若き天才国王の苦悩

べちてん

文字の大きさ
上 下
39 / 39

39話目 ゴブリン

しおりを挟む
「フィレノア、今日は何の日だと思う?」

「はい。建国記念日ですよね」

「ということは僕が遊びほうけてもいいと思うんだ」

「はい???」

「じゃあみんなで狩りにいこう!」

「むむ、むりです! 私は無理です」

「じゃあティニーはお留守番。僕とフィレノアとククレアでいこう」

「ちょっと、勝手に巻き込まないでよ」

「じゃあ行かないの?」

「……行くけど」

 朝、みんなで食事を取っているときの突拍子もない会話から、今日の1日は始まった。

 仕事? 知らないね。

 今日は建国記念日で、国全体でお祭りムード。

 冒険者のみんなもお祭りムードなものだから、この時期は魔物が増加するんだ。

 少し息抜きをね。





「来たからにはとことんやりましょう」

 指をポキポキと鳴らしながらフィレノアが言う。

 完全にオオカミの目だ。

 ちなみに、この3人を戦闘狂から順番に並べると、フィレノア、ククレア、僕と言うことになる。

 僕は別に戦闘狂ではないので一番下だ。

「じゃあ探知掛けるわね」

 そう言ってククレアは探知の魔術を発動する。

「おお、うじゃうじゃね」

「さあさあ、早く行きましょう!」





 最初に僕たちの前に現れたのは大きな熊だ。

 コイツは獣臭くておいしくないし、毛皮もあまり貴重ではない。

 だから冒険者で狩ってくれる人は少ない。

 適度に強くて儲けになりにくいから。

「はぁ、やっぱり王都周辺は弱いのしかいないですね」

 そういいながら1人で熊を倒してしまうフィレノア。

 こちらに向かって明らかな威嚇をしていた熊を、パンチ一発でねじ伏せてしまった。

 かわいそうなことに、熊はパンチで空高く飛ぶと、そのまま地面に打ち付けられてひっくり返っている。

 そんなかわいそうな熊をアイテムボックスに収納してさらに奥へと進んでいく。

 この場所は王都から歩いて1時間もしないような近場で、駆け出し冒険者の狩り場にもなるような所だから、フィレノアが満足できるような強い敵は現れない。

 でも別に良いんだ。

 僕は少し体を動かしたいだけだからね。

「前方、ゴブリンがいるよ」

「「了解」」

 ゴブリンもそこまで強い魔物じゃないけど、放置しておくと勝手に巣を作り出し、その巣が大きくなると一気に攻め込まれてしまう可能性がある。

 できるだけ早めに処分しておきたい魔物ではある。

 ククレアが言うにはそこそこの集団でいるらしく、もしかしたら上位種が居るかもしれないとのことだ。

 少し駆け足で森の中を進んでいく。

「いましたね」

「……あれは上位種のロクブリンだな」

「ナナブリンも居ますね」

 ゴブリンは頭が悪い。

 敵を発見して突き進むが、記憶能力が弱いために、目的を見失うとそこに敵が居たと言うことすら忘れてしまう。

 でも突き進む。周りのゴブリンもみな突き進んでいるから。

 そんなアホな生物に知能が点いたもの。

 それがロクブリンだ。

 多少頭が良いので、罠を仕掛けたり、村を作ったりする。

 そして、その中で集団の統率を取る者が現れる。

 それがナナブリンだ。

「じゃあ、私はナナブリンやるので、あとの雑魚をお願いします」

「え~、私がやりたい!」

「……いいからいくぞ」

 僕のかけ声で一気に踏み込み、ゴブリン共の群れの中へと突撃していく。

 2人が上位種をやりたいようなので、僕はゴブリンを蹴散らすことにする。

 魔術で剣を作り出し、切る瞬間に重力負荷を上げる魔術を剣に付与する。

 そうすると、簡単な力でも敵を切れるのだ。

 ゴブリンの急所は人間と同じで心臓、首、脳の辺りだ。

 心臓は骨に守られていて、刺そうとしても刺さらないことがある。

 そのために、狙うなら首か脳。

 しかし、脳も同じように骨で守られている。

 強く叩いて脳しんとうを起こさせる用途や、脳につながっている目に剣を突き刺せるのであれば狙っても良いかもしれない。

 一発で仕留めたいなら首が一番だろう。

 流れ作業で5体ほどのゴブリンを倒した後、ちらっとナナブリンと戦って居るであろうフィレノアの方を見ると、なぜか雑魚を片付けていた。

 ククレアがナナブリンをやっているのかと思えば、ちょうどロクブリンの集団を倒しているところだった。

「……ナナブリンはどこだ? ッと、あぶない」

 そんなことに気を取られていたらロクブリンが魔術で攻撃してきた。

 それをさっと躱すと、剣を握っていない左手で土魔術を発動。

 槍型に変形させた土を一気にロクブリンへと飛ばす。

 見事目に突き刺さり、一発で仕留められた。



「お疲れ。ナナブリンはどうした?」

「1発で死んじゃいました。もうちょっと戦い甲斐があるかと思ったんですけど……」

「ゴブリン種はあまり強くないわね」

「……そうだね」

 女性を怒らせると怖いというのをよく聞く。

 うちの女性陣はそんな噂を遙かに凌ぐほどに怖いかもしれない。

 普通に殺されるな。うん。 



==================
突然であり、加えてここまで短いですが、ネタ切れが深刻なために少し更新を止めさせていただきます。
完結設定にしていますが、ネタが溜まった頃にまたヌルッと再開すると思いますので、そのときはまたよろしくお願いします。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

思想で溢れたメモリー

やみくも
ファンタジー
 幼少期に親が亡くなり、とある組織に拾われ未成年時代を過ごした「威風曖人亅 約5000年前に起きた世界史に残る大きな出来事の真相を探る組織のトップの依頼を受け、時空の歪みを調査中に曖人は見知らぬ土地へと飛ばされてしまった。 ???「望む世界が違うから、争いは絶えないんだよ…。」  思想に正解なんて無い。  その想いは、個人の価値観なのだから…  思想=強さの譲れない正義のぶつかり合いが今、開戦する。 補足:設定がややこしくなるので年代は明かしませんが、遠い未来の話が舞台という事を頭の片隅に置いておいて下さい。 21世紀では無いです。 ※未だに完結の目処が立っていない初期に書き始めた駄作です。ダラダラやっていますが進める意志はあります。

処理中です...