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179話目 スキル
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「って、いつになったらスキル出るの……」
あれから2時間ほど狩り続けてみても、一切スキルはゲットできない。
アイテムボックスにはモンスターが落とす素材がわんさか溜まっており、あとで売ったら相当な値段になりそうだと多少喜びを感じる。
ただ、そんな些細な喜びでは打ち消すことのできない苦痛が私の身を襲っているのだ。
いや、そりゃ初めの方はアルラウネとの戦いに苦戦してなかなかに楽しい戦闘ができたよ?
でも、2時間も続けてれば倒し方なんてわかってくるわけで、今はひたすらに流れ作業をこなすロボットと化しているのだ。
スキルは増えない。
HPも減らなければレベルもなかなか上がらない。
ただひたすら、感情を無にしてモンスターと戦い続ける。
「きたッ!」
モンスターのうめき声の中に混じった電子音は、スキル獲得を私に伝えてくれる。
開始から3時間という頃、ようやくスキルを手にすることができたのだ。
しかも、2連続でなった電子音からわかるように、スキルは2つもゲットできている。
片手でモンスターを狩りながらチェックしてもいいのだが、やっとの思いで手にしたスキルの発表会を、こんなモンスター共とともには行いたくない。
そのため、今や私のホームとなっているメアリー武具店へと戻ることにした。
チロリンという軽快な鈴の音とともに開いた扉、その向こう側に顔をのぞかせるのは、ホムンクルスのムーちゃんである。
メアリーは最近ムーちゃんの着せ替えにハマっているようで、来るたびに装いが変わっている。
今日は白くてフリフリしたワンピースを完璧に着こなしている。
「ユウヒさん、お疲れ様でス」
「ムーちゃんもお疲れ!」
言うと、ぺこりと頭を下げてから嬉しそうに口角を少しだけ上げる。
おそらく学習しているのだろうが、ここに来てから比べると圧倒的に人間味が増して、言葉も達者になっている。
おそらくすでに語彙力は私をも凌駕しているだろう。
言い合いになれば勝てる気がしない。
パチパチと瞬きをしているムーちゃんを横に、いつものように店の奥へと入っていくと、そこには優雅にお茶をたしなむメアリーの姿があった。
「よ」
「よ、じゃないわよ。連絡くらいほしいわ」
「ごめんよ。でも、いやじゃないでしょ?」
まあそうだけど、と恥ずかしそうに顔を伏せるメアリー。
そんなメアリーの前に座ると、早速スキルお披露目会のスタートである。
「2つ、スキルをゲットしました!」
「おぉ、おめでとう」
「ありがとう!でね、まだ確認してないから今から確認するよ」
2つのスキルは、私のスキル一覧に既に加えられている。
「『大樹の恵み』と『影分身』ていうスキルみたい」
影分身はわかる。
ただ、この『大樹の恵み』というスキルがどのようなものなのか予想がつかない。
スキル一覧から大樹の恵みを選択し、詳細を開いてみると、ほかに私が持ってるスキルよりも長い説明が書いてあった。
どうやら機能は2つあるらしい。
1つは、あのアルラウネが使っていたようなツルを私も自由自在に使えるようになるというものだ。
あれは実際に戦っていても結構厄介なものだったから、正直言ってとてもうれしい。
獲得条件は、4時間以内にアルラウネを400体以上倒すことだったそうだ。
確かに相当量のアルラウネは倒したと思うが、まさか400体も倒していたとは思わなかった。
で、2つ目の効果はこれまたありがたいもので、太陽の光を受けている間、1分に1%HPが回復するようだ。
そして、木で作られたものを体につけていると、STRとVITが5%上昇するらしい。
5%と言えど、攻撃力と防御力が上がるのは非常にありがたい。
「メアリー、木の装備って作れる?」
「木?できるけど。どんなのがいいのかしら?」
「うーん、防具はあるし、武器もあるし、どんなのがいいと思う?」
「えぇ、どんなのって言われても、まず何に使うかもわからないし何も言えないわよ」
確かにそうであった。
スキル発表会とは名ばかりで、実際は目の前にいるメアリーを無視しての1人スキル閲覧の会になっていたのだから、木の装備を見に着ければスキルが発動するなんていうのは知らないわけだ。
「新しく獲得した『大樹の恵み』ていうスキルで、木の装備を付けていると攻撃力と防御力が上昇するの」
「……なるほど、なら指輪とかはどう?」
「いいね!採用!」
確かに指輪なら何かの邪魔になることはないだろうし、おしゃれとしても優秀だ。
「まあ、ただの指輪だと悲しいから、何か付与しておくわ」
「ありがとう。助かるよ!」
「今は何の仕事もないから、明日までには完成させとくわ。また明日取りに来て」
「わかった。じゃあ私は今日これでログアウトしちゃうね」
「あ、お菓子食べないでね」
ログアウトしようとログアウトボタンを押そうとしたタイミングで、メアリーから謎のお菓子禁止令が出された。
なぜかと問うと、メアリーはにやりと笑って嬉しそうに告げる。
「今夜はフレンチよ。高いところ予約してたの」
「よしゃきた!おなかすかせて待ってますよ~」
そういえば先日の4層配信の際にそんなことを言っていた。
今から夕飯が楽しみだ。
あれから2時間ほど狩り続けてみても、一切スキルはゲットできない。
アイテムボックスにはモンスターが落とす素材がわんさか溜まっており、あとで売ったら相当な値段になりそうだと多少喜びを感じる。
ただ、そんな些細な喜びでは打ち消すことのできない苦痛が私の身を襲っているのだ。
いや、そりゃ初めの方はアルラウネとの戦いに苦戦してなかなかに楽しい戦闘ができたよ?
でも、2時間も続けてれば倒し方なんてわかってくるわけで、今はひたすらに流れ作業をこなすロボットと化しているのだ。
スキルは増えない。
HPも減らなければレベルもなかなか上がらない。
ただひたすら、感情を無にしてモンスターと戦い続ける。
「きたッ!」
モンスターのうめき声の中に混じった電子音は、スキル獲得を私に伝えてくれる。
開始から3時間という頃、ようやくスキルを手にすることができたのだ。
しかも、2連続でなった電子音からわかるように、スキルは2つもゲットできている。
片手でモンスターを狩りながらチェックしてもいいのだが、やっとの思いで手にしたスキルの発表会を、こんなモンスター共とともには行いたくない。
そのため、今や私のホームとなっているメアリー武具店へと戻ることにした。
チロリンという軽快な鈴の音とともに開いた扉、その向こう側に顔をのぞかせるのは、ホムンクルスのムーちゃんである。
メアリーは最近ムーちゃんの着せ替えにハマっているようで、来るたびに装いが変わっている。
今日は白くてフリフリしたワンピースを完璧に着こなしている。
「ユウヒさん、お疲れ様でス」
「ムーちゃんもお疲れ!」
言うと、ぺこりと頭を下げてから嬉しそうに口角を少しだけ上げる。
おそらく学習しているのだろうが、ここに来てから比べると圧倒的に人間味が増して、言葉も達者になっている。
おそらくすでに語彙力は私をも凌駕しているだろう。
言い合いになれば勝てる気がしない。
パチパチと瞬きをしているムーちゃんを横に、いつものように店の奥へと入っていくと、そこには優雅にお茶をたしなむメアリーの姿があった。
「よ」
「よ、じゃないわよ。連絡くらいほしいわ」
「ごめんよ。でも、いやじゃないでしょ?」
まあそうだけど、と恥ずかしそうに顔を伏せるメアリー。
そんなメアリーの前に座ると、早速スキルお披露目会のスタートである。
「2つ、スキルをゲットしました!」
「おぉ、おめでとう」
「ありがとう!でね、まだ確認してないから今から確認するよ」
2つのスキルは、私のスキル一覧に既に加えられている。
「『大樹の恵み』と『影分身』ていうスキルみたい」
影分身はわかる。
ただ、この『大樹の恵み』というスキルがどのようなものなのか予想がつかない。
スキル一覧から大樹の恵みを選択し、詳細を開いてみると、ほかに私が持ってるスキルよりも長い説明が書いてあった。
どうやら機能は2つあるらしい。
1つは、あのアルラウネが使っていたようなツルを私も自由自在に使えるようになるというものだ。
あれは実際に戦っていても結構厄介なものだったから、正直言ってとてもうれしい。
獲得条件は、4時間以内にアルラウネを400体以上倒すことだったそうだ。
確かに相当量のアルラウネは倒したと思うが、まさか400体も倒していたとは思わなかった。
で、2つ目の効果はこれまたありがたいもので、太陽の光を受けている間、1分に1%HPが回復するようだ。
そして、木で作られたものを体につけていると、STRとVITが5%上昇するらしい。
5%と言えど、攻撃力と防御力が上がるのは非常にありがたい。
「メアリー、木の装備って作れる?」
「木?できるけど。どんなのがいいのかしら?」
「うーん、防具はあるし、武器もあるし、どんなのがいいと思う?」
「えぇ、どんなのって言われても、まず何に使うかもわからないし何も言えないわよ」
確かにそうであった。
スキル発表会とは名ばかりで、実際は目の前にいるメアリーを無視しての1人スキル閲覧の会になっていたのだから、木の装備を見に着ければスキルが発動するなんていうのは知らないわけだ。
「新しく獲得した『大樹の恵み』ていうスキルで、木の装備を付けていると攻撃力と防御力が上昇するの」
「……なるほど、なら指輪とかはどう?」
「いいね!採用!」
確かに指輪なら何かの邪魔になることはないだろうし、おしゃれとしても優秀だ。
「まあ、ただの指輪だと悲しいから、何か付与しておくわ」
「ありがとう。助かるよ!」
「今は何の仕事もないから、明日までには完成させとくわ。また明日取りに来て」
「わかった。じゃあ私は今日これでログアウトしちゃうね」
「あ、お菓子食べないでね」
ログアウトしようとログアウトボタンを押そうとしたタイミングで、メアリーから謎のお菓子禁止令が出された。
なぜかと問うと、メアリーはにやりと笑って嬉しそうに告げる。
「今夜はフレンチよ。高いところ予約してたの」
「よしゃきた!おなかすかせて待ってますよ~」
そういえば先日の4層配信の際にそんなことを言っていた。
今から夕飯が楽しみだ。
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