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66話目 正体

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フードをかぶったプレイヤーは、前には私、後ろには壁と完全に逃げ場を無くし、その場に座り込んでいる。

一度ゲーム抜ければいいのになーと私は思っていたのだが、相手は動揺しているのか、そのようなことはしなかった。

「で、君は何で私に付きまとうの?」

「……」

相手はひたすらに無言を貫いていた。

「話してくれないの?」

私がそう語りかけても、相手は一切の反応を見せることなく座り込んでいた。

(はぁ、このままじゃ話が進まないよ。)

心の中でそう呟いて、思い切ってかぶっていたフードを取ることにした。

「失礼。」

そういって私は優しくフードに手をかけ、相手が抵抗するそぶりを見せなかったため、そのままふわっとフードを取った。

「!?」

フードを取って露になった相手の素顔は私が以前に見たことがある顔、何なら仲良く話をしたこともある顔だった。

「Sakuraさん……。」

「ち!違うの!私は別にユウヒさんを困らせようと思ってしたわけではなくて……、いや、私はユウヒさんを困らせてしまったからこのような状況になっているのですね。」

「で、どうしたの?フレンド登録しているのだから用事があるのならメッセージでも送ればいいのでは?」

「……私はあなたにチートの疑いをかけ、ここ2週間ほど後をつけていました。」

「え?」

2週間後をつけていた?

私全然気が付かなかったし、メアリーも気が付いていたような素振りも見せていなかった。

「そう。で、どうだった?」

「結論から言うと、それは私の勘違いであったと分かりました。」

そうしてSakuraの口からこうなった経緯が語られていった。

Sakuraは自身の腕に相当な自信を持っていたらしい。

個人戦では負けたことがなく、第1回大会に出ていたら間違いなく私が優勝していただろう、と心の底から思っていたようだ。

そしていざ迎えた2週間前の第2回大会、最後のシーンで私に圧倒的な実力差を見せられ、敗北した。

その時に感じた異常なほどの反射神経や速度、その他の行動等を含め、チートではないかと思うところがあったらしい。

不意を突いてもわかっていたかのように止められてしまう。

後ろから攻撃してもノールックで躱されてしまう。

気が付いたらとどめを刺される瞬間で、本物の化け物だと恐怖を感じたらしい。

その後、控室で会った私からは戦闘時に発していたあのオーラが消えて、ただの少女になっていたらしい。

……話を聞く限り疑うのは無理ないのかなと思ってしまった。

実際私がSakuraの立場に立った場合、あとをつけるまでの行動にはいかないだろうが、多少の疑いを持つだろう。

ていうかなぜ私なのだろう。

正直言ってメアリーのほうがチートっぽいと思うんだけど。

「まあ、ある程度のことはわかった。だからつけていたんだね?」

「はい。本当に申し訳ございませんでした。」

……

気まずい。

これこの後どうやってわかれればいいんだ?

ていうかこの後Sakuraとはどうやって接すればいいのだろうか。

私は3層の探検が落ち着いたらSakuraを狩りに誘おうと思っていたし……。

「あ!あの!勝手なことかと思いますが、もしよかったら私と手合わせいただけますか?」

「手合わせ?決闘機能でか。」

「そうです。私はここまでユウヒさんのことをみっちりしっかり録画を回しながら監視してきました。」

録画!?

ま、まあいい。

「今なら勝てる気がします!ぜひお願いします!!」

決闘かぁ……。

私決闘あまり好きじゃないんだけど。

「まぁ、いいでしょう。やろっか、決闘。」

「ほんとですか!!」

「じゃあさっさとやっちゃおうか。」
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