5 / 27
朝日とギモーヴと
しおりを挟む
赤ワインと白ワインの間に存在する、第3のワイン。
その珍しさもさることながら、薔薇色という名前が良い。レオニーの乙女心をうまい具合にくすぐる。そして喉越しが柔らかくてとても飲みやすい。楽しみにしていたスイーツとの相性も最高だった。
すっかり嬉しくなったレオニーは、にこにこと普段は誰にも見せない子どものような笑顔で、初対面の青年2人と相対した。
「レオニー真っ赤になって可愛いなあ」
「飲み慣れないって言ってた割には、まだ飲むのか」
「だって美味しいんだもの。良いでしょう」
「最高の褒め言葉だね。やったねマティアス」
「おお、どんどん飲め」
リュカが次々と運んできてくれるグラスを、レオニーがスイーツと共に着実に飲み干していく。
ワインに向く葡萄の話、気候の話、隣国で流行っている飲み方などを、マティアスの低く落ち着いた声が得意げに語る。それをリュカの優しい声が、レオニーにもわかるように噛み砕いた表現に直してくれる。レオニーにとっては初めて耳にすることばかりで、感嘆の声を上げながら深く相槌を打つばかりだった。
3人で何度もグラスを高く掲げ意味もなく乾杯し、大いに盛り上がった。こんなにたくさん笑ったのはいつぶりだろう。
それからのことはよく覚えていない。気づいたら自レオニーは自室のベッドの中で、険しい表情をしたクロエに顔を覗き込まれていた。
「あれ……私……」
「おはようございます、レオニー様。体調はいかがですか」
のろのろと体を起こす。窓から差し込む朝日が眩しい。
「特に悪いところはなさそうですね。よろしゅうございました」
「クロエ、私って昨日……」
「朝食のご用意ができておりますので、支度しながらお話し致しましょうか、レオニー様」
クロエは普段はレオニーのことをお嬢様と呼ぶが、何か物申したいことがある時はあえてレオニー様と丁寧に名前で呼ぶ。それに気づいたレオニーは口を噤んでベッドから這い出た。
「本日はお出かけのご予定はございませんので、こちらのドレスでよろしいですか」
「任せるわ」
「ではこちらで。昨夜のレオニー様は些か羽目を外されたようですございましたね」
いわく、ホワイト侯爵家のものではない馬車で男性2人に送り届けられたレオニーは、真っ赤な顔で一歩近づけばすぐ酔っているとわかるほど酒臭く、そのくせすやすやと熟睡していたらしい。
「昨夜はつい、ちょっと飲みすぎちゃって」
「そのようですね。男性方が奥様にもう良いと言われるまで何度も謝罪なさっておられました」
「あの2人は決して怪しい人じゃないのよ。場慣れしていない私に親切にしてくれた人達なの。その上わざわざ家まで送り届けてくれたのね。こちらからお礼をしなきゃいけないくらいよ」
「身元は確かなようですね」
「……もう調べ上げたの?」
「当然です」
そう言うとクロエは素早くレオニーの髪をときハーフアップにまとめた。
「マティアス・ロバーツ様はロバーツ伯爵家のご長男、リュカ・ハワード様はハワード伯爵家の三男であらせられます。ご年齢はレオニー様より2つ年上です。お二方とも王立図書館の事務員としてお勤めでいらっしゃいますが、それは形式上でのこと。マティアス様は経営戦略に長けた切れ者、リュカ様は誰をも惹きこむ巧みな話術を操ることで有名で、いずれはお二方とも政務官になるのでは、ともっぱらの噂だそうです。さしづめ図書館事務は下積みってところでしょう。レオニー様のご友人としては申し分ない方々です。けれど昨夜のように、男性を目の前にして酩酊されるまでお酒を嗜まれることは二度とございませんよう、くれぐれもご注意くださいませ。クロエは確かに気晴らしに舞踏会に行かれてはと申し上げましたが、あのような気の晴らし方は理解できかねます。男性に抱えられるようにして馬車から降りてきたお嬢様を目にした時には、肝を潰しました」
「はい、すみません」
クロエは普段が淡々としているだけに、怒らせると怖い。早口でわーわーと捲し立てられ、レオニーはただ謝罪の言葉を口にすることしかできない。
「ご理解いただければそれで構いません。では参りましょうか。今朝は奥様がご一緒にお食事をされたいとのことで、お待ちです」
「えぇ?!」
レオニーの母は深夜に執筆活動をすることも多く、朝食は日によって食べたり食べなかったりまちまちだった。
「お母様、怒ってた?」
「それはご自身でご確認ください」
転げ落ちるようにして階段を駆け下り食堂の扉を開けると、母はのんびりとパンを頬張っていた。
「あらやっと下りて来たわ、夜遊び寝坊娘が。ちょうど今食べ始めたところだから貴方も早く席につきなさい」
「お母様、昨夜のことは」
「彼らから聞いたから説明してくれなくて結構よ」
視線で促され、レオニーは大人しく母の向かいの席に腰かけた。
「会場中探しても見つからないから先に帰ってきちゃったんだけど、まさかあんなに素敵な青年を2人も捕まえてくるとはねえ。普段引きこもってる割には抜け目ないわね」
「そんなんじゃないわ。誤解よ!」
「まあまあ、今回のことはお父様には黙っててあげるから、安心なさい」
楽しそうにころころと笑う母に、レオニーはげんなり項垂れた。クロエのように怒っていなかったのは良かったものの、これはこれで面倒臭い。どうやら母の作家魂に火をつけてしまったようだ。
2人のうちどちらの方が好みなのか、これからどうするつもりなのか、下らないことをあれこれ興味津々で聞いてくる母を無視することに決めたレオニーは、そっぽを向きながら黙々と食事を口に運んだ。
ようやく食後の紅茶に辿り着いたところで、まるで今ちょうど思い出したかのようなわざとらしい演技で、母が明るい声を出した。
「そうそう、今朝方、貴方に贈り物が届いてたわよ」
「贈り物?」
首を傾げると、母の侍女がすっと小さな包みと手紙を差し出してきた。
「開けてご覧なさい」
なるほど、これの中身が知りたくて母はわざわざ朝食の時間を合わせてきたのか。納得したレオニーは素直にそれを受け取った。
送り主はリュカで、包みの中身はギモーブだった。手紙には、昨夜は調子に乗って飲ませすぎて申し訳なかったということと、お詫びに昨夜レオニーが美味しそうに食べていたギモーヴを贈るという内容が、それはそれは丁寧に綴られていた。
「昨日の今日でもう相手の好みを把握できてるとは、さすがハワード伯爵のご子息ね。ロバーツ伯爵のご子息は一歩遅れを取ったけれど、今ならまだ巻き返し可能よ。頑張れ」
「何勝手に競わせてるよ、失礼でしょう」
「新作のネタになるわ。私も良い娘を産んだものね」
けらけらと楽しそうに声を上げて笑いながら、母は席を立った。
「あ、そうだ。あの2人に何かお礼しなきゃとか考えてるなら不要よ。お礼状だけにしておきなさい」
「え、どうして?」
「樽ごと買い上げたから。1ダース。貴方が飲んだロゼワイン? っていうやつ。充分彼らのためにはなったはずだから、これ以上何かしたら逆に恐縮しちゃうでしょ」
「買った? 樽ごと?」
「後学のためにね。貴方にも少しは飲ませてあげるけど、ほどほどになさいね。クロエが真っ青な顔して震えてたわよ。あれはさすがに可哀想だったわ」
そう言い残すと、母は足取り軽く鼻歌を歌いながら食堂を出て行った。自分の作品のためなら時間もお金も全く惜しまない人だ。父の苦労が少し分かった気がした。
「お嬢様、お部屋に筆と紙のご用意はできております」
後ろに控えていたクロエがそっと耳打ちしてくる。ああなった母は誰も止められないとは言え、事前に何も教えてくれなかったのは昨夜の意趣返しか。
ともあれ、初対面の相手に迷惑をかけたのだから、お礼状はきちんと書かなければならない。いくら引きこもりの侯爵令嬢でもそれくらいの常識は弁えている。冷めた紅茶を飲み干すと、レオニーは静かに席を立った。
その珍しさもさることながら、薔薇色という名前が良い。レオニーの乙女心をうまい具合にくすぐる。そして喉越しが柔らかくてとても飲みやすい。楽しみにしていたスイーツとの相性も最高だった。
すっかり嬉しくなったレオニーは、にこにこと普段は誰にも見せない子どものような笑顔で、初対面の青年2人と相対した。
「レオニー真っ赤になって可愛いなあ」
「飲み慣れないって言ってた割には、まだ飲むのか」
「だって美味しいんだもの。良いでしょう」
「最高の褒め言葉だね。やったねマティアス」
「おお、どんどん飲め」
リュカが次々と運んできてくれるグラスを、レオニーがスイーツと共に着実に飲み干していく。
ワインに向く葡萄の話、気候の話、隣国で流行っている飲み方などを、マティアスの低く落ち着いた声が得意げに語る。それをリュカの優しい声が、レオニーにもわかるように噛み砕いた表現に直してくれる。レオニーにとっては初めて耳にすることばかりで、感嘆の声を上げながら深く相槌を打つばかりだった。
3人で何度もグラスを高く掲げ意味もなく乾杯し、大いに盛り上がった。こんなにたくさん笑ったのはいつぶりだろう。
それからのことはよく覚えていない。気づいたら自レオニーは自室のベッドの中で、険しい表情をしたクロエに顔を覗き込まれていた。
「あれ……私……」
「おはようございます、レオニー様。体調はいかがですか」
のろのろと体を起こす。窓から差し込む朝日が眩しい。
「特に悪いところはなさそうですね。よろしゅうございました」
「クロエ、私って昨日……」
「朝食のご用意ができておりますので、支度しながらお話し致しましょうか、レオニー様」
クロエは普段はレオニーのことをお嬢様と呼ぶが、何か物申したいことがある時はあえてレオニー様と丁寧に名前で呼ぶ。それに気づいたレオニーは口を噤んでベッドから這い出た。
「本日はお出かけのご予定はございませんので、こちらのドレスでよろしいですか」
「任せるわ」
「ではこちらで。昨夜のレオニー様は些か羽目を外されたようですございましたね」
いわく、ホワイト侯爵家のものではない馬車で男性2人に送り届けられたレオニーは、真っ赤な顔で一歩近づけばすぐ酔っているとわかるほど酒臭く、そのくせすやすやと熟睡していたらしい。
「昨夜はつい、ちょっと飲みすぎちゃって」
「そのようですね。男性方が奥様にもう良いと言われるまで何度も謝罪なさっておられました」
「あの2人は決して怪しい人じゃないのよ。場慣れしていない私に親切にしてくれた人達なの。その上わざわざ家まで送り届けてくれたのね。こちらからお礼をしなきゃいけないくらいよ」
「身元は確かなようですね」
「……もう調べ上げたの?」
「当然です」
そう言うとクロエは素早くレオニーの髪をときハーフアップにまとめた。
「マティアス・ロバーツ様はロバーツ伯爵家のご長男、リュカ・ハワード様はハワード伯爵家の三男であらせられます。ご年齢はレオニー様より2つ年上です。お二方とも王立図書館の事務員としてお勤めでいらっしゃいますが、それは形式上でのこと。マティアス様は経営戦略に長けた切れ者、リュカ様は誰をも惹きこむ巧みな話術を操ることで有名で、いずれはお二方とも政務官になるのでは、ともっぱらの噂だそうです。さしづめ図書館事務は下積みってところでしょう。レオニー様のご友人としては申し分ない方々です。けれど昨夜のように、男性を目の前にして酩酊されるまでお酒を嗜まれることは二度とございませんよう、くれぐれもご注意くださいませ。クロエは確かに気晴らしに舞踏会に行かれてはと申し上げましたが、あのような気の晴らし方は理解できかねます。男性に抱えられるようにして馬車から降りてきたお嬢様を目にした時には、肝を潰しました」
「はい、すみません」
クロエは普段が淡々としているだけに、怒らせると怖い。早口でわーわーと捲し立てられ、レオニーはただ謝罪の言葉を口にすることしかできない。
「ご理解いただければそれで構いません。では参りましょうか。今朝は奥様がご一緒にお食事をされたいとのことで、お待ちです」
「えぇ?!」
レオニーの母は深夜に執筆活動をすることも多く、朝食は日によって食べたり食べなかったりまちまちだった。
「お母様、怒ってた?」
「それはご自身でご確認ください」
転げ落ちるようにして階段を駆け下り食堂の扉を開けると、母はのんびりとパンを頬張っていた。
「あらやっと下りて来たわ、夜遊び寝坊娘が。ちょうど今食べ始めたところだから貴方も早く席につきなさい」
「お母様、昨夜のことは」
「彼らから聞いたから説明してくれなくて結構よ」
視線で促され、レオニーは大人しく母の向かいの席に腰かけた。
「会場中探しても見つからないから先に帰ってきちゃったんだけど、まさかあんなに素敵な青年を2人も捕まえてくるとはねえ。普段引きこもってる割には抜け目ないわね」
「そんなんじゃないわ。誤解よ!」
「まあまあ、今回のことはお父様には黙っててあげるから、安心なさい」
楽しそうにころころと笑う母に、レオニーはげんなり項垂れた。クロエのように怒っていなかったのは良かったものの、これはこれで面倒臭い。どうやら母の作家魂に火をつけてしまったようだ。
2人のうちどちらの方が好みなのか、これからどうするつもりなのか、下らないことをあれこれ興味津々で聞いてくる母を無視することに決めたレオニーは、そっぽを向きながら黙々と食事を口に運んだ。
ようやく食後の紅茶に辿り着いたところで、まるで今ちょうど思い出したかのようなわざとらしい演技で、母が明るい声を出した。
「そうそう、今朝方、貴方に贈り物が届いてたわよ」
「贈り物?」
首を傾げると、母の侍女がすっと小さな包みと手紙を差し出してきた。
「開けてご覧なさい」
なるほど、これの中身が知りたくて母はわざわざ朝食の時間を合わせてきたのか。納得したレオニーは素直にそれを受け取った。
送り主はリュカで、包みの中身はギモーブだった。手紙には、昨夜は調子に乗って飲ませすぎて申し訳なかったということと、お詫びに昨夜レオニーが美味しそうに食べていたギモーヴを贈るという内容が、それはそれは丁寧に綴られていた。
「昨日の今日でもう相手の好みを把握できてるとは、さすがハワード伯爵のご子息ね。ロバーツ伯爵のご子息は一歩遅れを取ったけれど、今ならまだ巻き返し可能よ。頑張れ」
「何勝手に競わせてるよ、失礼でしょう」
「新作のネタになるわ。私も良い娘を産んだものね」
けらけらと楽しそうに声を上げて笑いながら、母は席を立った。
「あ、そうだ。あの2人に何かお礼しなきゃとか考えてるなら不要よ。お礼状だけにしておきなさい」
「え、どうして?」
「樽ごと買い上げたから。1ダース。貴方が飲んだロゼワイン? っていうやつ。充分彼らのためにはなったはずだから、これ以上何かしたら逆に恐縮しちゃうでしょ」
「買った? 樽ごと?」
「後学のためにね。貴方にも少しは飲ませてあげるけど、ほどほどになさいね。クロエが真っ青な顔して震えてたわよ。あれはさすがに可哀想だったわ」
そう言い残すと、母は足取り軽く鼻歌を歌いながら食堂を出て行った。自分の作品のためなら時間もお金も全く惜しまない人だ。父の苦労が少し分かった気がした。
「お嬢様、お部屋に筆と紙のご用意はできております」
後ろに控えていたクロエがそっと耳打ちしてくる。ああなった母は誰も止められないとは言え、事前に何も教えてくれなかったのは昨夜の意趣返しか。
ともあれ、初対面の相手に迷惑をかけたのだから、お礼状はきちんと書かなければならない。いくら引きこもりの侯爵令嬢でもそれくらいの常識は弁えている。冷めた紅茶を飲み干すと、レオニーは静かに席を立った。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
【完結】昨日までの愛は虚像でした
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
公爵令息レアンドロに体を暴かれてしまった侯爵令嬢ファティマは、純潔でなくなったことを理由に、レアンドロの双子の兄イグナシオとの婚約を解消されてしまう。その結果、元凶のレアンドロと結婚する羽目になったが、そこで知らされた元婚約者イグナシオの真の姿に慄然とする。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】「お迎えに上がりました、お嬢様」
まほりろ
恋愛
私の名前はアリッサ・エーベルト、由緒ある侯爵家の長女で、第一王子の婚約者だ。
……と言えば聞こえがいいが、家では継母と腹違いの妹にいじめられ、父にはいないものとして扱われ、婚約者には腹違いの妹と浮気された。
挙げ句の果てに妹を虐めていた濡れ衣を着せられ、婚約を破棄され、身分を剥奪され、塔に幽閉され、現在軟禁(なんきん)生活の真っ最中。
私はきっと明日処刑される……。
死を覚悟した私の脳裏に浮かんだのは、幼い頃私に仕えていた執事見習いの男の子の顔だった。
※「幼馴染が王子様になって迎えに来てくれた」を推敲していたら、全く別の話になってしまいました。
勿体ないので、キャラクターの名前を変えて別作品として投稿します。
本作だけでもお楽しみいただけます。
※他サイトにも投稿してます。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
【完結】愛くるしい彼女。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。
2023.3.15
HOTランキング35位/24hランキング63位
ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる