上 下
145 / 193

144話目

しおりを挟む
2つのパーティーに分かれているが、それは両方が敵である私たちにとっては意味はない。

確かに端から見れば4対4対2の戦いだが、私たち2人からすれば8対2と変わらない。

しかも、8人全員がこちらを襲ってくるというわけではなく、敵同士で勝手にやり合う可能性もあるわけだ。

余計にたちが悪い。

どのように動くのが最適か、常に頭の中で考える必要があるからだ。

この場合、2人でうまく連携していくということが最も大事になってくる。

1対8をするのか、2対8をするのか。

集中砲火を食らわず、相手の注意を2つに分割することが可能なのは強みだ。

それに、今回は私も音符猫も大きく動きながら接近戦で戦うことができる。






戦場を一気に駆け抜けていく。

互いの思惑がひしめくこの混戦の場で、どのようにのびのびと自身のやりたいことを行うことができるのか。

「気合い入れていこう。相手のペースには乗らないように。」

「わかってる。」

1人1人着実に倒していきたい。

まずは先ほど私たちのいる倒木に向けて攻撃を放ってきた輩から倒していきたい。

魔法を使っていたということはCentresではない。

ひとまずは別のパーティーの魔法使いを攻めることとする。

こちらの存在に気付いてすぐさま攻撃をよこせるプレイヤーが全体を指揮しているのならば、それは私たちにとって非常に動きにくい状況になる。

全体を幅広く見て、それで仲間たちに指示を出す。

そういうことが得意なプレイヤーがパーティーに1人いるだけでチームプレイのやりやすさは一段と上昇する。

杖を一切使わずに魔法を放っているプレイヤーを見つけた。

先ほど私たちに向けて飛ばしてきた火魔法をCentresの人たちに向けて放っている。

どうやら私たちが接近してきていることには気が付いているようで、すぐさまこちらにも攻撃を仕掛けてきた。

先ほど放ったものと同じ火魔法だ。

火魔法がこちらに放たれるのを見て、敵の視線はこちらへと集まってきている。

全員に私たちの存在はバレているだろう。

跳んできた火球を素早く引き抜いた短剣で切り、消滅させる。

音符猫は道を開けろと言わんばかりに付近の敵に向かって得意な火魔法を打っている。

草原にも草は生えているが、先ほどまでいた森に比べれば引火する可能性は低い。

ようやく最も得意な魔法が使えて楽しそうである。

音符猫の魔法のダメージは非常に高い。

私は魔法使いじゃないから理由に関して詳しく言えないのだが、おそらくイメージがちゃんとしているのだろう。

魔法はイメージ、それは様々なところで言われていることだ。

彼女はしっかりとそれを理解してはなっているのだろう。

音をも置き去りにする速さで放たれる通常の4分の1にも満たない大きさの小さな火球は、敵に当たると爆発するように一気に燃え上がる。

通常の火球に比べて小さいため、速さを上げられ、加えて的が小さくなるために剣で切るということがやりにくい。

一見ただ小さくしているだけに見えるこの攻撃も、やり手がほとんどいないという点からわかるように、非常に難易度の高い技らしい。

細かな魔力のコントロールと、細部までしっかりとしているイメージ、そして己の技量。

すべてが最高峰な音符猫だからこそできる技である。

先ほどからこちらへと魔法を放っている少年、杖を持っていないのだから威力が弱まるはずなのに、杖を使っているほかのプレイヤーと変わらない威力で飛ばしてくる。

じっと観察してみると、彼が魔法を発動するときに左手の人差し指が光っているのを見つけた。

よく見るとそこには魔力結晶の埋め込まれた指輪が付いており、どうやらあれを使って魔法の威力を増強しているようであった。

杖じゃなくてもいいんだ、と思ったのだが、指輪だと使える魔力結晶の大きさに限りがあるため、制限があるのだろうなとも思った。

音符猫が開いた相手の魔法使いへと続く一直線の道を、全速力で駆け抜ける。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

オワコン・ゲームに復活を! 仕事首になって友人のゲーム会社に誘われた俺。あらゆる手段でゲームを盛り上げます。

栗鼠
SF
時は、VRゲームが大流行の22世紀! 無能と言われてクビにされた、ゲーム開発者・坂本翔平の元に、『爆死したゲームを助けてほしい』と、大学時代の友人・三国幸太郎から電話がかかる。こうして始まった、オワコン・ゲーム『ファンタジア・エルドーン』の再ブレイク作戦! 企画・交渉・開発・営業・運営に、正当防衛、カウンター・ハッキング、敵対勢力の排除など! 裏仕事まで出来る坂本翔平のお陰で、ゲームは大いに盛り上がっていき! ユーザーと世界も、変わっていくのであった!! *小説家になろう、カクヨムにも、投稿しています。

処理中です...