病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

べちてん

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71話目 これから

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「わたし、少しでもお金返すから。頑張って働いて。」

「え?別にいいよ。私お金持ちだから。」

「でも、私の気持ち的に少しでも返したい。」

「うーん、3428億。」

「へ?」

「3428億円、返せる?」

さんぜんよんひゃくにじゅうはちおくえん……。

無理だ。

私が寝ずに食事もとらずに毎日フルで働いても無理だろう。

「それにさ、夕日は病気が完治したとはいえ、今まで動いてこなかったから体力もないでしょ。そんな状態で働かせることはできない。」

「じゃあ、どうすればいい?私はどうすれば少しでもこの恩を返せる?」

「もう親御さんに話は通している。私さ、広いおうちに1人で住んでるんだよ。さみしいんだよね。」

「え?」

「一緒に住んで?」

「ええええええええ!!!」



退院の日。

あれからゲームにかける時間を今までの半分くらいに減らして、その浮いた半分の時間でリハビリをした。

私のリアルの方の足腰は走れるほどにはついた。

でも、まだ一番重かった病気が完治したというだけで、体が弱いのには変わりがない。

今後も通院が必要になるといわれた。

無理な運動もできるだけ避けてほしいとのことだ。

私は物心ついた時から入院なので、家に行ったことがない。

メアリーの、いや、夏海の家が嫌ってわけではないんだけど、それでも家族がいる家に一度行ってしまったら、私は夏海の家に行きたくなくなってしまうかもしれない。

夏海は嫌なら別に一緒に住まなくてもいいとは言ってくれたけど、さすがにあんな大金を、ほんとにあんな大金を……。

断れないってわかっていってるのではないか?

「じゃあ、夕日。元気でね。」

「ちゃんとご飯食べるんだぞー。」

「うん!ありがとう!」

お見送りには両親だけが来た。

今日は平日で、兄と弟は学校があったためだ。

「もしお時間が取れるのであれば、ぜひお子様たちを連れて遊びに来てください。」

私たちはメアリーが用意した車に乗り込んで病院を後にした。

私と両親はそれぞれ、姿が見えなくなるまで手を振り続けた。



「あの、あまりこういうの聞くもんじゃないと思うんだけど、私ってメアリーは持ってても数十億くらいかなって思っていたの。実際はどれくらいなの?」

「うーん、まあ10兆超えてるんじゃない?しらんけど。」

Oh……10兆……。

「あのさ夕日、ほんとに家族の居るお家じゃなくてよかったの?やっぱり寂しいんじゃない?」

「まあ、ちょっとは寂しいとは思うよ。でも今までも病院でほとんど家族とは会わなかったし、夏海と一緒に住めるんだったらいいよ。」

「そっか。」

「私、まだ実感が湧かないよ。だって本当ならもうすでに死んでいたのだから。でも生きてる。」

「そうだね。これからはゲームの中だけじゃなくて現実世界でも一緒に遊ぼうよ。やりたいこといっぱいあるでしょ?」

「うん。私に沢山の初めてを教えてよ。」

「なにそれエロい意味?」

「違う!!健全だから!!」

メアリーはおちょくるかのように二ヒヒと笑った。

それから私と夏海はひたすらにサンライズファンタジーの話をしまくった。

これから始まる新生活は不安なことも多いけど、まあ何とかやっていけるんじゃないかな。



「ここが私の家だよ。」

そういって到着したのは、最近完成したとかいう東京の一等地にある超高層ビル。

「え!?ここってオフィスとかお店とかそういうのじゃないの??」

テレビで見た時、ここは下の方は様々なお店が入るショッピングモールになっていて、他にも映画館とか水族館とか。

そういう施設が入っていると聞いた。

そして上の方には某有名通販サイトとか、そういう大企業のオフィスが入っていると。

最上階近くにはお金持ちが行くようなレストランもあるらしい。

そんなところに住む???

「確かにお店とかの建物だね。でも62階と63階は住居スペースだよ。といっても私専用だけどね。」

ん?私専用??

「ここ、私が管理しているの。」

……。

私、新生活に不安いっぱいです。
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