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第1章

第7話

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 多分氷の魔法は水系統でいけると思うんだけど、分子のつながり?それを強固にすればいいのかな・・・・・・。
 もっと科学やっておけばよかったなと思うが、今はそんなことを悔いていたところで何も始まらない。とりあえずやってみよう。

「氷、氷、むむむ・・・・・・」

 なんとかイメージを重ねてやってみる。

「いけッ!」

ダバーッ!

 そう念じてみたものの、水しか出てこない。
 少し冷たいような気がするが、これでは氷とはいえない。明らかに流れているし。

「ま、まあ、1回失敗したくらいでくじけちゃだめだよね。よし!」

 時間的にそろそろ食材を集めてご飯タイムにしたいのだけれど、ていうかマジでおなかすいて死にそう。
 できれば早く成功させてご飯を食べたい。その焦りのせいもあってか、何度やっても成功する気配が見えない。
 魔法は万能じゃないってことかな・・・・・・。

 イメージだけじゃどうにもならなそうだったので、適当にそれっぽい魔法の詠唱をつぶやいてみることにした。

「えっと、アイスロック」

 その瞬間、体内から大量の魔力が吸い取られる感覚とともに私の手が凍り付いた。

「キャンセルキャンセル!」

 そうつぶやいたところで魔法は消えない。魔法を消す魔法なんて知らないし、どうにもならない。
 完全に右手の感覚を失ってしまった。ただ右腕におもりが乗っているだけのような感覚。動かせない。
 ひとまず流水で解凍しようということで流れる水に手をつける。
 ・・・・・・こういった痛みになれてしまった自分がつらい。以前ならパニックで気を失っていただろう。ただ、こうやって冷静に水に手をつけるという判断をとれるのだから。

 多分解凍できたところで感覚だったりは戻らないだろうから、そこはヒールを使ってなんとかするしかないのだろう。
 氷魔法はお預けかな。ていうか生きたまま壺に入れておけばよかったんだと思う。拠点からそこまで距離が離れているわけでもないのだし、そんな数時間で鮮度が落ちていては現実世界の生ものなんて全部腐っているだろう。

「ああ、こっちに来てから失敗ばかりだ。つらいよ・・・・・・」

 だめだ。弱気をはいちゃ。
 ある程度溶けてきたので、火魔法を距離を離して発動してさらに手を温める。
 私の魔力量が少なくてうまくできていなかったのだろうか。それとも普通に失敗だったのだろうか。思っていたよりも早く氷は溶けた。
 感覚自体は戻ってこなくてうまく動かせなかったのだが、そこはヒールでなんとかなった。
 すこし手が青くなってしまっているが、それは血液が戻ってくるとともに通常に戻るだろう。
 さっさと食材を集めて戻ろう。日が暮れる。







「・・・・・・これだけあれば十分かな?」

 しばらく食べていなかった後に急に食事をとると、ショックで気を失うというのを聞いたことがある。本当かどうかはわからないが、あまりたくさんの量を食べるのは怖いのでやめておく。
 とれたのはザリガニ(らしきもの)と、サワガニ(らしきもの)の2種類で、合わせて5匹という食事にしては寂しい量だが、時間がなかったし、初めてだったからこれでも上出来だ。
 本日のお食事はコイツらを水で煮てだしを取ってスープを飲む。もちろん身は食べない。
 数日間はできるだけ固体ではないものを摂取して体を慣れさせていきたいと思っている。おなかは減っているが、気を失うのはいやだ。
 気を失っている間に怖い動物とかが来て襲われたら大変だ。
 さすがに内臓なんかをひねり出されて食べられてしまえば、ヒールでも太刀打ちできないだろう。それでも死ねないのだから永遠の苦しみがただ続くだけ。
 それに比べちゃ少しの苦しみ。今はじっと耐えるのみ。

 以前作った耐火の壺にとってきた甲殻類を軽く洗って放り込む。
 たわしだとかブラシだとかは持っていないので、そこら辺に生えていたもさもさしている草を使って擦ってある。
 途中挟まれて多少痛かったが、腕を切り落とされたときに比べれば虫刺され程度だと考えて我慢した。
 ここで腕を切り落とされたときと比べちゃうのが恐怖だなぁ・・・・・・、と思う。

 油とかないからくっついちゃうけど、なんとなく香ばしい匂いが漂ってきてそれがまた食欲をそそる。
 スープにしたいので、そいつらを洗った木の枝で潰していく。かわいそうだったが締める前に火に掛けたので、勝手に動いてくれて全体がカリカリに焼けている。
 そのため簡単に潰すことが出来た。
 まだ荒いが潰せたのでそこに水を投入する。
 そしてさらに混ぜるように潰してできるだけ粉々になるようにする。潰せばだしが出るだろうし、現状食べることを躊躇う身もスープとして飲める。
 風味とかそういうのはわからないので、とりあえずぐつぐつと沸騰するまで煮込む。

「おお、ちょっとだしっぽい感じの色?出てる!」

 全体的にオレンジぽい色が出てきたので、そこら辺で火からあげて、コップくらいの大きさで作られた土器(のようなもの)に掬ってみる。
 掬われたスープは多少濁っていていい香りと湯気が立ちこめている。
 まだ熱そうだったが食欲には勝てず、ゆっくりと口に含んでみる。

「いただきます」

 この世界に来て初めてのちゃんとした食事。ありがたくいただく。命の恵みに感謝して。

 口に含んだ瞬間、甲殻類のガツンとしたうまみが口いっぱいに広がり、香ばしい香りが鼻を抜ける。
 多分現実世界でこれを飲んでもここまでの感動はなかった。ただ、久しぶりにとった味のある物は心身に染み渡る。
 本当においしい。ここまで食事をおいしく食べたことはないはずだ。
 暗くなってきた森の中、自分でとって自分で作った。それも自分で作った調理器具で。おいしくないわけがないのだ。
 味付けはない。具材もない。ただのスープだけれど、涙が出るほどおいしかった。






「さすがにあれだけじゃ少なかったけど、少しずつ量を増やしていこう。今はこれくらいで」

 さて、ようやく一息つけたところでこれからどうするかという考えが頭を巡るわけだ。
 一生この森で暮らすわけにもいかないだろう。別にそれでもいいのだけれど、出来れば人に会いたい。
 いや、でも人に会ったらまためんどくさいことが起こるかもしれない。だったらここで魔法を練習して自衛を学びたい。
 ひとまず魔法練習は最優先だ。狩りもしないといけないし、先ほどのように魔法を発動しようとして自身の手を凍らせてしまったら困る。
 魔法を覚えて、そこから森を出る。言葉は大丈夫っていっていたから話は通じるはず。

「それよりこの髪の毛、どうしようかな・・・・・・」

 髪の毛を指でくるくるとしながらつぶやく。
 水浴びで多少の汚れは落としたものの、長めの髪の毛はパサついて荒れている。
 先ほど森を歩いたとき、この長い髪が枝に引っかかったりと何かと不便だった。普通に邪魔だ。
 だったら短くしてしまった方がいいかもしれない。洗うのも楽だし、どこかに引っかかって痛い思いをする必要もなくなる。

 はさみくらいだったら作れるかな・・・・・・。
 いや、無理か。魔法でいけるかな。

 ・・・・・・ていうか、不老不死ってさすがに髪は伸びるよね?実際伸びてるし。
 ていうかこれ爪も伸びてるんだよなぁ・・・・・・。とにかく刃物がほしい。刃物を手に入れるまでは風魔法でどうにかしよう。
 エアカッターはどうやら私でも簡単に使えるようで、力の加減も簡単だ。
 まずは爪から。曲線に切ることは無理だから、直線でいろいろ角度をつけながらうまく曲線を作っていく。

 たき火に手をかざしながら集中して切っていく。
 あの爪を切るときのパチンッっていう音が好きだったんだけど、エアカッターではそんな音が鳴るわけもなく、静かに切られた爪が落ちていく。
 魔法での爪切りは思ったより楽だ。魔法はすごく便利な物だと感心する。

「普通に切れたな」

 爪は切れた。
 問題は髪の毛だ。初心者が切ると変になっちゃうランキング第1位だと個人的には思っているのだが、さすがに魔法で美容師を呼び出すことは出来ない。
 だからといってこのままでは邪魔。でも髪の毛は女の命というわけだから・・・・・・。
 でも命こんなにボサボサだし・・・・・・。

「ええい、ままよ!」

 思い切って肩の上あたりからばっさり切ってしまうことにした。
 伸ばしていた髪の毛は肩から一気に地面に落ちる。なんとなく首のあたりがさっぱりしたような気がする。スースーすると言いますか。
 続いて前髪も眉毛の下あたりですべて切りそろえる。

「・・・・・・うまく出来たかな?でも見るすべがないからうまく出来た物として考えよう」

 鏡がない。だからわからない。
 散髪は昼間にやればよかったなと思ったのは、暗い中沢に行くのが億劫だったからだ。
 ただ、付近に凶暴な動物の姿もない。1度やってしまえばもうためらいなどなくなるわけで、着ていた服を脱ぎすてて沢へと入っていった。
 今日は新月じゃない。満月でもないけれど月の明かりは想像以上に明るい。
 今日一日の汚れを落とす。髪もきれいに洗い流す。






 一通り洗い終え、ぼーっと水につかって空を見上げながら考える。

「耐火性の壺・・・・・・、風呂作れるくね?」
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