上 下
24 / 193

23話目 巻物

しおりを挟む
「おう嬢ちゃんおかえり。原因はわかったか?」

「はい、わかりました。近いうちに風は止むと思いますよ。」

「そうかそうか!それは安心だ。ありがとう。」

『クエストが完了しました。』

お、出た出た。

正直結構簡単なクエストだったな。

なんかドラゴンとかが出てきて退治するとかギミックを解いて風を止めるとかそういう感じのやつを想定していたからなぁ。

まあ楽だったからいいか。

「嬢ちゃん、よかったらこれを持って行ってくれ。」

「はい。ありがとうございます!」

そういっておじさんから渡されたのは多分お金が入った袋と巻物だった。

「その巻物拾ったんだけど使い道がわからないから持ってってくれ。」

お!?これは強いスキルの予感がする!!

「ありがとうございます!!!」

そうして私はうっきうきで元オアシスを後にした。

ちなみに強風は2日後には止み、オアシスにも少しずつ水が戻っていってるらしい。



「さて!この巻物はなんだろな。」

私はアイテムボックスから巻物を取り出す。

「って!どうしてうちの店でやるんだ!!」

「あ、ごめんごめん。私プレイヤーホーム持ってないからちょうどいいところがなくて!」

プレイヤーホームとはお金を払うと買うことができる家だ。

結構上位のプレイヤーだったら持ってる人も多いけど私は買ってない。

こういう時に頼りになる建物が既に存在するからだ。

その名は『メアリー武具店』。

あの1層攻略者の1人が運営している素晴らしき武器屋である。

実際名前がホームページに載ってから客足が伸びているらしく、本人は「大儲け大儲け!ウヒヒ~!!」と大盛り上がりである。

「で、今日はどんな用なの?」

メアリーは不機嫌そうな顔で言うが声のトーンは完全にうれしそうなトーンをしている。

隠しきれていない。かわいいな。

「2層でクエストを受けてクリアしたんだけどその報酬に巻物をもらったの。多分スキルだろうから開けようと思ったんだけどちょうどいい場所がなくてここに来たんだ。」

「ふ~ん。中身は言われてないってことね?」

「うん。多分1回しか発生しないクエストだと思うから相当いいスキルが入ってると思うんだけど……。」

すると興味を持ったのかメアリーがこっちによって来た。

「ちょっと私にも見せて。」

「いいよ~。じゃあ開けるからね。」

巻物を開けた瞬間スキル取得の音声が流れた。

「スキル『造形』を獲得しました。」

「なんか造形っていうスキルらしい。」

「造形?なんか作るってことかな。」

多分あってるだろう。

名前的には何かを形作るスキルだと思う。

「ちょっと確認してみるね。」

そういって私はスキルスロットからスキルの効果を見てみる。

造形:物体を操り形を作るスキル。

「物体を操り形を作るスキルって書いてあるんだけどどういうことだ?」

「あれじゃない?地形をいじって柱を出したりとかできるみたいな?」

「あ~、ちょっとやって見ていい?」

「え?ちょ、ほどほどにお願いね。」

許可は得たので少し使ってみることにします。

まあ一般の客が入れるスペースにやったらそれこそほんとに迷惑になっちゃうので裏のほうに移動する。

裏の普段メアリーが作業をするスペースの床はよくある土間スペースみたいな石の床になっているので多分フィールドと同じ効果が出るでしょう。

多分作りたいものをイメージして発動するとそれができるみたいな感じだと思うので小さな柱をイメージしてみる。

「造形」

実際にスキルを発動してみると地面が盛り上がって小さな柱ができた。

「「おぉ。」」

これもっと大きくしたらめちゃくちゃ使えるかもしれない。

「これもっと大きくしたらめちゃくちゃ使えそうだね。」

「うんメアリー、今私も同じこと考えてた。」

「あ、そう?なんか嫌だわ。私もユウヒと同レベルってこと?」

「ちょっ、何それ失礼な!」

「フッ、冗談よ。」

なんか嘲笑われた気がしてちょっと悔しい。

「なんか檻みたいなのをイメージしたらモンスターを捕まえられるんじゃない?」

「おお!!それはいい!!ちょっと実際にやってみる。」

檻を正確にイメージして「造形」と唱える。

すると地面がみるみる盛り上がって檻ができた。

「ちょっとユウヒ!なんで私を閉じ込めるの!」

「うへへ~、できたできた!メアリー??出してほしい??」

「は?早く出しなさいよ。」

おおっ……、ちょっと私今命の危険感じたんだけど……。

なんか空気が一瞬で冷え切ったぞ。

「あ、えっと……、マジすんませんでした。」

「はぁ。まあいいわ。」

するとメアリーはにやりと笑ってある言葉を口にした。

「造形」

!?!?!?

「え?????どういうこと?あんた持ってたの??」

私の周りの地面がみるみる盛り上がっていつの間にか私は檻の中に入れられてしまった。

「アハハハハッ!!無様ねユウヒ!!!」

「おいここから出せ!!!てかなんで持ってるんだ!!!」

「なんかさっきユウヒが巻物開けた時私もスキル取得したんだよ。多分一緒に見てたからじゃないかな。」

「クッソ。早くここから出してくれ!!」

「あ!私仕事思いだした!!また後でね!!」

「えっ!ちょっとメアリー!!」

私が解放されたのはその日の夜だった。



「ユウヒごめんよ。」

「もうメアリーなんて知らないから!!」

「はいはい。私が悪かったです。ていうか普通にワープ機能で町の中心戻ればよかったのに。」

「あっ……。」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

オワコン・ゲームに復活を! 仕事首になって友人のゲーム会社に誘われた俺。あらゆる手段でゲームを盛り上げます。

栗鼠
SF
時は、VRゲームが大流行の22世紀! 無能と言われてクビにされた、ゲーム開発者・坂本翔平の元に、『爆死したゲームを助けてほしい』と、大学時代の友人・三国幸太郎から電話がかかる。こうして始まった、オワコン・ゲーム『ファンタジア・エルドーン』の再ブレイク作戦! 企画・交渉・開発・営業・運営に、正当防衛、カウンター・ハッキング、敵対勢力の排除など! 裏仕事まで出来る坂本翔平のお陰で、ゲームは大いに盛り上がっていき! ユーザーと世界も、変わっていくのであった!! *小説家になろう、カクヨムにも、投稿しています。

処理中です...