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153話目

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「えっと、夕日大丈夫?……ですか?」

ぶッ!!

「な、何その話し方!変だよ!」

「いや、だって、現実だと、会わないから……」

音符猫こと青木かなた、この子はとてもいい子だ。

ゲームの仲だとあんなにはっちゃけるようなこの子は、現実に来ると礼儀正しい。

ザ・陽の者感を醸し出している見た目とのギャップはすさまじいものがある。

「まあ、昨日よりは落ち着いたよ。」

「そうだよ!なんで昨日言ってくれなかったの!?」

「いや、心配かけたくなくてね?あと出たかったし。」

「いやいや、そういうのは違うでしょうに!確かに出たいのはわかるけども……」

そう多少声を荒げながら言うが、過ぎたことは仕方ないとすぐに落ち着きを取り戻した。

そして、深くため息をついた後、まっすぐと私の目を見た。

「今後は体調悪かったらすぐに言ってね。別にこれで大会出場見合わせになったからって誰も攻める者はいないよ。でもね、もし無理して大会に出て、それこそ今回みたいにしばらく活動休止なんかになったら、それこそ周りに迷惑をかけるんだ。」

音符猫はそういうと、ポケットからスマホを取り出して私に見せた。

「あ、これは活動休止の発表だ。」

そこに映し出されていたのは、今から30分ほど前に発表されたばかりの私の体調不良と活動休止の報告であった。

そして、その発表のコメント欄を開いた音符猫。

「これを見て。」

「ん?」

そのコメント欄には、『体調不良なのに無理やり大会に出させるなんてひどい。』『チームは把握してたのか??』『メアリーって一緒に住んでるんだろ?止めなかったんかな。』などと私ではなく私の周りにいる人物を批判する言葉が書き込まれていた。

「え?なにこれ。」

「そういうことなんだよ。こうやって周りに迷惑をかけるかもしれない。今回はすぐにメアリーが声明出したから落ち着いてきてはいるけど……」

たしかに、私が入院するほどの体調不良にもかかわらず大会に出ていたという事実、他者から見れば無理やり出場させられたと思われる可能性だってあるわけだ。

そこら辺の配慮が足りてなかった。

体調悪い時はしっかり休む。

時にはそれが最も大事になる場合もあるのだろう。

「ああ、またやらかしてしまった。」

私がそういって頭を抱えると、音符猫は「ふふっ」っと笑った後

「別にいいんだよ。過ぎたことをいつまで気にしても仕方ない。まあ、あんまり無理しないでね。」

と優しく声をかけた。






「で!そうだよそうだよ!なんで麗奈と夕日が一緒の部屋なの!?おかしいでしょうに、何か謎の力が働いている!!」

「いやぁ、私もよくわからないんだよ。ついこの前までこの部屋に入院していたんだけど、戻ってきたら麗奈がいたのさ。」

「姉ちゃん、偶然というのは時にはものすごい確率を引き当てる時があるんだよ。」

「はぁ、それにしても引き当てすぎだよ……。」

頭を押さえながらそういう音符猫、ぼそりと「いまガチャ回したら限定キャラ出るか?」と言ったのは聞き逃さなかった。

おもむろにスマホを取り出す音符猫、とあるゲームを起動すると私にその画面を見せてきた。

「ここ、引っ張ってハンティングして?」

「え、いいけど……」

ガチャが始まった。

10連だ。

「頼む~!頼む~!!」

そう祈りを捧げる音符猫。





「元気そうでよかったよ。じゃ、私は帰るね。」

がっくりと落ち込んで帰る様子が印象的だった。
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