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2章 婚約破棄のちプロポーズ! 婚約破棄編

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これは何だろう。

2人の小さな少女が泣いている。
彼女たちは鏡に映ったようにそっくりで、髪に金、瞳に紺の色を持っていた。
よく見ると片方は腕が腫れて、もう片方は足首が腫れていた。
それを2人で撫で合い、また泣いている。
とても痛々しい姿。どうにかできないかな。
医術の知識がない私は、啜り泣く声を聞くことしかできない。
考えを巡らせる、いつも私は怪我したらどうする?
・・・お医者さんに診ていただいてる。薬などを処方してもらう。
ああ、そうだ、湿布がまだあったはず、貼ればきっと良くなるよ。
「 だから泣かないで 」
言いたいのに声にならない。

立ち竦んでいると、視界に白い布がヒラリと舞う。
包帯を持った幼い少女が、泣いている少女たちに駆け寄っていく。
その子は私によく似ていた。

そうか、これは過去の夢なのか。
唐突にそんな確信を持った途端、少女たちは遠のいていった。
ああ、待って。
行かないで。
まだ、


「・・・・・・まだ、なんなのよ」
ひとりごちながら、用意しておいたワンピースに手を掛ける。

しかもあれは実際にあったこと。
あの出来事に対する不愉快さと夢が微妙なところで終わったこととが混ざり、現在絶賛不機嫌中。

「あーあ」

軽く髪を梳かし、服によく合うリボンを選ぶ。
濃紺の色に金糸で刺繍がされたものを手に取ったのは、多少なりとも夢が頭に残っていたせいではないはずだ。

時計を見ると、まだ起床には少し早い。
私のメイドたちも寝ている。
どうするか…

なんとなしに夢のことが気になり、しまい込んでいる昔の日記帳を探そうとドアノブに手をかけた。


✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


「はい、出来ました」
声を受けて目を開く。
選んだ紙紐で髪を軽く結んでもらった。
今日は馬車の中で言われたようにお昼寝オッケーな日。しかも予定が入っていないので、ゆる~い服装に。

「ありがとう~」
「では失礼いたします」
軽く服装を直してもらう。
「「いってらっしゃいませ」」
「うん、行ってくる」
 2人に手を振り、目指すは書庫。
古い日記帳に挟まれていた押し花の栞。
その花について調べるためだ。

記憶が正しければ、あの花は…

数時間後。
とある屋敷にて。
植物図鑑の内容らしきものを書き写した紙切れを握りしめて、書庫から厨房へスキップしていく少女が目撃された。
ちなみに彼女は、にこにこを通り越してにまにまと気味悪く笑っており、すれ違ったものをビビらせていた。
恐ろしく上機嫌そうな様子であり、周囲の「なんだあれ」という視線もスルーしていた。いや、気づいていなかった。
自分の雇い主の娘、お嬢様にそっくりだったと、その屋敷の使用人は語る。




◦オマケ◦  
あったかもしれない3人の会話 

「ねえ、ニーナ、シェルプ」

「「はい」」

「2人は過去のこと、思い出す?」

「「・・・・・・」」

「突然どうしたのですか?」

「ちょっと夢に見て…。ごめん、答えなくていいよ」

「いえ…思い出さないといったら嘘になりますが」

「もう大丈夫ですから」

だって、ここには貴方様がいる。
あんな日々はもうないのだ。

「そう、よかった…のかな」

よかったんですよ。
私たちは、救われましたから
フローシア様に
フロア様に


   あの地獄から

         確かに



救われましたから
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