死ねない少女は異世界を彷徨う

べちてん

文字の大きさ
46 / 53
第3章

第43話

しおりを挟む
 翌朝。外から聞こえる土砂降りの音によって目を覚ました。

「最悪……」

 湿気で肌はべたつく。髪の毛もボサボサ。また今日も日の光で気持ちよく起きられるかなと思えば、土砂降りの音で目が覚める。
 昨晩はよく晴れていて、新月だったために星がきれいに見えていた。多少雲はあったが、明日も晴れかなと思っていた。だが実際は大雨。
 憂鬱な朝だ。

 起きたらすぐ出発しようと思っていたので、朝ご飯は食べないと言ってある。ただ、代わりにお弁当を作ってくれるらしく、それを受け取ってから出発だ。
 今日1日は海沿いに進もうと思う。海沿いに進むから晴れて欲しかったのだが、まあ天気には逆らえないだろう。
 陸を進んでも地面がぬかるんでいて気持ちが悪いが。まあどっちもどっちだな。旅は晴れていた方が良い。

 お気に入りの柔らかい皮と、必要部にだけ金属がつけられた装備を着て出発の準備だ。駆け出し冒険者みたいな格好だけれど、動きやすくて私は気に入っている。
 全身ガチガチに覆う防具も防御力が高くて良いと思うが、動きにくいのはデメリットだと思う。いくら防具が堅くても、動きにくいせいで避けられたはずの攻撃が当たってしまえば意味が無い。
 私は軽い方が好き。



 特徴的な下駄の音を鳴らしながら階段を下っていく。
 時刻は6時半。厚い雲のせいで外は暗いが、晴れているのならば出発にちょうど良い時間だ。

「おはようございます」
「おはよう。嬢ちゃんは不思議な靴を履いているから、降りてくるのがわかりやすいねぇ。はいこれ、お弁当」
「ありがとうございます」
「大分雨が降ってるからね、くれぐれも気をつけてな」

 暖かい女将さんに背中を押され、この居心地の良い町を後にする。
 きっといずれどこかで定住するときがあるだろうから、そのときにもう1回来たいなぁ。そのときにはお米と醤油を持って行きたい。





 こういう雨の時、どうやって旅をしてきたかというと、頭の上に大きな結界を張っていた。雨だけ弾く結界。イメージすれば簡単に出せるから非常に便利だ。
 傘を作っても良いのだろうけれど、傘を持っていれば狭いところを歩くときや、森の中では邪魔だ。ここは整備された地球の、観光用自然では無いのだから。
 だからといって雨をずっとかぶっていれば風邪を引く。少し休憩で地面に座ったりとかもしにくいからやっぱり雨は好きじゃない。

 波の音をかき消すかのように大きく音を立てて降り注ぐ大粒の雨。遠くの方からは雷の音が聞こえてくる。もちろんこの世界に雨雲レーダーなんて物は存在しないので、気にせず前に進む。
 ここでレインコートでも着て雨風を避けながら進んでいったら。厳しい冒険って言う感じがして見応えがあるのだろうが、やっている側からしてみればただの苦行。私は結界を使わせて貰う。



 崖の下。海岸沿いを歩いて行く。
 波が高く、白波の立つ大海原は、風が吹き荒れ、巻き上げられた海水は、追加で展開した結界に弾かれる。
 結界は崖側だけ開けて、他の面をぐるっと覆っている。崖側だけ開けているのは、完全に塞いでしまうと結界内の空気が乾燥して嫌だからだ。
 下駄の凹凸を上手く石にはめながら歩いて行く。今使わなくていつつかうんだということで、しっかりと手も使いながら進む。汚れた手は洗えば良い。





 旅はそう頻繁に何かが起きるわけではない。丸1日そう面白いことも無く変わらない景色の草原を歩くなんて言うことは普通だ。
 全く同じで、ゴツゴツとした岩と、水に濡れてジャリジャリになった砂浜が続く海岸線を、ひたすら雨に打たれながら歩いた。
 腕時計を見ると、現在の時刻は12時を回ったところ。朝御飯を抜いていたと言うことで相当おなかがすいている。
 身体強化を掛け、常に結界を張りながら進むというのは、慣れている物のそれでも疲れる。
 今回は足下が悪かったからなおさらだ。

 雨脚は弱まる気配を見せない。良い感じの洞窟があるのでそこに入ってご飯を食べようと思う。



「これは……、天然ではなさそう?」

 偶然近くにあった中程度の洞窟に入ってみると、中に人工物のようなものがあるのを発見した。何かの門のような。
 探知魔法で辺り一帯の地形を把握してみるが、何かこれと言ったものがあるわけではない。門をくぐればすぐ行き止まりだ。

 まあいい。食べ終わったら軽く探索するとして、今はお昼ご飯を食べる。
 おなかペコペコだ。



 アイテムボックスからお弁当を取り出す。木を上手く削って作られたお弁当。どことなく母のお弁当を思い出した。
 ちょうど良い岩に腰を掛け、膝の上でお弁当を開ける。

「おいしそう……」

 中には、魚のフライが挟まれたパンが入っていた。フィッシュバーガーのバンズをパンにしたみたいな感じだ。アイテムボックスは時間の経過があるので熱々というわけには行かないのが残念だが、ありがたくいただく。

「いただきます」

 別に誰も見ていないからと大きく口を開けてそのバーガー風にかぶりつく。
 旅の中でも食事の時間というのはやはり特別だと思う。   
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

処理中です...