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第3章

第46話

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 きぃきぃと床の材木がきしむ音がする。てっきり床も全面石で出来ているのかと思っていたのだが、床は木で出来ている。たしかに床が石だったら冷たくて仕方がないだろう。
 地下にある家に天井はいるのか? と少しでも思ってしまった私を殴りたくなった。屋根もまた木製だが、腐って抜けてしまったところがいくつかある。その部分に天井から落ちてくる雫が垂れて入ってくる。
 屋根がないと家中びしょびしょだ。

 真っ暗な家の中に、私の魔法の明かりが差し込む。地面には魔石が落ちていて、恐らく天井にこの魔石がはめ込まれていたのだろう。天井には魔石がすっぽり収まるくらいの穴が開いている。とは言っても腐って今にも落ちそうだが。
 この魔石はシーリングライトのような役割を果たしていたのだと推測する。こんな洞窟の中光が届かないから、四六時中このライトが家の中を照らしていたのだろう。今でこそ朽ち果てたこの場所にも、昔は人の生活があったのだと思うと不思議な気持ちになる。

 立ち止まって下駄の音を消すと、チャポンチャポンと水の音。辺りをぐるっと見渡すと、備え付けであろう食器棚の中に、金属製で装飾の施された美しい食器が入っている。
 すでに蝶番ちょうつがいは外れ、食器棚を塞ぐものはない。いくつか地面に落ちているが、金属製のためか割れたりはしていないようだ。
 そのうちの1つを手に持ってみる。

「軽い」

 金属製と言うこともあって少しずっしりとしたものを想像していたのだが、どうやらそれは違ったようだ。思ったよりも軽かった。こんなにも湿気にあふれた場所なのにもかかわらず、食器はほとんどさびてはいない。きっと特殊な金属を使用しているのだろう。
 いくつか欲しいと考えてアイテムボックスにしまおうとしたが、元々ここに住んでいた人がいるという印を傷つけるのはどうかと考えた。そっと蜘蛛の巣が張り、ホコリで汚れた食器棚の中に戻した。





 崩れた家の立ち並ぶ通り。時々まだ入れそうな家に入っては、また中心部に向かって歩いて行く。
 道の真ん中で中心方面に目をやると、大きな噴水が堂々とたたずんでいる。とは言ってもとっくに水は干上がってしまっているようだが。

「そろそろご飯にしようかな」

 時計を見ると、既に外は夜らしい。相当な時間あたりを散策したからそこそこおなかがすいている。ただ、おなかがすいているのに食欲がない。やはりここに入ってから頭痛を感じている。それに普段より眠気がする。
 港町でそこそこ休んだと思ったのだが、体はもっと休みを望んでいるようだ。
 今日はしっかり休むことにしよう。

 他人の家を勝手に使わせて貰う気にはなれなかったので、大通りのど真ん中に簡易的な家を建てた。屋根付きだ。
 火を使いたいので家の壁は一部穴を開けている。まあ酸欠になっても死なないんだけどね。

 アイテムボックスから取り出すのは買っておいた魚。塩漬けになっている。
 この塩漬けの魚でスープを作ろうと思っているのだ。私は料理スキルが絶望的にないので、味は保証できない。
 軽く塩を洗い流して鍋の中に投入。簡易的なかまどを作った。

 アイテムボックスの中から薪を取り出す。そして魔法でその薪に火をつける。良い感じにぐつぐつしたら食べ頃だろう。

「……あれ?」

 火をつけようとしたが、あまり火力が出ない。弱々しく燃えはするものの、地上のように上手く燃えない。

「何でだろう……、あ!」

 理由を考えたらある1つの結論に至った。
 ここは地下洞窟だ。ここで一気に火を使って一酸化炭素中毒にでもなったら大変だからと言うことなのだろう。だから弱めに火が付く。
 さすがは地下文明だ。こういうことをあらかじめ考えて魔法で制御しているのだ。至る所にある魔石、きっと魔石に付与を施すのが得意な文明だったのだろう。
 マイヤのような人がいっぱいいたのかなぁ……。



 火力が出ないことに関しては、私の魔力を大量に消費することによってごり押しで解決した。
 そして出来た魚のスープ。味は塩漬けにした魚から出た塩分だけ。

「いただきまーす」

 熱々のスープをスプーンで掬って飲んでみる。

「う゛っ……!」

 絶望的な生臭さ、明らかに濃い塩分。
 うん。素人が想像で料理をするものではないと言うことが分かった。
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