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31話目 TFT⑥ 決勝戦①

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「こんにちは。」

「はい。こんにちは。」

正直見た目だけ見たら強そうには見えない。

すごく優しそうだしいいゲーマーって感じかな?

「お互いにまずここまでこれたことをとても喜ぶべきだと俺は思います。」

確かにそうだ。

1000人をも超えるイベント参加者の中からここまで登って来た。

それはすごいことだし、とても誇れることなのだ。

このイベントの参加資格は1層を突破していること。

そのうえで抽選だ。

相当レベルの高いプレイヤーや知名度の高いプレイヤーは優先的に参加ができるような配慮もされている。

抽選で強いプレイヤーや有名なプレイヤーが軒並み落とされてしまったらイベントは盛り上がらなくなってしまうからだ。

1層をまだ突破していない人もいるわけでそういう人はこのイベントにエントリーすらもできない。

抽選に落ちた人も数え切れないほどいるだろう。

そんなイベントの決勝戦にいる私たちはこのゲームのTop of topだろう。

「実は俺は2層が解放されてから最も早くボスを攻略したんです。ユウヒ先輩のパーティーは2人だったということだから3人目の突破者になります。私は4人でパーティーを組んで突破しました。だから2人で突破したユウヒ先輩の強さは相当なものなのでしょう。」

(なんでユウヒ先輩???)

現在1層を突破するためには基本的に4人以上のパーティーを組んで攻略を行うのが主流になっている。

友達がいないとできないと思うだろう。

しかし、そこらへんは安心できる。

すでに2層へ到達しているプレイヤーが一緒に行って攻略を手助けしてくれたりするのだ。

手助けしてくれるプレイヤーはずっと手を出してるわけではないので自分で討伐した感じもしっかりある。

手伝いはドロップ品を入手でき、依頼者は2層へ行ける。

WinWinの関係だ。

「ユウヒ先輩!よろしくお願いします!!あなたは私の憧れのプレイヤーです。あなたの様な強い前衛職を目指して私は日々努力をしてきました!この勝負、勝たせていただきます!」

私が、あこがれのプレイヤー???

何言ってんだこいつは。

でもまあ嫌な感じはしないよね。

自分に憧れてこのゲームを頑張っている。

うれしいことじゃあないか。

「よし!かかってこい!」

私の大きな返事の声と同時に試合開始のゴングが鳴った。



彼は多分私の試合を見ていたと思う。

実は試合中にもちらちらレイヴの姿は見えていた。

私の動きを研究していたのだろう。

マジで向上心があっていいプレイヤーだ。

(さあ、例の観察力とやらは私の動きをどうとらえたのだろうか。)

彼の強みはその観察力。

戦っている状態であれほどの判断を下せるのだから、戦う前にじっくり観察されたのなら相当私の動きは読まれているだろう。

だったらその判断を真正面から崩してやろうではないか。

自分の癖をわかっていないほど私は弱くはない。

こっちだってこのゲームに人生をかけているんだ。

私の生きがいなんだ。

このイベントにお遊び気分で臨んでいるわけではない。

私は攻撃するときに相手の正面まで行ったら右に避けてから右わき腹を攻撃することが多い。

だからこの行動パターンを変える!

超加速を使って一気にレイヴのそばまで詰める。

レイヴの反射神経、動体視力は相当すごい。

多分普通の人だったら私の超加速は見えない。

そうとうスキルの熟練度をあげたからマジで速いよ。

でもそれにしっかりと反応し、受けの構えをとる。

さすがにこの状態から逃げる手段は持っていないのだろう。

逆に持っていたのならその手段を教えてほしい。

私もそれは習得したい。

私は牽制もかねて基本的に相手の目を見て攻撃する。

レイヴの目の動きはすごい。

隅から隅までをほんとに一瞬で見渡している。

首を動かさずに見えるぎりぎりまで警戒し、隙が見えない。

私は近づいたらまずはいつも通りに右に避ける。

そして右の脇腹を攻撃……、するのではなく、大きく背中を通って左わき腹を攻撃。

そして少し飛び跳ねて頭部をキックした。

その時に跳躍のスキルを使ったため、作用・反作用の法則によってレイヴの体は頭から思いっきり吹っ飛ぶ。

脇腹に関しては正直あまりしっかりと切ることはできなかった。

攻撃を与える直前にレイヴは体をひねって回避したのだ。

さすがに上位のプレイヤーは違う。

ほんとに思いっきり飛ばしたのだが、空中で姿勢を変えたために体を打ち付けるということはなかった。

舞台上で向き合う双剣を両手に逆手で握った金髪の少女と、短剣を両手で構えた赤色の髪の好青年。

あたりに張り詰める緊張感。

いつ試合が大きく動くかわからない。

観戦している側も一言も話さずにじっとその試合に意識を集中している。



「ユウヒ、勝ってくれ。」

メアリーはもちろんユウヒを応援だ。

会場の一番前の一番見やすい席で手を合わせ、ユウヒを応援している。

メアリーはユウヒが裏で緊張していたのを知っている。

何せ決勝戦だ。

大勢の人が様々な方法で視聴している。

大勢の人がどちらが勝つのかドキドキしながら見ているし、その中にはもちろんユウヒのことを応援してくれている人もいるわけだ。

絶対に負けるわけにはいかない。

ユウヒは過去にこのような大きな期待を受けることなどなかったわけだからそれはそれは緊張している。

でもメアリーがそこに優しく声をかける。

「ユウヒなら大丈夫。頑張れ。」

ユウヒはいま、親友の言葉を胸に、活力にして決勝戦の舞台に立っているのだ。



「ユウヒ!やったれ!!」
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