49 / 53
第3章
第46話
しおりを挟む
きぃきぃと床の材木がきしむ音がする。てっきり床も全面石で出来ているのかと思っていたのだが、床は木で出来ている。たしかに床が石だったら冷たくて仕方がないだろう。
地下にある家に天井はいるのか? と少しでも思ってしまった私を殴りたくなった。屋根もまた木製だが、腐って抜けてしまったところがいくつかある。その部分に天井から落ちてくる雫が垂れて入ってくる。
屋根がないと家中びしょびしょだ。
真っ暗な家の中に、私の魔法の明かりが差し込む。地面には魔石が落ちていて、恐らく天井にこの魔石がはめ込まれていたのだろう。天井には魔石がすっぽり収まるくらいの穴が開いている。とは言っても腐って今にも落ちそうだが。
この魔石はシーリングライトのような役割を果たしていたのだと推測する。こんな洞窟の中光が届かないから、四六時中このライトが家の中を照らしていたのだろう。今でこそ朽ち果てたこの場所にも、昔は人の生活があったのだと思うと不思議な気持ちになる。
立ち止まって下駄の音を消すと、チャポンチャポンと水の音。辺りをぐるっと見渡すと、備え付けであろう食器棚の中に、金属製で装飾の施された美しい食器が入っている。
すでに蝶番は外れ、食器棚を塞ぐものはない。いくつか地面に落ちているが、金属製のためか割れたりはしていないようだ。
そのうちの1つを手に持ってみる。
「軽い」
金属製と言うこともあって少しずっしりとしたものを想像していたのだが、どうやらそれは違ったようだ。思ったよりも軽かった。こんなにも湿気にあふれた場所なのにもかかわらず、食器はほとんどさびてはいない。きっと特殊な金属を使用しているのだろう。
いくつか欲しいと考えてアイテムボックスにしまおうとしたが、元々ここに住んでいた人がいるという印を傷つけるのはどうかと考えた。そっと蜘蛛の巣が張り、ホコリで汚れた食器棚の中に戻した。
崩れた家の立ち並ぶ通り。時々まだ入れそうな家に入っては、また中心部に向かって歩いて行く。
道の真ん中で中心方面に目をやると、大きな噴水が堂々とたたずんでいる。とは言ってもとっくに水は干上がってしまっているようだが。
「そろそろご飯にしようかな」
時計を見ると、既に外は夜らしい。相当な時間あたりを散策したからそこそこおなかがすいている。ただ、おなかがすいているのに食欲がない。やはりここに入ってから頭痛を感じている。それに普段より眠気がする。
港町でそこそこ休んだと思ったのだが、体はもっと休みを望んでいるようだ。
今日はしっかり休むことにしよう。
他人の家を勝手に使わせて貰う気にはなれなかったので、大通りのど真ん中に簡易的な家を建てた。屋根付きだ。
火を使いたいので家の壁は一部穴を開けている。まあ酸欠になっても死なないんだけどね。
アイテムボックスから取り出すのは買っておいた魚。塩漬けになっている。
この塩漬けの魚でスープを作ろうと思っているのだ。私は料理スキルが絶望的にないので、味は保証できない。
軽く塩を洗い流して鍋の中に投入。簡易的なかまどを作った。
アイテムボックスの中から薪を取り出す。そして魔法でその薪に火をつける。良い感じにぐつぐつしたら食べ頃だろう。
「……あれ?」
火をつけようとしたが、あまり火力が出ない。弱々しく燃えはするものの、地上のように上手く燃えない。
「何でだろう……、あ!」
理由を考えたらある1つの結論に至った。
ここは地下洞窟だ。ここで一気に火を使って一酸化炭素中毒にでもなったら大変だからと言うことなのだろう。だから弱めに火が付く。
さすがは地下文明だ。こういうことをあらかじめ考えて魔法で制御しているのだ。至る所にある魔石、きっと魔石に付与を施すのが得意な文明だったのだろう。
マイヤのような人がいっぱいいたのかなぁ……。
火力が出ないことに関しては、私の魔力を大量に消費することによってごり押しで解決した。
そして出来た魚のスープ。味は塩漬けにした魚から出た塩分だけ。
「いただきまーす」
熱々のスープをスプーンで掬って飲んでみる。
「う゛っ……!」
絶望的な生臭さ、明らかに濃い塩分。
うん。素人が想像で料理をするものではないと言うことが分かった。
地下にある家に天井はいるのか? と少しでも思ってしまった私を殴りたくなった。屋根もまた木製だが、腐って抜けてしまったところがいくつかある。その部分に天井から落ちてくる雫が垂れて入ってくる。
屋根がないと家中びしょびしょだ。
真っ暗な家の中に、私の魔法の明かりが差し込む。地面には魔石が落ちていて、恐らく天井にこの魔石がはめ込まれていたのだろう。天井には魔石がすっぽり収まるくらいの穴が開いている。とは言っても腐って今にも落ちそうだが。
この魔石はシーリングライトのような役割を果たしていたのだと推測する。こんな洞窟の中光が届かないから、四六時中このライトが家の中を照らしていたのだろう。今でこそ朽ち果てたこの場所にも、昔は人の生活があったのだと思うと不思議な気持ちになる。
立ち止まって下駄の音を消すと、チャポンチャポンと水の音。辺りをぐるっと見渡すと、備え付けであろう食器棚の中に、金属製で装飾の施された美しい食器が入っている。
すでに蝶番は外れ、食器棚を塞ぐものはない。いくつか地面に落ちているが、金属製のためか割れたりはしていないようだ。
そのうちの1つを手に持ってみる。
「軽い」
金属製と言うこともあって少しずっしりとしたものを想像していたのだが、どうやらそれは違ったようだ。思ったよりも軽かった。こんなにも湿気にあふれた場所なのにもかかわらず、食器はほとんどさびてはいない。きっと特殊な金属を使用しているのだろう。
いくつか欲しいと考えてアイテムボックスにしまおうとしたが、元々ここに住んでいた人がいるという印を傷つけるのはどうかと考えた。そっと蜘蛛の巣が張り、ホコリで汚れた食器棚の中に戻した。
崩れた家の立ち並ぶ通り。時々まだ入れそうな家に入っては、また中心部に向かって歩いて行く。
道の真ん中で中心方面に目をやると、大きな噴水が堂々とたたずんでいる。とは言ってもとっくに水は干上がってしまっているようだが。
「そろそろご飯にしようかな」
時計を見ると、既に外は夜らしい。相当な時間あたりを散策したからそこそこおなかがすいている。ただ、おなかがすいているのに食欲がない。やはりここに入ってから頭痛を感じている。それに普段より眠気がする。
港町でそこそこ休んだと思ったのだが、体はもっと休みを望んでいるようだ。
今日はしっかり休むことにしよう。
他人の家を勝手に使わせて貰う気にはなれなかったので、大通りのど真ん中に簡易的な家を建てた。屋根付きだ。
火を使いたいので家の壁は一部穴を開けている。まあ酸欠になっても死なないんだけどね。
アイテムボックスから取り出すのは買っておいた魚。塩漬けになっている。
この塩漬けの魚でスープを作ろうと思っているのだ。私は料理スキルが絶望的にないので、味は保証できない。
軽く塩を洗い流して鍋の中に投入。簡易的なかまどを作った。
アイテムボックスの中から薪を取り出す。そして魔法でその薪に火をつける。良い感じにぐつぐつしたら食べ頃だろう。
「……あれ?」
火をつけようとしたが、あまり火力が出ない。弱々しく燃えはするものの、地上のように上手く燃えない。
「何でだろう……、あ!」
理由を考えたらある1つの結論に至った。
ここは地下洞窟だ。ここで一気に火を使って一酸化炭素中毒にでもなったら大変だからと言うことなのだろう。だから弱めに火が付く。
さすがは地下文明だ。こういうことをあらかじめ考えて魔法で制御しているのだ。至る所にある魔石、きっと魔石に付与を施すのが得意な文明だったのだろう。
マイヤのような人がいっぱいいたのかなぁ……。
火力が出ないことに関しては、私の魔力を大量に消費することによってごり押しで解決した。
そして出来た魚のスープ。味は塩漬けにした魚から出た塩分だけ。
「いただきまーす」
熱々のスープをスプーンで掬って飲んでみる。
「う゛っ……!」
絶望的な生臭さ、明らかに濃い塩分。
うん。素人が想像で料理をするものではないと言うことが分かった。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる