病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

べちてん

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190話目 待望の1戦

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「敵っす!」

 少し場所を移してからしばらくした頃、私たちのチームに敵が近づいてきているのを感覚共有をしながら索敵している神谷君が発見した。

 彼によれば敵の数は4人で、上空からのためよくわからないが、片手剣が1人、大剣が1人、魔法使いが2人のようだ。

 結構整った構成のため、おそらく戦いにくいチームだろう。

「戦うのか?」

「そうですね。キルポイントがほしいのでやっちゃいましょう」

 どうやらこちらはまだばれていないようであったので、隠れてやり過ごしてもいいかと思ったが、ここは戦うことにした。

「ねる、槍飛ばして」

「おっけ~まかせて!」

 先手必勝。

 距離が離れているために私の双剣では攻撃が届かない。

 そうなればねるやLesserさんの槍で遠距離攻撃をしたい。

「いくよッ」

 ふんッ、と踏ん張って一気に投げた槍は数秒間飛行を続け、しばらくするとねるの手に戻ってきた。

「命中っす! いい感じにダメージ入っているっすよ!」

 空中映像によれば、飛んだ槍は首元に命中。

 この大会において、残酷な描写を避けるために、当たった部位の体が削れるといった今までの大会で使われていた仕様から、通常のフィールドなどと同様の仕様である足、胴、頭と当たった所によってダメージ量の異なるシステムが採用されている。

 今回当たった首元は、判定では頭というようにされるため、最大ダメージを与えられたわけだ。

「来ます!」

 こちらに気づいた相手チームは一直線にこちらに向かって駆けてきている。

 ただ、距離が離れているために相手の姿をはっきりと捉えられない。

 2人の魔法使いがこちらに攻撃を飛ばして威嚇しながら、徐々に詰まっていくチーム間の距離。

 そんなチームのメンバーの1人、大剣を背負った少女に見覚えがある。

「敵はメアリーのチームです! 覚悟してください!」

 あれは我が親友にして、最強のプレイヤーの1人、メアリーである。








「ユウヒ、調子はどう?」

「おかげさまで絶好調。そっちは?」

「こっちもよ。そして今私は最高の気分よ。ようやくユウヒと戦えるのだから」

 大会の前に交わした約束。

 長く一緒に居て1度も戦ったことがないのはこの場所で戦うためだったのかもしれない。

 戦闘の火蓋が切られた。

 両チームとも、私とメアリーを除いた3人がそれぞれで、そして私とメアリーの1対1という構図。

 これでいい。

 私とメアリー含めた4対4をしても、最終的に残るのはこの2人になるのだろうから。

 双剣を鞘と擦れる甲高い音を鳴らしながら引き抜く。

 メアリーも同様に、その体で扱えているのに疑問を抱かざるを得ないような巨大な大剣を握りしめ、こちらをじっと睨む。

 静かな湿地帯に響き渡る3対3の争いの音とは対照的に、この2人の間にはただ無音があるのみ。

 ほうっ……と息をついてこの高ぶる気持ちを落ち着かせる。

 そして一気に踏み込み、同時にツルを出してメアリーの方へと向かわせる。

 ツルで一気に巻き上げてそのまま双剣で倒したいと思っていたのだが、もちろんそう簡単にいくなどとは思っていない。

 メアリーめがけて飛んでいくツルは腰を低く踏ん張ったメアリーの大剣によって粉々に砕け散る。

 作戦とも呼べないような単純な手ではあったものの、美しく回避したメアリーの姿に思わず笑みがこぼれる。

 そして、私は体をくねらせて空中を蹴りながら一気にメアリーへと突っ込む。

 大剣は双剣よりリーチが長い。

 その重さを生かした強烈な一撃は、出来ることなら食らいたくない。

 ただ、至近距離での戦闘となれば、その大剣の重さはデメリットと化す。

 重すぎるのだ。

 メアリーの胸元めがけて差し込んだその双剣は、大きな大剣により防がれる。

 頭の痛くなるような高音と衝撃派が私たちを中心としてこの湿地に響き渡る。

 右、左、そしてまた右左と交互に繰り出す双剣の斬撃を、メアリーは自慢の大剣の長さを生かして小さな動きで捌ききる。

 彼女の強み、大胆な攻撃と繊細な技術を兼ね備えた化け物。

 Sakuraも強かった。

 レイヴも強かった。

 私は今までたくさんの強い人と戦ってきたが、ここまで自身の鼓動が大きく聞こえたことはない。
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