あの時出逢わなければ

第1話

俺があいつに会ったのは、たまたま入ったカフェで俺が携帯を見ながら歩いていた時のことだった。
あいつこと、土井 碧（つちい あお）は、カフェオレを頼んでいた。それを店のスタッフから受け取ったその足で振り向いた瞬間、前を見てなかった俺こと藤井 湊（ふじい みなと）とぶつかったのだ。
碧が持っていたカフェオレはその瞬間に、俺と碧の間で弾けた。二人とも咄嗟のことに避け切れず、カフェオレが服に容赦無くかかった。
「わぁっ！」
同時に声を出し、俺も碧もお互い謝り倒した。
カフェオレまみれの俺たちは、その後店のスタッフに床の汚れを任し店を出て、大学が同じであった事も相成り、水泳部のシャワー室を借り、シャワーで汚れた服を洗い体もついでに洗った。
ふと、碧の様子を見た。
俺はみるみる興奮している事に気づいた。
シャツを洗う碧は、色が白くて艶やかで華奢で、濡れた前髪がその色気をましていた。
さっきは罪悪感と恥ずかしさと何とかしなきゃで必死で、えらくふんわりした可愛らしい奴だとは思ってはいたが、ここまで整った顔をまじまじ見ると、俺は興奮を超えてパンツの中が窮屈になっていることに気づいた。

碧がこっちを向いた瞬間俺は、碧にキスをしてしまった。
止まらない衝動でつい・・・。
「あ、あ、あ、ご、ごめん！」

目を大きく見開いた碧は女神のようで、触れてはいけないものに触れてしまった気がして、しかも相手は男。
自分自身が怖かった。
俺はびしょ濡れの自分のシャツを掴んで、シャワー室を飛び出した。

必死で走った。
もう会えないかも！戻りたいけど、碧の気持ちを考えると戻ることは出来なかった。
同じ大学でも、この時はまだ名前も学年も学部も知らなかったんだ。　

ただ、俺はこの時確実に恋をした。