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皇帝
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「くそッ!どうしてなんだ!!」
とある部屋の中、金のふんだんに使われた大きな玉座に座った一人の男が苛立ちを隠す素振りも見せずに怒り狂っていた。
「あんな小国ごときにここまで追いつめられるとは!」
血管がはちきれるのではないかと本気で思ってしまうほど顔を真っ赤に染め上げているこの男こそ、ケルスレイド帝国皇帝、ケルスレイド22世であった。
彼が今いるのは城内の謁見の間。何段か高くなったところに配置されている玉座を見上げるように並んでいたのは、今回の指揮を執っている騎士団の団長、それに一部の貴族たちである。
彼らは皇帝の怒りに晒され、顔を真っ青に染め上げながら額に汗を浮かべていた。なんせ、目の前にいる皇帝はこのケルスレイド帝国史上、最も独裁色の強い皇帝であり、少しでも気に食わなければ処刑をしてしまうほどの暴君なのである。
そんな皇帝の怒鳴り声が響く謁見の間の扉が大きく叩かれた。
びくびくしながら話を聞いていた者たち、皇帝やその妃を含め、全員が突如ならされた扉に目を向ける。
もしかしたらこの戦争がいいほうに動いたのかもしれない。そんな希望を抱いて。
「失礼しま~す。」
廊下にいた警備員やメイドに執事たちは大きな問題にならないよう、見かけたものを片っ端から眠らせてきた。
あとは皇帝と話をつけるだけだ。
私は普段執務室で仕事をしているのだが、先ほど執務室に行ったときに皇帝の姿はなかった。
もしかしたらと思って謁見の間にやって来たのだが、どうやらこの予測は正解だったらしい。
大きな扉を開けると、中にはそこまで多くはないものの複数の豪華な格好をした人、そして玉座には皇帝の姿があった。
「誰だ!!」
扉の内側に張り付くように待機していた警備担当の騎士は、私に槍を向けてきた。こいつは先ほど廊下でやっていたように眠りの魔法をかけた。
突如現れた装備もろくにしていない少女が大柄な兵をあっという間に無力化していたのを見て、謁見の間の中はあっという間にざわめきに包まれた。
そのざわめきを断ち切るように声を上げたのは皇帝ケルスレイド22世であった。
「お前は誰だ!どうやってここまでやって来た!!」
距離が離れているというのに、ざわめきに包まれているというのにこちらまで聞こえてくるほどの大きな声、伝わってくる迫力。
この広大な領地を、たくさんの貴族をまとめているだけはある。
皇帝の一声によってざわめきは消え、静かな空気が間を支配している。
「お初にお目にかかります。私はニシゾノ王国国王、ニシゾノ・チナリで御座います。以後お見知りおきを。」
私はそういってにこっと笑って見せた。
私がそう言った瞬間、静かだった謁見の間は再びざわめきだした。
「これじゃあ話ができない。」
そう思ったので、ひとまず先ほどの騎士と同じように眠らせてしまうことにした。
こうして再び静かになった謁見の間、ついにケルスレイド、ニシゾノ両王が対面することとなった。
とある部屋の中、金のふんだんに使われた大きな玉座に座った一人の男が苛立ちを隠す素振りも見せずに怒り狂っていた。
「あんな小国ごときにここまで追いつめられるとは!」
血管がはちきれるのではないかと本気で思ってしまうほど顔を真っ赤に染め上げているこの男こそ、ケルスレイド帝国皇帝、ケルスレイド22世であった。
彼が今いるのは城内の謁見の間。何段か高くなったところに配置されている玉座を見上げるように並んでいたのは、今回の指揮を執っている騎士団の団長、それに一部の貴族たちである。
彼らは皇帝の怒りに晒され、顔を真っ青に染め上げながら額に汗を浮かべていた。なんせ、目の前にいる皇帝はこのケルスレイド帝国史上、最も独裁色の強い皇帝であり、少しでも気に食わなければ処刑をしてしまうほどの暴君なのである。
そんな皇帝の怒鳴り声が響く謁見の間の扉が大きく叩かれた。
びくびくしながら話を聞いていた者たち、皇帝やその妃を含め、全員が突如ならされた扉に目を向ける。
もしかしたらこの戦争がいいほうに動いたのかもしれない。そんな希望を抱いて。
「失礼しま~す。」
廊下にいた警備員やメイドに執事たちは大きな問題にならないよう、見かけたものを片っ端から眠らせてきた。
あとは皇帝と話をつけるだけだ。
私は普段執務室で仕事をしているのだが、先ほど執務室に行ったときに皇帝の姿はなかった。
もしかしたらと思って謁見の間にやって来たのだが、どうやらこの予測は正解だったらしい。
大きな扉を開けると、中にはそこまで多くはないものの複数の豪華な格好をした人、そして玉座には皇帝の姿があった。
「誰だ!!」
扉の内側に張り付くように待機していた警備担当の騎士は、私に槍を向けてきた。こいつは先ほど廊下でやっていたように眠りの魔法をかけた。
突如現れた装備もろくにしていない少女が大柄な兵をあっという間に無力化していたのを見て、謁見の間の中はあっという間にざわめきに包まれた。
そのざわめきを断ち切るように声を上げたのは皇帝ケルスレイド22世であった。
「お前は誰だ!どうやってここまでやって来た!!」
距離が離れているというのに、ざわめきに包まれているというのにこちらまで聞こえてくるほどの大きな声、伝わってくる迫力。
この広大な領地を、たくさんの貴族をまとめているだけはある。
皇帝の一声によってざわめきは消え、静かな空気が間を支配している。
「お初にお目にかかります。私はニシゾノ王国国王、ニシゾノ・チナリで御座います。以後お見知りおきを。」
私はそういってにこっと笑って見せた。
私がそう言った瞬間、静かだった謁見の間は再びざわめきだした。
「これじゃあ話ができない。」
そう思ったので、ひとまず先ほどの騎士と同じように眠らせてしまうことにした。
こうして再び静かになった謁見の間、ついにケルスレイド、ニシゾノ両王が対面することとなった。
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