上 下
64 / 95

探索開始

しおりを挟む
「あ、中はたいして……って、そんなことなかったわ。」

 溢れ出てくる魔力に比べれば、中は比較的マシなものかと思ったが、入った瞬間こちらをじろりと見てくる巨大蜘蛛を見て、その考えが間違っていることを分からされた。

「攻撃魔法久しぶりに使うなぁ……。」

 国王になってから使う魔法は収納とか移動とかそういうのばかりで、なかなか派手な攻撃魔法は使っていなかった。
 久しぶりだからなまっている可能性があるため、気持ち強めを意識する。

「ほッ!」

 小さな掛け声とともに放たれた風の魔法は、轟音を掻き鳴らし、地面を大きく振動させながら雲をめがけて一直線に飛んでき、胴を真っ二つに切り裂いた。
 それだけならまだよかったが……。

「やべ、やってしまった。」

 放たれた魔法は蜘蛛を切り裂いたくらいでは威力が弱まることはなく、洞窟の中に美しい青い空を眺められる観光スポットになり得る何かが爆誕してしまった。
 幸い、上に人は乗っていなかったようで、人的被害はなかったものの、一歩間違えれば大災害になるところだった。
 以後、気を付けます。




「これほんとに進んでるのか?」
(進んでるよ。ていうかさ、こっちに来て間もない頃に渡したマップ機能使ってる?)
「あ!忘れてた!」

 そういえばこっちの世界に来てすぐ、マップの機能を使えるようにしてもらっていたのを長らく忘れてしまっていた。

「マップ!」

 そう唱えると、あたり一帯の地図が出てきたのだが……。

「なにこれ、全面黒塗りじゃない!」
(あ、ダンジョン内は使えないんだった。)
「ちょ、何やってるんじゃい!早く対応させて!」
(え、えっと、ダンジョンは入り組みすぎててマップにできないというか、なんというか……)

 どうやらダンジョンはマップに起こすことが不可能らしい。
 理由としては、ダンジョンは短期のサイクルで環境が変わっていくし、現在もみるみる成長しているため、マップに起こすと処理量がとんでもないことになるかららしい。
 マップの処理には私の脳の一部を使っているらしいのだけど、そこにダンジョンのマップを加えると、脳がパンクして処理が追い付かなくなるらしい。

「うん、そんな危険なことしないで?」
(じゃあさ、空間把握の魔法使ってみたら?)
「空間把握?」

 この世界には魔力が充満している。
 その充満している魔力の中に、自分の魔力を少し混ぜ込むことにより、あたり一帯の環境を把握することができるらしい。
 その範囲というのは発動者の魔力量に依存するらしいのだが、78億2735万8672もの魔力を有する私の力を駆使すれば、この国はおろか、大陸全体に魔力をいきわたらせることが可能だとか。
 さすがにそんなことはしないが、まあダンジョン内を把握するというのは造作もないということだ。

「じゃあさっそく~!」

 “混ぜ込む”という表現だと少しわかりにくいが、魔力をうっすらとあたりに広げる感じでいいようだ。
 私は魔力を圧縮して無理やり体内に閉じ込めているため、その圧力を少し弱めるだけで魔力は体外に広がっていく。
 通常、魔力を体外に魔力として放出するのは非常に難しいとされているが、私はその難しい工程をカットすることが可能なので、非常に早く空間把握に成功することができた。

「お!来た!」

 この世界に存在するすべての物質には魔力があるのだが、自身の魔力がそれらの魔力と接することで、魔力を通じて私に空間の状態を知らせてくれるらしい。
 コウモリの出す超音波と似たような感じなのかな?と思う。

 どうやらこのダンジョンは5層の構造になっているらしく、現在地は1層。
 層が変わるところにはボスモンスターのようなものが存在しているが、それと戦うのは非常にめんどくさい。
 どうやらこのダンジョンを区切っている床は厚さ50mほどの岩盤らしい。

(え、ちょ、何してるの!?)

 さっき風魔法で天井に穴開けられたし、意外といけるんじゃないか?

(ちょ、チナリ!ちょ、ちょちょ!おい!)

 えっと、こぶしに魔力を込めてっと!

「ふッ!」

 私のこぶしが勢いよく地面に触れた瞬間、あたりをまるで隕石が落ちたかのような振動が包み、地面は陥没した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。 社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。 頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。 オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

異世界帰りの勇者は現代社会に戦いを挑む

大沢 雅紀
ファンタジー
ブラック企業に勤めている山田太郎は、自らの境遇に腐ることなく働いて金をためていた。しかし、やっと挙げた結婚式で裏切られてしまう。失意の太郎だったが、異世界に勇者として召喚されてしまった。 一年後、魔王を倒した太郎は、異世界で身に着けた力とアイテムをもって帰還する。そして自らを嵌めたクラスメイトと、彼らを育んた日本に対して戦いを挑むのだった。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

七星点灯
ファンタジー
俺は屋上から飛び降りた。いつからか始まった、凄惨たるイジメの被害者だったから。 天国でゆっくり休もう。そう思って飛び降りたのだが── 俺は赤子に転生した。そしてとあるお爺さんに拾われるのだった。 ──数年後 自由に動けるようになった俺に対して、お爺さんは『指導』を行うようになる。 それは過酷で、辛くて、もしかしたらイジメられていた頃の方が楽だったかもと思ってしまうくらい。 だけど、俺は強くなりたかった。 イジメられて、それに負けて自殺した自分を変えたかった。 だから死にたくなっても踏ん張った。 俺は次第に、拾ってくれたおじいさんのことを『師匠』と呼ぶようになり、厳しい指導にも喰らいつけるようになってゆく。 ドラゴンとの戦いや、クロコダイルとの戦いは日常茶飯事だった。 ──更に数年後 師匠は死んだ。寿命だった。 結局俺は、師匠が生きているうちに、師匠に勝つことができなかった。 師匠は最後に、こんな言葉を遺した。 「──外の世界には、ワシより強い奴がうじゃうじゃいる。どれ、ワシが居なくなっても、お前はまだまだ強くなれるぞ」 俺はまだ、強くなれる! 外の世界には、師匠よりも強い人がうじゃうじゃいる! ──俺はその言葉を聞いて、外の世界へ出る決意を固めた。 だけど、この時の俺は知らなかった。 まさか師匠が、『かつて最強と呼ばれた冒険者』だったなんて。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します

風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。 そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。 しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。 これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。 ※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。 ※小説家になろうでも投稿しています。

処理中です...