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166話目 Buzzちゃったか

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今日はミーティングを軽く行った後は解散し、個人で行動する。

ゲームにログインし、いつものようにメアリー武具店に入ると、そこには深刻そうな顔をしながら待っている音符猫の姿があった。

どうしたのだろうか、なにか大変なことでもあったのだろうか、と思いながら近づくと、一目散に私に土下座をしてきた。

「ほんとにごめんなさいッ!!」

「へ、は?」












地面にあたまをこすりつける音符猫を無理やり持ち上げ、ひとまず椅子に座らせる。

謝られても別にそんな謝罪を要求するようなことはされてないし、思い当たる節が全くない。

冷蔵庫に入れたプリンを食べたのは夏海だし、片付けてもすぐ部屋を汚すのも夏海だし……。

「えっと、なに?」

ただそう聞き返すしかできることはない。

「……昨日のユウヒの様子を写真に取っていたの。あの食虫植物に食べられていたシーン」

「え!?ちょっと消してよ!」

「SNSに投稿したら、バズりました……」

ず~んと空気が一気に重くなる。

私のあの黒歴史を全世界にばらまかれた。

バズったとして、どの程度の規模なのかが分からず、反応に困っていると、勢いよく扉が開かれ、メアリーが入って来た。

「ちょっと!大変だわ!ユウヒがバズってる!」

そういって一目散にスマートフォンを見せてきたメアリー。

画面に表示されていたのは……

『食虫植物に襲われるユウヒ』という題名とともに投稿されているあの写真。

「13万いいね……、13万いいね!?」

多くても1万くらいだろうと思っていたバズは、その10倍をも超える数値をたたき出している。

予想の斜め上どころか真上だ。

今この瞬間に事の重大さを理解した。

急いでゲーム内のブラウザからSNSを起動すると、私が最後に投稿した『メアリーとしゃぶしゃぶ~♪』という投稿のコメント欄は『4層配信してください!』『4層配信待ってます!』『音符猫さんの投稿詳しくお願いします!!』という系統のもので満たされ、これまた普段の投稿の10倍近いいいねが付いているのを見た。

以前コメント欄で来ていた『4層への行き方教えてください』と言ったものは、私がケーブレイクタウンへの行き方動画を上げたことで消えている。

ということは、これはあの音符猫の写真を見てきた輩だ。

「ユウヒ、期待に応えてあげたらどうかしら?」

と、にやにやしながらこちらを見てくるメアリー。

冗談半分で投稿したものが、とんでも無いバズり方をして後悔の念に晒されている音符猫。

そして、どうすればいいのかわからず困惑している私。

何も知らずに部屋に入って、謎の空気で扉の前から動けないアルミ。

様々な感情の入り乱れるメアリー武具店である。













ミーティングといっても、別にこれと言って重要な話をすることはない。

ミーティングという名の雑談会なのだから、普段は最近会ったこととかを長々と話している。

ただ、今日はその雑談の内容は私のバズのみ。

メアリーによって素早く幕を下ろされたミーティングのあとは、個人行動の時間である。

「どうしよう……、配信するべき?」

メアリー武具店から出て1層のフィールドを歩きながらそう呟く。

これだけの期待に晒され、配信を待ち望んでいるリスナーがいる。

理由は不純だとしても、その声にこたえたい。

1か月以上の休みをもらって、ろくな説明もすることなく、旅行の報告の後はしゃぶしゃぶの報告だ。

「はぁ……、やりますか」

重々しくも、慣れた手つきで配信の準備を始める。

『この後配信します。ぜひ見に来てください!』と、配信する以外何の情報もない、配信者失格と言われるべき予告投稿をする。

本職は配信者じゃないし、プロゲーマーだし、と思いながらも、もっと情報を入れたほうがいいのだろうかと本気で考えている。

まあ伝わればいいのだ。

投稿をしてすぐにコメントが付く。

『待ってました!』『復帰配信だ!』などと言った暖かいコメントだ。

……都合の悪いことは目に映してはいけない。

このインターネットの世界に飛び込んで、結構初期の方に覚えたことの一つだ。

「タイトルは、『【復帰配信】ぶらぶらフィールドワーク♪』っと、こんなもんかな」

この“♪”は、最近覚えた何でも可愛くなる魔法のアイテムだ。

うれしい時でも、気分が落ち込んでるときでも、怒っているときでも、これつけとけば大抵何とかなる。

“やばい”と同じような感じだ。

配信の準備を終え、若干の抵抗はありながらも、ぽちっと配信開始ボタンを押した。
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