上 下
51 / 193

50話目 バトルロワイアル⑫ 朝日とディオメーデース

しおりを挟む
本当にパーティー数が少なくなった。

私たちはあの後もう1日あの穴内で過ごしたのだが、その間にパーティーは私たちを含めて10個まで減った。

残り10個になったということで、一気にフィールドは縮まり、私たちが居るここ、草原の真ん中が最終決戦地となるようだ。

「どうする?まだ籠っとく?そっちのほうが勝つ確率はぐんと上がるだろうけど。」

「いや、出よう。さすがにそれは私のプライドが許さないし、これで勝ったとしても批判が集まるだけでしょう。」

「ユウヒならそういうと思った。出ようか。」

そういって私たちは穴から出ることにした。

今の時刻は午前5時で、ほかのパーティーはまだ動き始めていないだろう。

基本的に私たちは日が昇ってから少し時間がたったころにいつも動き始めていた。

このイベント中で最も早いスタートだ。

「おぉ……。」

遠くの山脈から登ってくる朝日は、これがゲームであるとわかっていても思わず声が漏れてしまうほどに美しかった。

昨晩は雨が降ったのだろう。

あたりはうっすらと霧に覆われていて、葉についている水滴が朝日を反射し、幻想的な雰囲気が醸し出されている。

一昨日のこともあって、心にあった錘が一気に外れた私には、その光景はさらに美しく見えた。

「んっ~~!はぁっ!」

私は深呼吸をしながらゆっくりと伸びをする。

それを真似するかのようにメアリーも伸びをし、私を見た。

私たちは顔を見合わせて笑った。

きっと今日でイベントの優勝チームが決まるのだろう。

初めのほうは不安だった。

しかし、今の私たちには不安なんてものは一切ない。

私たちなら優勝できる。

ただそれだけだ。

「メアリー、この後どうする?」

「そうだね、もうここで待機する感じでいいと思う。無理に動かなくても敵はやってくるでしょう。」

その言葉の通り、10分ほどたったころにパーティーが現れた。



「ゲッ、よりにもよってSunsetかよ。今の状態にピッタリじゃねえか。」

こうして私たちのチーム名を少しいじりながらやって来たのはチーム「ディオメーデース」だ。

ディオメーデースとはギリシャ神話における戦いの神アレースに勝利したといわれている人間の名前だ。

その言葉の通り、このチームは今まで危なげなく戦いを勝ち抜いており、パーティーキル数においては私たちに次ぐ3位となっている。

「いくら第1回優勝者だとしても4対2だ。負けるわけはないわな。」

「言ってくれるじゃない。私たちに勝てるとでも?」

「へっ、余裕だね。行くぞお前ら!」

……、

リーダーがかっこよく試合へ流れを運んだと思ったのだが、呼びかけてもパーティーメンバーは動かない。

「い、行くぞ!おい!何やってるんだ!」

「あ、あの!ユウヒさん!私ユウヒさんのファンなんです!!握手してください!!」

「「「は?」」」

あまりに突然のこと過ぎて心の底声が出てしまった。

なに?ファンだ?

「ちょ、ちょっとまてよヤム!今はそんなこと言っている場合じゃ……」

「なによそんなことって!あんたも私がユウヒさんのことが好きなこと、いや!愛していることを知っているでしょう!」

「いや、知ってるけど……、ちょっと!お前らもなんか言ってやってくれ!!」

「「僕とも握手してください!!」」

「はぁぁぁああ!?」

「ユウヒ、あんた人気者だね。」

「あ、あはは……。」

「ごめんなお前ら。前言撤回だ。全然余裕じゃなかった。」

同情するよ。



とりあえず一通り握手をし、気が済んだようだったのでちゃんと試合が始まった。

相手は私と握手ができたことによって士気が向上、やる気満々である。

しかし、どうやらそのやる気は私へと向いているわけではなく、私とペアを組んでいるメアリーに対する嫉妬と混じり、メアリーのほうに向いているようであった。

リーダー対私、メアリー対3人ということになった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!

べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!

処理中です...