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未開の森①

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あれ?この作品完結しなかったっけ?
と思われた方、その通りです。本日から再開することにしました。
完結と言うより打ち切りに近い形で終わらせてしまったわけですが、私自身それがモヤモヤしていました。なので再開します。
今回こそはちゃんと続けます。

現在この作品の他に2つ投稿しており、こちらの投稿頻度はあまり高くないと思います。ただ、しっかりと投稿しますので、これからよろしくお願いします。
前回の投稿から日が空き、設定等を忘れているところがあります。読み返したりしながら書いていきますが、矛盾点等あるかも知れません。
随時修正を入れていきます。

前書き失礼しました。本編どうぞ。

――――――――――――――――――





 戦争が終わってからしばらくの時が経った。
 そろそろ季節は秋で、つい最近まで青々としていた木々たちも、いつの間にか赤や黄色に染まっている。
 今日も今日とてだらだら仕事をしているわけだけれど、ふとこう思ったのだ。
 あ、冒険がしたいな、と。

 戦争で増えた土地の中に、未だほとんど開発の進んでいない森がある。
 その森の立地が最悪で、高い山にぐるっと周囲を囲まれているのだ。その中にカルデラのような形であるのが通称『未開の森』という森だ。

「せっかく土地も増えたことだし、少しそこを開発してみようと思ったの」
「いいね! 楽しそう!」
「楽しそうかは分からないけど……。何かしら資源くらいはある気がするんだよね」
「でしたら騎士団を派遣しましょうか?」

 フィネメイゼがそう提案してくれるが実は私は少し冒険をしたいのだ。
 一応最高ランクの冒険者で、異世界転移でこちらに来た私だが、なんか流れでこの国の王様になっちゃったからこの世界を自由に冒険があまり出来ていない。

「えっと、私が行きたいなぁ……、なんて?」
「全く。冗談はよしてください。王様なんですから部下を上手に使うべきです」
「休憩! 休憩がしたいの私は!」
「未開の森探索は休憩とは言いませんよ。一大事業じゃないですか。それに、陛下がいらっしゃらない間はどうやって国を運営して行けと?」
「そこは2人に任せるよ」
「任せて!」
「任せた! 頑張ってねレイナ!」

 そう言って頭を撫でる。
 レイナは良い子だなぁ。きっと優秀な女性に育ってくれるよ……。

「じゃあ、早速行ってきま――」
「ちょいちょいちょい! 何勝手に話を進めてるんですか! 私は許しませんからね!」
「えぇー、なんかお母さんみたいだね」
「お母さッ……」

 フィネメイゼは一瞬ひるんだような表情を見せたが、咳払いをしてまたお母さんのような台詞を繰り返した。
 確かに王様が勝手に王宮を出るのはよろしくないかもしれない。

「じゃあ仕方が無いから騎士団を派遣しよう……」
「はい。そうしてください」

 何か騎士団では対処できないような重大なことがあってくれれば良いんだけどなぁ……。
 いや、ない方が良いんだけどね?

「ということで、メルデミシス、誰か適当な人を見繕って森に派遣して欲しい」
「わかりました。距離が距離ですので結構な大人数になるかも知れませんが大丈夫ですか?」
「かまわない。頑張って」
「はっ!」

 そういうと、騎士団長のメルデミシスはスタタタタッと執務室から出て行った。
 国が出来た当時は騎士団どれくらいの人数居れば良いのか分からなくて相当な少人数しか雇わなかったんだよね。
 でも実際は騎士団って結構な人が必要で、いつのまにか膨大な人数にまで膨れ上がった騎士団を、メルデミシスは上手くまとめてくれていると思う。



「それにしても、国も大分大きくなったね」
「そうですね。まさかここまで大きくなるとは正直思っていませんでした……」
「ねね様には何か不思議な力があるんじゃないかな?」
「うん、そうかもしれないね~」

 と頭を撫でる。
 あー、レイナちゃん可愛い。

 初めから比べて、今はどのくらいまで国が大きくなったんだろう。
 正直私もてんやわんやだ。いつの間にか国を併合しちゃうものだから、正直他国からの目が痛いんだよね……。
 ぽっと出の謎の国が謎に大成長を遂げるわけだから、味方に付くか敵に回るか測りかねてる印象だ。
 私としてはどっちでも良いのだけど、出来れば味方の方がありがたい。
 もしも敵に回って何かあったら私は受けて立つよ。でも、できるだけ民は安全な生活をしていてほしいと思っている。
 大きな戦いはしたくない。





 騎士団を森に派遣してからあっという間に2ヶ月が経過した。
 多少は暖かかった気温もいつの間にか下がってきて、今は冬支度を始めている。

 どうやらフィネメイゼは今年は自領には戻らないらしい。王宮は国全体からたくさんの資料が送られてくる。
 もちろんその中にはフィネメイゼのアルキメデス領からの資料もあるわけで、優秀な人も雇い入れたらしく、ここからでも問題なく領地は経営できるとのこと。
 最近ではフィネメイゼのお父様やお母様も領地経営の勉強を始めたらしく、領の館でいろいろな人に教わりながら頑張っているらしい。
 最高の親孝行だよね。いつの間にか1国の貴族に、それも相当立場が上になっているわけだから。

 フィネメイゼの両親は非常に仲が良いらしく、それに人から好かれる性格のようで、領地でも上手くやっているとか。
 時々手紙でやりとりしているそう。

「そういえば、騎士団が戻ってきたそうですね」
「そうそう! 多分時期に報告に来ると思うんだけど……」

 そう話していると、執務室の扉が3回叩かれた。
 どうぞ~、と返事をする。噂をすればなんとやらだ。

「失礼します」

 もちろん入ってきたのはメルデミシス。早速報告を受ける。





「結論から言いますと、あの森はやばいですね」
「……やばい?」
「はい。やばいです。噂にあった魔物というのはたいしたことは無かったのですが、中心部付近に大きなアリの巣があって、そこから出てきた無数のアリがやっかいですね」

 報告に寄れば、円状になっているカルデラの中心部に非常に大きなアリの巣があるらしい。
 そのアリの巣からは絶えずアリが出てくるのだが、そのアリがそこそこ大きくて群れで行動しているらしい。
 大きさは大体2センチほど。集団になって魔物を狩っているらしい。
 危うく騎士たちもやられそうになり、何人かは怪我を負ってしまったとか。

 どうやら毒があるようで、噛まれるとその毒が体内に注入されるそう。
 前世の記憶が正しければ、それは蟻酸かなぁ、と推測する。

 1つのアリの巣の中に予測だといくつかのコロニーがあるようで、中心に近づくほど見かけるアリの方は増えていく。
 このアリをどうにかしないと開発は出来ないだろう。ということだ。

「騎士団の方ではどうにもならなかった?」
「はい。如何せん数が多いものですから、1匹1匹倒していたら埒があかないのです」
「う~む……」

 そう顎に手を当てて悩む動作をするが、内心は喜びを感じている。

 きたよね? これ私が行くときだよね?

「では、私が行こう」
「陛下!? だから、ダメですって!」

 とすかさずフィネメイゼ。だがそれを私は右手で制止する。

「騎士団でダメなら私が行く。すぐ戻るから後よろしく」

 既に冒険セットはアイテムボックスの中に入っている。
 よっしゃあ~、久しぶりの冒険だ~!  
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