなのにザイードさんはアルに責められるまま謝っている。伏せられた顔が痛々しい。
「アルッ なにを言ってるの?」
するとアルスラーンは目を細める。
「ザイードはマコに触れたんだぞ」
まるでそのままザイードさんを罰してしまいそうだった。止めないと大変なことになると思った。
「そんなのどうでもいいじゃないっ」
だから私はアルの頬を包んで私の方を向かせて叫ぶ
「バカッ私はアルが死んじゃうんじゃないかって心配したのにっ!!」
あの心が凍るような心配に比べたら、ザイードさんが私を抱きしめて砂避けしてくれてたなんて些細なことなのにっ!
「貴方が生きてるなら私が触れられるなんて大したことないでしょっ!」
アルスラーンは一瞬、きょとんと私を見下ろして「はははははっ」と笑った。
「流石です・・・マコさま」
ほぅっとなぜかザイードさんが息を吐いている。
「マコ」
すりっと頬をなぞられた。
「俺は残酷な男だ。」
つぅっと細められた蜂蜜色の瞳が細まる。
「俺はこの先、マコを守るために他の者の命を奪うことに躊躇をしない。そんな俺をマコに見せたくはないが恐らくこの先、幾度となく見ることになる・・・こんな俺を疎むか?」
私はアルスラーンの頬をバシンと音をたてて掴み、そして目をぱちくりさせるアルに言うのだ。
「人を傷つけるという価値観は私の国では赦されないことよ。」
彼の琥珀の瞳が私をうつして、そこから目を逸らさずに、
「だから私は私を赦さない・・・だって貴方がそうするのは私のせいだもの。貴方の罪から目を逸らさない。」
そうするとアルスラーンは「じゃあ俺から目を逸らさないでいてくれ」と微笑んで額にやさしく口付けてくれた。
夜の帳が落ちる。
砂漠の夜は氷点下まで下がる。だがアルが目的地としていたイスラームモスクまですぐのことだった。
そして駱駝に乗り込んだ私たちは凍える風に吹かれながら砂漠を歩む。
「宵の明星だ、マコ」
「綺麗」
宵の空に輝く金星は夜空にいっそう強く輝いている。
「砂漠の民は星をよんで旅をするんだ」
空一面に広がる星々を頼りにアルが人々を先導して駱駝は星空の砂漠をゆく。
黒光りする砂と星空は遠く境界線が混じっていた。
「ほら見えてきた」
そういってアルスラーンが指し示す先に白亜のイスラームモスクがあった。峻厳な山から流れる水が潤いをもたらす砂漠の裾に位置する場所。白亜の城壁と丸みを帯びたモスクは月明かりに輝いて、まるで物語に出てくる挿絵の一枚のように美しかった。
アルスラーンが戦いへと赴くのだと分かれば私の胸が早鐘のように動いた。
(怖いっ・・・)
「アルッいやよ!アルッ行かないでっ!」
でも私の声にアルは返事をしてくれない。吹き荒ぶ風の音が強すぎて聞こえないのだ。
そして直ぐに駱駝は走り出して、泣きそうになった・・・離ればなれだ。
「アルスラーンッ」
大きな声で叫べば、今度は返事があった。
「マコ様、少しお静かにっ」
幌越しでくぐもって聞こえる声はザイードさんのもの。
その声も響く風の音と、幌に叩きつけられる砂の音に紛れるほどだ。
「砂嵐に入りましたっ駱駝を伏せさせますっ」
「きゃっ」
その言葉と共に駱駝のバランスが崩れ、伏せたのが分かった。
すると直ぐに裾が捲られて、強烈な風が吹き込んでくる。隙間から入り込んでくる砂嵐に私は目を細めた。その視線の先には口元までガンドーラで覆われたザイードさんが佇んでいる。ザイードさんは手に大きな黒布を持っていて、
「さぁこれに包(くる)まれて」
と言って、有無を言わせず、私を包むとそっと私に身体を伏せさせる。そしてザイードさんもピッタリと幌の布の合わせ目を紐でつないだ後に添い寝をするように一緒に伏せてくれる・・・でも激しく揺れる幌布と囂々(ごうごう)と吹き荒ぶ砂嵐の音に不安が掻き立てられた。
やがてどれくらいの時間が経ったのか、私が耐えきれず
「・・・アルスラーンは大丈夫かな」
と尋ねると、ザイードさんは、
「あの程度の小競り合いであの御方に何かなど起こるはずがございません。」
と自信を持ったように応える。けれど私は納得がいかなかった。戦場を知らない素人だと言外にザイードさんに言われているような気もした。けれどそれでも大切な人間が争いの場に身を置いているのなら不安になるのが人の心というものだ。私はなるべく柔らかく伝わるように言葉を選びながら声をかける。
「戦場なら万が一もあるから心配しない方がおかしいでしょ?大切な人なら尚更じゃない」
返事には幾分間があった。ザイードさんは目を瞬いて私を見ている。
「・・・なるほど。これは殿下が真剣になられるのも分かりますな。」
どういうことだろうと私が尋ねるより早くザイードさんは「申し訳ありませんでした」と謝ってきた。
そして私が知らないアルスラーンのことを語ってくれたのだ。
「わたしは何も根拠なく殿下がご無事と言っているのではありません。信じているからです・・・」
「信じている?」
「そう・・・アルスラーン殿下を信じています。それは私だけじゃない。幾万幾千のイェニチェリたち全員がそうです。」
「どうして」
そこまでアルは信頼されるようになったのだろうと思えば、ザイードさんは静かな口調で語り続けた。
「殿下への信頼は戦場にて捧げたもの・・・先(さき)の戦で先帝陛下がご崩御なされた。あまりに突然の死。相手方の神子の手による神威による死・・・我が軍は瓦解し、あの時、皆がみな死を覚悟したのです。」
アルスラーンが言っていた。亡くなったお父さんのことだ。神子の神威で直接人が死ぬのかと驚く私にザイードさんは夜話(やわ)を聞かせる。まるで彼の言葉から情景が浮かび上がるような気がした。
「たなびくコンスタンティノルの旗。遥か昔に大陸を統一した国を包囲し、我々は誰もが勝利を確信していた。幾万もの軍が蜷局を巻く蛇のように連なっている勇壮な光景の中・・・神威による矢は違わず先帝陛下の胸を貫いた。」
アルスラーンはそれを間近で見ていたんだろう。だってお父さんの話をしている時、彼はとても苦しそうだった。自分の父親が胸に矢を受けて事切れる間、彼は側でずっと見ていたのだ。
「偉大な先帝陛下が目の前で倒れられる瞬間を我々は見てしまった。戦意は喪失し、心は折れた。その瞬間、コンスタンティノルを擁護する国々による十字軍は我々を包囲殲滅せんと動きだしました。」
黒いうねりの様に殺意が人の姿をして沸き上がる、その場所にアルスラーンもいたのだ。
「鎧は重く・・・殲滅され殺されてゆく一歩も動けない乱戦の中でただアルスラーン殿下の声が聞こえたんです。アルスラーン殿下は血まみれの先帝の遺体を自らの馬上に引き上げ、剣を掲げていた。」
まるでその光景がサァッと目に浮かぶようだった。
「陽光が殿下を照らしていた。殿下の髪が炎のように煌めいて・・・暁が戦場に降り立っていた。」
馬上で剣を掲げるアルスラーン。
それはきっと傷ついた兵士たちに再び立ち上がる力をくれたのだろう。
そして彼は凛とイェニチェリたちに向かい叫ぶのだ。
『暁の子等(こら)よ!!!!!砂漠に生まれは消える太陽の子等(こら)よ!!!!!いまだ我が帝国はここにあるっ!!!決して折れていないっ!!!!立てっ!!!立ち上がり剣をとれっ!!!!』
アルスラーンの朱金色の髪が太陽を受けて丁度、暁のように輝く。
兵士たちは戦場に希望を見た。
暁(アルスラーン)よ。
「我々は王たる輝きをふたたび見た・・・だからこそ十二諸侯。イェニチェリはアルスラーン殿下に従うのです。」
その瞬間の勇猛な姿を私も見たいなと思った。そしてザイードさんは再び私を抱き込んで砂から守るように黒い布を胸までかけ直してくれたのだった。
◇
どれくらいの時間が経っただろう。
吹き付ける風の音から砂嵐は大体通り過ぎたと分かったけれど、まだ風は強いようだった。
アルスラーンは大丈夫と信じているけれど、でもやっぱり心配で「アルまだかな」と呟く。
思ったより心細げに響いたその言葉で、私を砂から庇うように抱きしめているザイードさんは口まで覆った服の下で微笑んだようだった。
「女性はそんなに心配しながら待っているのですか」
「心配するでしょう?」
だって大切な人が傷つくかもしれないんだから。彼に目を向けると焦げ茶色の瞳にかち合う。彼の睫毛の先についた砂を指先ではらってあげると、彼は落ち着いた声で有難うございますと囁いた。
「ザイードさんは付き合っている人はいないの?」
「・・・付き合う?」
「あっ・・・うーん好きな人はいないの?」
「いませんね」
と言いながら私の髪を撫でる大きな優しい手。
「何をしている」
すると突然、声がかかって驚いて顔を上げると、アルスラーンが丁度、幌をめくった様子で佇んでいた。彼は私を守ってくれているザイードさんをジッと見つめている。
「殿下」
すぐにザイードさんが手を放してくれる。
「アルッ怪我はないよねっ」
起き上がり手を伸ばす私をアルスラーンも腕を伸ばして抱きしめてくれる。ぎゅっと抱きしめられて、その腕に安心感が込み上げてくる。すり寄れば、アルもふぅっと息をついて私を抱きなおす。
「ザイード……今なぜマコに触れていた。」
けれど私を優しく抱きしめる腕とは反対にアルの声は冷厳に響いて私は抱きしめられたまま戸惑った・・・だってあれはザイードさんのお仕事だった。
「申し訳ございません」
それなのにザイードさんはアルに責められるまま謝っている。伏せられた顔が痛々しい。
「アルッ なにを言ってるの?」
するとアルスラーンは目を細める。
「ザイードはマコに触れたんだぞ」
まるでそのままザイードさんを罰してしまいそうだった。止めないと大変なことになると思った。
「そんなのどうでもいいじゃないっ」
だから私はアルの頬を包んで私の方を向かせて叫ぶ
「バカッ私はアルが死んじゃうんじゃないかって心配したのにっ!!」
あの心が凍るような心配に比べたら、ザイードさんが私を抱きしめて砂避けしてくれてたなんて些細なことなのにっ!
「貴方が生きてるなら私が触れられるなんて大したことないでしょっ!」
アルスラーンは一瞬、きょとんと私を見下ろして「はははははっ」と笑った。
「流石です・・・マコさま」
ほぅっとなぜかザイードさんが息を吐いている。
「マコ」
すりっと頬をなぞられた。
「俺は残酷な男だ。」
つぅっと細められた蜂蜜色の瞳が細まる。
「俺はこの先、マコを守るために他の者の命を奪うことに躊躇をしない。そんな俺をマコに見せたくはないが恐らくこの先、幾度となく見ることになる・・・こんな俺を疎むか?」
私はアルスラーンの頬をバシンと音をたてて掴み、そして目をぱちくりさせるアルに言うのだ。
「人を傷つけるという価値観は私の国では赦されないことよ。」
彼の琥珀の瞳が私をうつして、そこから目を逸らさずに、
「だから私は私を赦さない・・・だって貴方がそうするのは私のせいだもの。貴方の罪から目を逸らさない。」
そうするとアルスラーンは「じゃあ俺から目を逸らさないでいてくれ」と微笑んで額にやさしく口付けてくれた。
夜の帳が落ちる。
砂漠の夜は氷点下まで下がる。だがアルが目的地としていたイスラームモスクまですぐのことだった。
そして駱駝に乗り込んだ私たちは凍える風に吹かれながら砂漠を歩む。
「宵の明星だ、マコ」
「綺麗」
宵の空に輝く金星は夜空にいっそう強く輝いている。
「砂漠の民は星をよんで旅をするんだ」
空一面に広がる星々を頼りにアルが人々を先導して駱駝は星空の砂漠をゆく。
黒光りする砂と星空は遠く境界線が混じっていた。
「ほら見えてきた」
そういってアルスラーンが指し示す先に白亜のイスラームモスクがあった。峻厳な山から流れる水が潤いをもたらす砂漠の裾に位置する場所。白亜の城壁と丸みを帯びたモスクは月明かりに輝いて、まるで物語に出てくる挿絵の一枚のように美しかった。
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