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7章 軍事介入
解放連合国②
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解放連合国の動向が何やらおかしくなった、そんな頃である。
近頃、解放連合国から電報が届いていない。もしかすると、こちらを攻撃するためのチャンスを探しているのかもしれない。王国であれば対処可能だろうが、彼らの言う『これからの大戦』の準備を前もってしていることで有事が発生が発生しても王国にダメージが受けにくくなるだろう。国王は、そう考えていた。アルファも聖戦について言っていたし、この解放連合国も言っていると言うことに不思議と関連性を感じているのである。王国にふさわしくないかもしれないが、国民に念のため伝える必要があるだろう。
「今、この時をもって、『国民共闘法』を先の聖戦から200年ぶりに発令する。近いうちに起こりうる聖戦に対して警戒せよ」
全国民に一斉に報じられた『国民共闘法』は、以前起きた、王国最大のピンチとも当時言われていた周辺国からの一斉攻撃であった。歴史上の名前としてその際の国王の名に基づいて「ハーリンゲンの襲撃」とも言われている。ただ、それから200年間何もなかった王国にとっては、戦争や聖戦に関しての意識というものは消え去っており、国民の戦のための意識など、とうに忘れ去っていた。そのため、王国内の戦闘力のある者たちはほとんどが年寄り、極めて稀に若者がいるだけという所に過ぎなかった。アルファの世代はその若者の中でも一つ飛び抜けていたのだが、いかんせん人数が少なく、それで軍隊を作ることができるほどの人材は存在しなかった。アルファの集めた15万人も当然、若者は特に少ない。次の世代に必要な若者を失うのは惜しいが、国力を大幅に低下させるという大失態を作る原因にもなったのも武芸を怠る若者の存在は大きかった。そのため、今回の法は国民の意識改革に大きく投石を投じることができると確信したのである。
------------
それから1週間後、国民の士気が上がり、国力も上がっている状況であったが、解放連合国とは、関係を持てていなかった。
「国王陛下、国民共闘法によって国民の意識改革をすることは出来ましたが、解放連合国からの声明は未だ出ていません。このままでは、国民の士気が落ちてしまう危険性が懸念されます。開戦するにしても早めにご決断ください」
一人の家臣が国王に言う。国王からしてみればもっともなことではあったが、どのように接触すればいいのか、彼自身もあまり考えを持てなかったのだろう。これから先のことは全て自分自身で決めていくという責任感が彼の脳裏をよぎったのかもしれない。だが、そうだとしても決断をしなければならない状況に徐々に追い詰められているのも実情である。この時ばかりは、彼の気楽な考えはもはや通用しなかった。
「……。解放連合国に対して、国交を開く。そのためには、近隣国に協力を要請して、もしもの時に備えるべきだ。まずは、近隣国からの協力を仰いでくれ」
家臣たちは、口々に承諾の意を出し、次々に己の責務に取り掛かった。だが、家臣の中で一人だけ、そうはせず、国王に向かって歩む者がいた。
「国王陛下、近頃、魔物の集団が出来ているようです。それによって、農村の民の肩身がせまいという報告を受けました。どうか、軍の一部を派遣していただけないでしょうか」
家臣たちは怪訝そうな表情である。こちらは解放連合国という未知の国に交戦状態にならないように頑張っているのに今更、魔物の話などしていられないと考えたからだ。だが、そんな考えをよそに。
「確か、君は地方の出身であったな。確かに、それは重要なことだ。王国としては看過できないことであろう。だが、そのような事実があるならば、冒険者が動くのではないか?もし冒険者が動くのだとするならば、こちらは対応できない」
「実は、冒険者ギルドはこのことに関しては、対応を拒否しています。理由はその魔物を倒すためには多額の報酬が必要だが、それを冒険者ギルドは肩代わりすることが容易ではない、と回答し、このような文書を国王陛下宛に届けてきました」
国王は、その文書を器用に開け、ゆっくりと目を通す。
『現在、王都より少し離れた農村付近に魔物の集団と思われるものが発見されました。しかしながら、そこで発見された魔物のレートを当ギルドのものと比較し、今回の件について評価した所、SSSという、最高難度と評価されました。ここまで難度であると、当ギルド単体では、戦力も資金も不足し、今回の件に関して、当ギルドでは解決不可能と処理しました。また、当ギルド以外のギルドにも協力を要請しましたが、協力は得られませんでした。今回の件は、王国自体にも関係が大きく、そして重要性が高いものだと考え、国王陛下殿に報告すべきだと判断いたし、この文書をお送り致しました。ギルドと国家の不可侵の方が存在いたしますが、それに該当しないレベルの援助は当ギルド独断でさせて頂きます。 ギルドマスター 』
-----------------------------------------------------------
ギルドと国家の協力が必死と考えられるほどの魔物の集団が王国領に存在することを確認した国王は、どのように対応するのか。次回ご期待ください。
余談なのですが、1月も終わりに近づき、先日センター試験が終わったという生徒さんもおられると思いますが、大学はゴールではありません。これからの長い人生を大事にしていってください。
明日も投稿いたしますので、よろしくお願いします。
読んでいただき、ありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします!
近頃、解放連合国から電報が届いていない。もしかすると、こちらを攻撃するためのチャンスを探しているのかもしれない。王国であれば対処可能だろうが、彼らの言う『これからの大戦』の準備を前もってしていることで有事が発生が発生しても王国にダメージが受けにくくなるだろう。国王は、そう考えていた。アルファも聖戦について言っていたし、この解放連合国も言っていると言うことに不思議と関連性を感じているのである。王国にふさわしくないかもしれないが、国民に念のため伝える必要があるだろう。
「今、この時をもって、『国民共闘法』を先の聖戦から200年ぶりに発令する。近いうちに起こりうる聖戦に対して警戒せよ」
全国民に一斉に報じられた『国民共闘法』は、以前起きた、王国最大のピンチとも当時言われていた周辺国からの一斉攻撃であった。歴史上の名前としてその際の国王の名に基づいて「ハーリンゲンの襲撃」とも言われている。ただ、それから200年間何もなかった王国にとっては、戦争や聖戦に関しての意識というものは消え去っており、国民の戦のための意識など、とうに忘れ去っていた。そのため、王国内の戦闘力のある者たちはほとんどが年寄り、極めて稀に若者がいるだけという所に過ぎなかった。アルファの世代はその若者の中でも一つ飛び抜けていたのだが、いかんせん人数が少なく、それで軍隊を作ることができるほどの人材は存在しなかった。アルファの集めた15万人も当然、若者は特に少ない。次の世代に必要な若者を失うのは惜しいが、国力を大幅に低下させるという大失態を作る原因にもなったのも武芸を怠る若者の存在は大きかった。そのため、今回の法は国民の意識改革に大きく投石を投じることができると確信したのである。
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それから1週間後、国民の士気が上がり、国力も上がっている状況であったが、解放連合国とは、関係を持てていなかった。
「国王陛下、国民共闘法によって国民の意識改革をすることは出来ましたが、解放連合国からの声明は未だ出ていません。このままでは、国民の士気が落ちてしまう危険性が懸念されます。開戦するにしても早めにご決断ください」
一人の家臣が国王に言う。国王からしてみればもっともなことではあったが、どのように接触すればいいのか、彼自身もあまり考えを持てなかったのだろう。これから先のことは全て自分自身で決めていくという責任感が彼の脳裏をよぎったのかもしれない。だが、そうだとしても決断をしなければならない状況に徐々に追い詰められているのも実情である。この時ばかりは、彼の気楽な考えはもはや通用しなかった。
「……。解放連合国に対して、国交を開く。そのためには、近隣国に協力を要請して、もしもの時に備えるべきだ。まずは、近隣国からの協力を仰いでくれ」
家臣たちは、口々に承諾の意を出し、次々に己の責務に取り掛かった。だが、家臣の中で一人だけ、そうはせず、国王に向かって歩む者がいた。
「国王陛下、近頃、魔物の集団が出来ているようです。それによって、農村の民の肩身がせまいという報告を受けました。どうか、軍の一部を派遣していただけないでしょうか」
家臣たちは怪訝そうな表情である。こちらは解放連合国という未知の国に交戦状態にならないように頑張っているのに今更、魔物の話などしていられないと考えたからだ。だが、そんな考えをよそに。
「確か、君は地方の出身であったな。確かに、それは重要なことだ。王国としては看過できないことであろう。だが、そのような事実があるならば、冒険者が動くのではないか?もし冒険者が動くのだとするならば、こちらは対応できない」
「実は、冒険者ギルドはこのことに関しては、対応を拒否しています。理由はその魔物を倒すためには多額の報酬が必要だが、それを冒険者ギルドは肩代わりすることが容易ではない、と回答し、このような文書を国王陛下宛に届けてきました」
国王は、その文書を器用に開け、ゆっくりと目を通す。
『現在、王都より少し離れた農村付近に魔物の集団と思われるものが発見されました。しかしながら、そこで発見された魔物のレートを当ギルドのものと比較し、今回の件について評価した所、SSSという、最高難度と評価されました。ここまで難度であると、当ギルド単体では、戦力も資金も不足し、今回の件に関して、当ギルドでは解決不可能と処理しました。また、当ギルド以外のギルドにも協力を要請しましたが、協力は得られませんでした。今回の件は、王国自体にも関係が大きく、そして重要性が高いものだと考え、国王陛下殿に報告すべきだと判断いたし、この文書をお送り致しました。ギルドと国家の不可侵の方が存在いたしますが、それに該当しないレベルの援助は当ギルド独断でさせて頂きます。 ギルドマスター 』
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ギルドと国家の協力が必死と考えられるほどの魔物の集団が王国領に存在することを確認した国王は、どのように対応するのか。次回ご期待ください。
余談なのですが、1月も終わりに近づき、先日センター試験が終わったという生徒さんもおられると思いますが、大学はゴールではありません。これからの長い人生を大事にしていってください。
明日も投稿いたしますので、よろしくお願いします。
読んでいただき、ありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします!
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