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115話目 大会

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食欲があまりなく、最後まで食べきることはできなかった。

薬を飲み、もう1度眠ることにする。

現在時刻は午後5時を回ったところで、試合の開始まであと4時間しかない。

準備なども考えて残りの猶予は3時間ほどだと考えるべきだ。

焦りを感じながらも眠りについた。




「夕日、調子はどう?」

夏海の声がして目が覚めた時、時刻は午後8時をぎりぎり回らないほどの時間であった。

体温計で熱を測ってみると、朝よりは下がったものの依然として高い熱であった。

体調自体も朝より落ち着いてはいるもののいいわけではない。

「やっぱり今回は出場を見合わせよう。」

「それはだめ!」

出場を見合わせるのだけはだめだ。

「なぜ?」

「ここで引いたら後悔すると思うから。」

私がはっきりそういうと、朝見せたようなあきらめの混じった顔をした夏海は、「立てる?」と言って軽く持ち上げた。

立ってみると、まだ眩暈はするものの歩けないほどではない。

いつもゲームをしている部屋はこの部屋の隣で、先ほどからちょくちょく行っていたトイレよりは近いため、思ったよりも楽に行くことができた。

私はいつも使っている機械に横になり、そのままゲームの中に入っていった。




いざゲームの中に入ると、先ほどまでの苦しみが嘘のように引いていった。

意識を無理やりゲームの世界に持ち込むフルダイブ機能では、外の刺激は内部まではやってこない。

その代わり、視界の端の方に、今現実の体が受けている刺激が文字として表示されている。

そこには大量の症状が並んでおり、いやでも体調不良を認識させられた。

試合開始まではあと1時間ほどで、すでにメアリー武具店にチームメンバーは集まっているらしい。

私はケーブレイクタウンからワープ機能でアンダーケーブシティーの広場へとワープし、広場に面したメアリー武具店入り口に書いてあった『本日休業』という看板を無視して中へと入っていった。

そのまま2階へと上がると、そこには3人の姿があった。

「あ!ユウヒ!遅かったじゃない!」

入るとすぐに音符猫が私に話しかけてきた。

どうやらメアリーはほんとに話さなかったらしい。

そして、チラッと目をやると呆れたような表情を見せていたため、この後も言う気はないのだろう。

もちろん私も体調不良に関しては言う気がないので、少し笑いながら「ああ、ごめんごめん!」と返事した。

そして、周りにせかされるかのように椅子に座ると、最終ミーティングがスタートした。
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