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98話目 水中戦
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私たちはそのまま町へと引き返した。
「ユウヒさん、大丈夫でしょうか。」
「まあ、あいつなら大丈夫なはずだけど……。今日はちょっと解散にしようか。」
町に着くなり、私たちはそのまま解散することにした。
もしかしたらすでにやられてしまって、現実に戻っているかもしれない。
そう思い、私はすぐにゲームからログアウトする。
意識が現実へと引き戻され、いつも通りの何も変わらない天井が見える。
身体を少し起き上がらせ、右側に目をやると、そこには夕日の姿があった。
「まあ、あいつのことだし大丈夫よね。」
まあ、死んだところで1日ログインができないだけで、そこまで大きな影響はないのだが。
いや、大会前なのだから、1日も大きなロスだろう。
今の私にできることはない。
ただ夕日を信じて待つのみだ。
まずいッ!
そう思ったときにはすでに遅かった。
私の足はケルピーによって完全にロックされ、抜け出すことは不可能であった。
このままでは川の中へと引きずり込まれる。
心の中でそう思った。
そして同時に、抜け出すことが不可能であるということも悟った。
私は目一杯空気を吸い込み、ケルピーと一緒に激しく流れる川の中へと入っていった。
激しく流れる川の中、幸いなことにそこにモンスターの姿はなかった。
地底湖エリアにはリザードマンと呼ばれるトカゲ型のモンスターが多く潜んでいるのだが、川の流れが速かったためか、ここにその姿はなかった。
水の中に入ってもなお、ケルピーは私を掴んで離さない。
(きっとこのままそこまで引きずり込んで窒息死させるんだな。)
ゲームの為、多少の補正はかかると思うが、持って5分だろう。
5分のうちにこいつと蹴りをつけないと、私はそのまま窒息死してしまう。
そうなると、1日ゲームができなくなってしまうため、チームに多大なる迷惑をかけることになる。
それは避けたい。
私は双剣を強く握り、力強くケルピーに向かって突き刺そうとするのだが、ケルピーはくねくねと泳ぎ、それを難なく避けてしまう。
次に、私は投げナイフのスキルを使って攻撃してみるのだが、川の流れが速いために、思った通りの飛んで行かない。
これはなかなか厳しい戦いになりそうだ。
まさかこんなことになるなんて思っていなかったわけで、使えそうなアイテムは何一つ持っていない。
フィールドで油断してはいけないということはわかっていたのに、現実でもゲームでも見たことがない馬を目の前にして、警戒心より私の好奇心の方が勝ってしまったのだ。
どうにかして抜け出せないかともがく私を、嘲笑うかのように激流の中をくねくねと進んでいく。
ケルピーが進むたびに、私は流れに充てられて体が大きく揺れる。
これでは攻撃なんかできたものではない。
さて、どうすればいいだろうか。
さきほどから、水の中をキラキラしたものが飛んでいることがある。
魚でもいるのかと思っていたのだが、よくよく観察してみると、それは夜光結晶のかけらであった。
夜光結晶のかけら……、何かに使えそうな気がする。
夜光結晶は自然生成される結晶で、この地底湖エリアには多く生成されている。
自然生成?そうだ!
思いついてしまった!
私は自然生成されるものに対して使用することができるスキルを持っている。
『造形』というスキルである。
夜光結晶のかけらは非常に小さく、それをすべて避けることはケルピーであっても厳しいようで、たまにぶつかっている。
しかし、相当小さいためにぶつかったところで一切傷がつくことはない。
そのため、ケルピーは避ける素振りすら見せない。
時間的に見てもチャンスは一度きりだろう。
すでに水中にもぐってから4分ほどが経過しているし、一度この技を使ったら、ケルピーは夜光結晶をよけながら進むだろう。
大きく揺れる中、私は思考加速も使いながら集中をする。
(いまだ!)
多少大きめの夜光結晶のかけらがケルピーに当たった瞬間、私は思いっきり造形スキルを発動させる。
夜光結晶は大きく形を変え、槍の形になってケルピーに突き刺さっている。
(きた!)
どうやらいい感じのところに刺さったようで、ケルピーの体からは血がにじみ出ている。
ケルピーは体を大きくうねらせながら苦しんでいるが、私を離すことはない。
どうやら作戦は失敗したようだ。
私の意識はそのまま途切れてしまった。
「死んで、ない!?」
気が付いたとき、私は浜辺のようなところに流れ着いていた。
「ユウヒさん、大丈夫でしょうか。」
「まあ、あいつなら大丈夫なはずだけど……。今日はちょっと解散にしようか。」
町に着くなり、私たちはそのまま解散することにした。
もしかしたらすでにやられてしまって、現実に戻っているかもしれない。
そう思い、私はすぐにゲームからログアウトする。
意識が現実へと引き戻され、いつも通りの何も変わらない天井が見える。
身体を少し起き上がらせ、右側に目をやると、そこには夕日の姿があった。
「まあ、あいつのことだし大丈夫よね。」
まあ、死んだところで1日ログインができないだけで、そこまで大きな影響はないのだが。
いや、大会前なのだから、1日も大きなロスだろう。
今の私にできることはない。
ただ夕日を信じて待つのみだ。
まずいッ!
そう思ったときにはすでに遅かった。
私の足はケルピーによって完全にロックされ、抜け出すことは不可能であった。
このままでは川の中へと引きずり込まれる。
心の中でそう思った。
そして同時に、抜け出すことが不可能であるということも悟った。
私は目一杯空気を吸い込み、ケルピーと一緒に激しく流れる川の中へと入っていった。
激しく流れる川の中、幸いなことにそこにモンスターの姿はなかった。
地底湖エリアにはリザードマンと呼ばれるトカゲ型のモンスターが多く潜んでいるのだが、川の流れが速かったためか、ここにその姿はなかった。
水の中に入ってもなお、ケルピーは私を掴んで離さない。
(きっとこのままそこまで引きずり込んで窒息死させるんだな。)
ゲームの為、多少の補正はかかると思うが、持って5分だろう。
5分のうちにこいつと蹴りをつけないと、私はそのまま窒息死してしまう。
そうなると、1日ゲームができなくなってしまうため、チームに多大なる迷惑をかけることになる。
それは避けたい。
私は双剣を強く握り、力強くケルピーに向かって突き刺そうとするのだが、ケルピーはくねくねと泳ぎ、それを難なく避けてしまう。
次に、私は投げナイフのスキルを使って攻撃してみるのだが、川の流れが速いために、思った通りの飛んで行かない。
これはなかなか厳しい戦いになりそうだ。
まさかこんなことになるなんて思っていなかったわけで、使えそうなアイテムは何一つ持っていない。
フィールドで油断してはいけないということはわかっていたのに、現実でもゲームでも見たことがない馬を目の前にして、警戒心より私の好奇心の方が勝ってしまったのだ。
どうにかして抜け出せないかともがく私を、嘲笑うかのように激流の中をくねくねと進んでいく。
ケルピーが進むたびに、私は流れに充てられて体が大きく揺れる。
これでは攻撃なんかできたものではない。
さて、どうすればいいだろうか。
さきほどから、水の中をキラキラしたものが飛んでいることがある。
魚でもいるのかと思っていたのだが、よくよく観察してみると、それは夜光結晶のかけらであった。
夜光結晶のかけら……、何かに使えそうな気がする。
夜光結晶は自然生成される結晶で、この地底湖エリアには多く生成されている。
自然生成?そうだ!
思いついてしまった!
私は自然生成されるものに対して使用することができるスキルを持っている。
『造形』というスキルである。
夜光結晶のかけらは非常に小さく、それをすべて避けることはケルピーであっても厳しいようで、たまにぶつかっている。
しかし、相当小さいためにぶつかったところで一切傷がつくことはない。
そのため、ケルピーは避ける素振りすら見せない。
時間的に見てもチャンスは一度きりだろう。
すでに水中にもぐってから4分ほどが経過しているし、一度この技を使ったら、ケルピーは夜光結晶をよけながら進むだろう。
大きく揺れる中、私は思考加速も使いながら集中をする。
(いまだ!)
多少大きめの夜光結晶のかけらがケルピーに当たった瞬間、私は思いっきり造形スキルを発動させる。
夜光結晶は大きく形を変え、槍の形になってケルピーに突き刺さっている。
(きた!)
どうやらいい感じのところに刺さったようで、ケルピーの体からは血がにじみ出ている。
ケルピーは体を大きくうねらせながら苦しんでいるが、私を離すことはない。
どうやら作戦は失敗したようだ。
私の意識はそのまま途切れてしまった。
「死んで、ない!?」
気が付いたとき、私は浜辺のようなところに流れ着いていた。
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