病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

べちてん

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32話目 TFT⑦ 決勝戦②

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メアリーの声が聞こえた気がする。

さっき会ったときに一番前の席で見てるって言ってたから多分今会場にいるだろう。

まあでもそっちに気を取られてるとこいつ相手じゃ危ないので今はとりあえず目の前の試合に集中する。

唐突にレイヴが攻撃を仕掛けてきた。

このままではまた押されてしまうということを感づいたんだろう。

「凪ッ!!」

レイヴはそう叫ぶと大きく持っていた短剣を私に向かって振る。

すると私に向かって大きな風の刃が飛んできた。

初めてみるスキルだ。

私はそういう感じのスキルをあまり持っていないのでちょっとほしい。

いきなり見たことのないスキルが出たものだからちょっと反応に困ってしまった。

とりあえず避けるように跳躍を使って高跳びの要領で飛び越えた。

多分私を少しびっくりさせるのが狙いだったのだろう。

少なくとも私が観戦していた試合で使っているところは見なかったし、わざわざスキル名を大声で叫ぶことによって威圧感を与えたのだろう。

あの1つのスキルの中に攻撃以外の行動も詰め込むというのはすごいことだ。

「っ!?……もう1回!凪ッ!!!」

多分あれは当たると思っていたのだろう。

とりあえず1回見てみてわかったのはその『凪』っていうスキルは剣を振ることによってそこから風の刃を繰り出すスキルだろう。

その風の刃は振った方向に向かってものすごいスピードで飛んでくる。

よっぽど上位のプレイヤーじゃないと避けられないだろうし、きっとレイヴも避けられないと思って私に使ったのだろう。

しかし私は軽々避けてしまった。

だから少しびっくりして言葉に詰まったのだ。

そうしてもう1回私に凪を放った。

2回目のスキルを使用するスパンがすごく早かった。

これは非常にいい。

私は1回目のスキルをジャンプする形で避けている。

ということは空中に漂っている時間ができる。

空中に漂っている間は相手の攻撃がいつ来てもおかしくないのでしっかりと注意をしておくことに加えてこの後の着地場所やこの後の地震の攻撃のことなど、様々なことに気を使っていないといけない。

だからこの空中というタイミングを狙って私に2回目の攻撃を仕掛けたのだ。

これにはさすがの私もびっくり。

正直今の体制では空中ジャンプを使って逃げることもできないし着地も間に合わない。

ということは、使うスキルはただ一つ。

「造形!」

造形スキルを使って地面をおおきく盛り上がらせ、私と凪による風の刃との間に大きな壁を作った。

(あぶねー!危うく一刀両断だった……。)

その風の刃は作られた壁に当たり、大量の砂ぼこりを巻き上げながら壁を真っ二つに切った、のだが……。

どうやらレイヴは先ほどの攻撃の時に1回ではなく2回、凪のスキルを発動していたようだった。

スパンが短かったために1つ目の物に隠されるように飛んできていたため気が付かなかった。

「ユウヒ!!」

観客席にいたメアリーは思わず声を上げる。

さすがにまずい。

あの岩壁の切れ方から見るにあたると真っ二つになってしまう。

……、

しかし、その心配は杞憂だったようで、壁の向こうにユウヒの姿はなかった。

「えっ!?」

「こっち。」

「っ!?」

ガキーーーーーーーーーンッッッ!!!

あたりに剣と剣のこすれる音が鳴り響く。

いつの間にかレイヴの後ろに回り込んでいたユウヒとそれに声をかけられたことで気が付き、とっさの反応でユウヒを攻撃したレイヴの姿が会場にはあった。



ユウヒはこのゲームのトッププレイヤーだ。

それは自分でも思ってるし、他人から見てもそうだろう。

そんなトッププレイヤーがレイヴの2重攻撃を予想しないわけがない。

何なら気が付いていたのだ。

まあ私も声を出すのだが、このゲームでスキルを使うときに関しては声を出す必要がない。

魔法は出す必要があるのだが。

レイヴも試合を観戦してた時に声は出していなかった。

でも今回は2回とも声を出して『凪』のスキルを発動していた。

純粋に気合いを入れるために声を出していたという可能性もあったかもしれないのだが、ユウヒはそうとは取らなかった。

スキルの詠唱を1回だけ行った。

それをレイヴは強調したかったのだ。

あのような勝負の場所では耳から入ってくる情報も非常に大きな情報だ。

例えば地面の中からモンスターが出てくるとき、ゴゴゴという音が鳴るだろう。

ドラゴンが近づいてきているときは羽ばたく音が聞こえるかもしれない。

このように音は重要な1つの試合中の判断材料だ。

詠唱が1回だとその音による情報が『今からくる攻撃は1回だけ。』という情報を得るのだ。

それによって油断をさせたかったのだろう。

まあ、今回はユウヒのほうが上手だっただけであり、決勝戦以外の相手にならものすごく通用して、ここで試合が終わっていたのだろう。

風の刃で壁が切られたとき、その壁はスパンと真っ二つに切られた。

1つのかけらも出さずにだ。

でも砂埃が舞った。

まあ勘のいいひとなら気が付くだろう。

あれは私の行方をくらますための煙幕として造形を使って出したのだ。

大量の煙幕が会場を覆っている間に私は跳躍、空中ジャンプ等のスキルを今度は詠唱せずに発動、素早くレイヴの後ろに回り込んだわけだ。
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