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139話目

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「やっぱり強いな。優勝しろよ。」

兄は倒れざま、私に向かってこうつぶやいた。

その後すぐにエフェクトとともに兄のアバターは消滅したため、何か私が言葉を返すことはできなかった。

ただ、関りが少なかったとはいえ家族が応援してくれているのはうれしいことだ。

両親ももしかしたら配信越しに私を応援してくれているかもしれない。

両親だけではない。

いつも配信に来てくれるリスナーやゲームのファンで応援してくれている人もいるだろう。

そういう人の期待に応えられるよう、頑張っていかないといけない。

そう強く思いながら私と別れて戦っている3人の元へ急いで向かう。








「いい?おそらく敵は3人だわ。テントの中に入っているはず。」

「わかってる。一気に焼く?」

「枯れ葉に燃え移って大変なことになるのでは?」

「確かにそうだ。」

テントの近くの大木の陰に身を隠し、奇襲の計画を立てる。

まだ比較的暗い時間であるのだが、彼らの予定次第では少し早めに起きてくる可能性もある。

ササッとやってしまうのが良いだろう。

「造形で一気に地面をくぼませようと思うのだけど、私のSPではできて1つだわ。」

大剣使い専用のスキルは取得できないものの、どの職業でも使用することのできるスキルや鍛冶師用のスキルは取得できる。

以前巻物を2人で見てよかったと常々感じるものである。

「どっちに2人いるかな?」

「どちらも同じに見えますね……」

「まあどっちでも大丈夫よ。近いほうさっさとやっちゃうわ。」

一気に足に力を入れるが、ユウヒと異なってスキルは発動しない。

スキルがなくても渡り歩けるように日々のトレーニングは欠かさない。

経験値をたくさん入手しては研究に研究を重ねてそれぞれのステータスに振って来た。

おかげでスキルがなくてもそこそこの跳躍力や速度を出すことができる。

跳ぶようにして手前側のテントに近づく。

着地時にできるだけ音が立たないよう、つま先が先に地面に着くように意識をする。

普段背中につけている大剣は軽量化の為にアイテムボックスにしまった。

そのためかいつもより軽い私の体は、ほとんど音を立てることなくテントの近くに着地することができた。

ジェスチャーで後ろの2人に合図を送り、早速作戦開始である。

まずは地面に手を当て、テントの下がすっぽり抜けるように造形を発動させる。

すると、大きく音を立てながら地面が垂直に削れはじめ、5mほど降下したところでぴたりとその動きは止んだ。

テントの中からは間抜けな叫び声が聞こえてきたが、穴の中に崩れて入ってくる小石や砂などの音によってかき消されている。

その異常なほどの音に目を覚ましたのか、もう1つのテントのファスナー式の扉が開いた。

中から出てきたのは急なことだったのか最低限の装備で出てきた2人のプレイヤーであった。

「外れた。」

私のカンは結構当たるんだけどなぁ……、と思いながら相手のことを観察する。

先に出てきた男の腰についていたのは普段私が鍛冶で使っているものより一回り大きいサイズのハンマーである。

おそらく槌使いなのだろう。

その後ろから出てきた身長が低めな中学生くらいの見た目をした男の子は先端に大きな魔石のついた杖を握りしめている。

おそらく魔法使いだろう。

沈めたテントの中で人がもぞもぞ動いているが、絡まって外に出てくることができないらしい。

出てくる前にさっさと先に姿を現した2人を倒してしまおう。
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