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162話目
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「またこれは、随分大きなカニだね」
部屋に入ってすぐ、私たちを出迎えてくれたのは想像をはるかに超えるほどの大きさをしたカニであった。
動画では足の太さを指何本分かで表現していたけど、これは人何人分かで表現しないといけないほどの大きさだ。
「これ何人分取れるのかしら……」
「さぁ、てか、メアリーもそんなこと考えるんだ。ユウヒにでも毒された?」
「なッ!?毒されたって何!!」
「わかりましたから、とりあえず今は敵を倒すことに集中しないと」
このチームでの役割というのが見えてきたかもしれない。
それは戦闘の役割というわけではないのは誰もが理解していることだろうが……。
「よし、じゃあ簡単にだけど作戦を伝えるわ」
今回の作戦は、行ってしまえば今までとほとんど同じだ。
アルミが支援魔法をかけ、残りの3人で攻撃とアルミの守りを回すといった形になる。
とりあえず、相手の足さえ切り離してしまえば攻撃がこちらへ飛んでくることもない。
それに、相手の動きを封じることもできるわけだから、総たたきでごり押すこともできる。
「最初に私とユウヒで叩きに行くから、音符ちゃんは遠くから魔法の攻撃をお願い」
「わかった!」
狙いは関節。
狙いをしっかりと定め、足にぎゅっと力を入れる。
引き抜いた双剣を顔の前に構え、跳躍を使いながら一気に飛び込む。
同時にアルミからの支援魔法が付与され、まずは試しに一番おなか側の一番細い足を切り落とす。
思いっきりの力を込めて一発撃ちこむが、カキィンッ!と甲高い音が鳴るだけで、切り落とされることはなかった。
「かてぇ~!!」
「ならッ!」
私の短剣では刺さらなかったのを見て、メアリーが自身の大きな大剣を力いっぱい振って関節を決める。
再び甲高い音が鳴るが、その中には多少ながら鈍い音も混じっているように聞こえた。
よく見ると、攻撃が当たったところが少し陥没しているのが見える。
「これでもまだこれなのね……」
メアリーの本気の一撃は、ただでさえ威力が半端ではないのだが、それに加えて今回はアルミの支援魔法も付与されている。
「強くないとは?」
「固いとは書いてあったけど、まさかここまでとは思わなかったわね」
どうやらこのまま切り落とそうとしても、時間がかかりすぎてしまうようだ。
一度作戦を立て直すべく、音符猫とアルミのところまで引き返す。
「固すぎるわ」
「そうみたいだね。こっちから見ててもわかる」
確かに何度もあの場所を攻撃していたら切り落とせるだろうが、切り落としたいものは8つついており、その中でも今回攻撃したのは最も細くて切り落としやすいところだ。
「……少しためしたいことがあるんだけどさ、ユウヒかメアリーどっちでもいいけど造形であいつの周り囲える?」
「え?できるけど」
どうやらなにか妙案を思いついたようだったのだが、私はそれの予想を立てることができなかった。
ただ、信頼できるチームメンバーが試したいといっているのだから、私は最大限このサポートをしてあげるべきだ。
言われたとおりにキングクラブの周りをグルッと岩石で囲った。
「これでいい?」
「大丈夫。暴れるだろうから、できるだけあれが壊れないように2人は固めてほしい。アルミは魔法教科頼める?」
「「「了解!」」」
音符猫は私たちに守りのすべてを託し、杖を前に掲げながらゆっくりと目を閉じた。
それを守るため、私とメアリーで脱走しようと暴れ狂うキングクラブを造形で抑え込む。
「万物の礎となりて、世に恵みをもたらす水の女神よ、荒れ狂い、すべてを焼き尽くす火の女神よ」
詠唱が始まった。
以前使用しているのを見たグラブニュートは上級魔法で、詠唱に出てくる名は精霊であった。
ただ、今回詠唱に使用しているのは“女神”だ。
このゲームにおいて、女神の名を使う詠唱は、使い手がほとんどいないといわれている超級の魔法しかない。
使い手がいない理由は、それを1つでも習得するのに相当な時間と労力を要するからである。
音符猫は水の女神と火の女神へ呪文を捧げている。
通常1つであるのに2つある理由は簡単で、いま音符猫が使おうとしている魔法が2属性の魔法を組み合わせる“複合魔法”であるからだ。
超級魔法を1つ覚えるので大変なのに、それを2つ組み合わせた魔法を発動しようとしている。
そして、その複合魔法が初級であっても難易度が高いといわれているのだ。
(これはやばいのが来るぞッ!)
その小さな体から溢れ出る魔力は極めて濃い。
まだ詠唱は1文しかしていないのにもかかわらず、だ。
「手を取り、共に我に力を指し示せ。沸々と湧き出るマグマの如し、灼熱とともにすべてを押し流せ!」
1つ1つ、ゆっくり丁寧に言葉を紡いでいく。
1語でも間違えれば魔法は発動しない。
ただ、詠唱をしている時点で大量の魔力が失われていく。
彼女の魔力量は一流だ。
ただ、超級の複合魔法ときたらそんな彼女でも2度は発動できない。
たった1回きりのチャンス、失敗は許されない。
額にうっすらと汗を浮かべながら、彼女はゆっくりと瞼を開く。
「超級複合魔法、アセストヴィヘイヴン!!」
その瞬間、音が消えた。
だがすぐに、ものすごい風圧とともに爆音が耳に届く。
「ッ!?」
彼女から放たれた魔法による爆発は、キングクラブを吹き飛ばし、同時にこのボス部屋をも吹き飛ばした。
空気中の水分子を圧縮し、高温度に加熱する。
一見地味だが、莫大な魔力と繊細なコントロール能力、的確なイメージを行わないと発動しない魔法。
ここは水の豊富なケーブレイクタウンに存在する為、空気中に存在する水分子の数は他の場所に比べて多い。
ボス部屋を吹き飛ばしたその水蒸気爆発は、さらにボス部屋を超え、あたり一帯をも吹き飛ばし、同時に私たち4人も吹き飛ばした。
部屋に入ってすぐ、私たちを出迎えてくれたのは想像をはるかに超えるほどの大きさをしたカニであった。
動画では足の太さを指何本分かで表現していたけど、これは人何人分かで表現しないといけないほどの大きさだ。
「これ何人分取れるのかしら……」
「さぁ、てか、メアリーもそんなこと考えるんだ。ユウヒにでも毒された?」
「なッ!?毒されたって何!!」
「わかりましたから、とりあえず今は敵を倒すことに集中しないと」
このチームでの役割というのが見えてきたかもしれない。
それは戦闘の役割というわけではないのは誰もが理解していることだろうが……。
「よし、じゃあ簡単にだけど作戦を伝えるわ」
今回の作戦は、行ってしまえば今までとほとんど同じだ。
アルミが支援魔法をかけ、残りの3人で攻撃とアルミの守りを回すといった形になる。
とりあえず、相手の足さえ切り離してしまえば攻撃がこちらへ飛んでくることもない。
それに、相手の動きを封じることもできるわけだから、総たたきでごり押すこともできる。
「最初に私とユウヒで叩きに行くから、音符ちゃんは遠くから魔法の攻撃をお願い」
「わかった!」
狙いは関節。
狙いをしっかりと定め、足にぎゅっと力を入れる。
引き抜いた双剣を顔の前に構え、跳躍を使いながら一気に飛び込む。
同時にアルミからの支援魔法が付与され、まずは試しに一番おなか側の一番細い足を切り落とす。
思いっきりの力を込めて一発撃ちこむが、カキィンッ!と甲高い音が鳴るだけで、切り落とされることはなかった。
「かてぇ~!!」
「ならッ!」
私の短剣では刺さらなかったのを見て、メアリーが自身の大きな大剣を力いっぱい振って関節を決める。
再び甲高い音が鳴るが、その中には多少ながら鈍い音も混じっているように聞こえた。
よく見ると、攻撃が当たったところが少し陥没しているのが見える。
「これでもまだこれなのね……」
メアリーの本気の一撃は、ただでさえ威力が半端ではないのだが、それに加えて今回はアルミの支援魔法も付与されている。
「強くないとは?」
「固いとは書いてあったけど、まさかここまでとは思わなかったわね」
どうやらこのまま切り落とそうとしても、時間がかかりすぎてしまうようだ。
一度作戦を立て直すべく、音符猫とアルミのところまで引き返す。
「固すぎるわ」
「そうみたいだね。こっちから見ててもわかる」
確かに何度もあの場所を攻撃していたら切り落とせるだろうが、切り落としたいものは8つついており、その中でも今回攻撃したのは最も細くて切り落としやすいところだ。
「……少しためしたいことがあるんだけどさ、ユウヒかメアリーどっちでもいいけど造形であいつの周り囲える?」
「え?できるけど」
どうやらなにか妙案を思いついたようだったのだが、私はそれの予想を立てることができなかった。
ただ、信頼できるチームメンバーが試したいといっているのだから、私は最大限このサポートをしてあげるべきだ。
言われたとおりにキングクラブの周りをグルッと岩石で囲った。
「これでいい?」
「大丈夫。暴れるだろうから、できるだけあれが壊れないように2人は固めてほしい。アルミは魔法教科頼める?」
「「「了解!」」」
音符猫は私たちに守りのすべてを託し、杖を前に掲げながらゆっくりと目を閉じた。
それを守るため、私とメアリーで脱走しようと暴れ狂うキングクラブを造形で抑え込む。
「万物の礎となりて、世に恵みをもたらす水の女神よ、荒れ狂い、すべてを焼き尽くす火の女神よ」
詠唱が始まった。
以前使用しているのを見たグラブニュートは上級魔法で、詠唱に出てくる名は精霊であった。
ただ、今回詠唱に使用しているのは“女神”だ。
このゲームにおいて、女神の名を使う詠唱は、使い手がほとんどいないといわれている超級の魔法しかない。
使い手がいない理由は、それを1つでも習得するのに相当な時間と労力を要するからである。
音符猫は水の女神と火の女神へ呪文を捧げている。
通常1つであるのに2つある理由は簡単で、いま音符猫が使おうとしている魔法が2属性の魔法を組み合わせる“複合魔法”であるからだ。
超級魔法を1つ覚えるので大変なのに、それを2つ組み合わせた魔法を発動しようとしている。
そして、その複合魔法が初級であっても難易度が高いといわれているのだ。
(これはやばいのが来るぞッ!)
その小さな体から溢れ出る魔力は極めて濃い。
まだ詠唱は1文しかしていないのにもかかわらず、だ。
「手を取り、共に我に力を指し示せ。沸々と湧き出るマグマの如し、灼熱とともにすべてを押し流せ!」
1つ1つ、ゆっくり丁寧に言葉を紡いでいく。
1語でも間違えれば魔法は発動しない。
ただ、詠唱をしている時点で大量の魔力が失われていく。
彼女の魔力量は一流だ。
ただ、超級の複合魔法ときたらそんな彼女でも2度は発動できない。
たった1回きりのチャンス、失敗は許されない。
額にうっすらと汗を浮かべながら、彼女はゆっくりと瞼を開く。
「超級複合魔法、アセストヴィヘイヴン!!」
その瞬間、音が消えた。
だがすぐに、ものすごい風圧とともに爆音が耳に届く。
「ッ!?」
彼女から放たれた魔法による爆発は、キングクラブを吹き飛ばし、同時にこのボス部屋をも吹き飛ばした。
空気中の水分子を圧縮し、高温度に加熱する。
一見地味だが、莫大な魔力と繊細なコントロール能力、的確なイメージを行わないと発動しない魔法。
ここは水の豊富なケーブレイクタウンに存在する為、空気中に存在する水分子の数は他の場所に比べて多い。
ボス部屋を吹き飛ばしたその水蒸気爆発は、さらにボス部屋を超え、あたり一帯をも吹き飛ばし、同時に私たち4人も吹き飛ばした。
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