中学婿日記

紅野 雪菜

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第絶章―苦界浄土―

プロローグ

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夏が始まった七月頃の話 

…大丈夫ですか?と問われればそうで無い事は確か。現在進行系で軟禁状態にあるのに、大丈夫な訳が無い。
拒もうにも、こんなヒョロッヒョロしてる女々しい体格で、綺麗に割れた腹筋を持つあの男には絶対勝てないし
風呂すら数日間まともに入って無い汚らしい俺はこの上ない屈辱を感じていた。
こうにも不釣り合いなのかと…
全て万全に物事が進んでるアイツと何も計画性もないゴタゴタした俺の人生

劣等感が癌の如く住み着いては、徐々に進行して最後には悶死させられる様な気がしていた。忌々しい

喉乾いてません?近くの自販機でアセロラジュース買ってきたのでどうぞと、よくある500mlのペットボトルを渡される。
丁度俺の好きな飲料だし、有り難く受け取った。変な穴が空いてないかと結露したペットボトルを少し眺めて、外暑いんだろうなと呑気な頭で考える 

暑いのは嫌いだ、汗かいてべったりとした感じが特に。生暑い風も勿論嫌いだ
ここに連れて来られた時間帯が深夜で良かったが、やけに生乾きの布のニオイがした外の奇臭が未だ鼻から離れずにいた


キャップを開け、干乾びた喉を潤そうとした時、男はアセロラジュースお好きでしたよね?と思い出したかの様に言った。
その一言で、口部まで飲み口を持って行った手が止まる

……コイツにアセロラジュースが好きだといつ教えったけ??確かに愛飲してるが、誰かにその事を言った事は一度もない。
どう云う事だ??アイツとの付き合いは小学校低学年時代からだが、アセロラジュースにハマりだしたのはつい最近だと云うのに何故??
低容量の頭を回して思い出そうとするが、はやり心当たり無い

少し疑念が雪崩込んだ。男は目をうっそりとさせて此方を見ている
いや、眺めてると言った方が相応しい
ジロジロ見られては何事もやり難い
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