Sorry Baby

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4.次の約束

人の目

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「ねぇちょっとカリナ。
聞いてほしいことがあるんだけど。」
 
いつものようにカリナとランチ。
カフェテリアは一階だから人ごみの中階段を下る。
みんな行き先は一緒。

「どうしたの?
てか、いつもの場所空いてるのになんで?
ここ暑いじゃん…。」

カフェテリアでいつも人が座ってないような西日の入るところに席を取った。

「ここが一番人来ないし…。
あんまり人に聞かれたくないんだよ…。」

うちの学食は日替わりで5種類の中から選べる。
席についたらメニュー表がおいてあって決まったらテーブルの上の注文表に書き込んで回収されるのを待つ。

「とりあえず何にするか決めよう。 
あれ?こんなの前からあった?
美味しそうだからこれにしようかな。」

「じゃああたしも。」

カリナがメニュー表から顔を上げてあたしの顔を覗き込む。 
 
「今はご飯どころじゃないって感じね。
まあ聞くわ。」

「カリナ、ハルキ覚えてる?」

「ああ、遠目でしか見てないし、顔わからないけどまあ名前はわかるよ。」

そういえばカリナにはハルキがSCマドリードのセカンドチームにいること言ってなかったような?

「昨日、ハルキが試合に招待してくれたんだけど…。」

「待って?ハルキって何者なの?
スポーツ選手?」

大きくて丸い目が見開いて瞳がこぼれ落ちそう…。  

「SCマドリードのセカンドチームなの。 」

「マジ!?
今その人二十歳って言ったっけ…。
日本人でセカンドチームだとしてもSCマドリードにいる時点で奇跡みたいなものじゃない?」

「ジュニアユース?からみたい。
名門とは言われてるよね…。」

頼んだ焼きカレーセットが運ばれてきた。 
チーズがとろけてグツグツ言ってる。 
熱そう…。

「それでね、ハルキが取ってくれた席がVIP席だしそのあとご飯行くだけなのにリムジン用意してくれたりとか…なんか昨日すごく舞い上がっちゃって、楽しくて。 
でも家に誘って帰らないでって言ったけどあっさり帰っちゃって。」

「待って待って待って?
情報量が多すぎるんだが??
まずなんだっけ?VIP席にリムジン??」

あたしが頷くとカリナがため息をついて頭を抱えた。 

「スポーツ選手ってやっぱお金持ってるんだね…。
とりあえずご飯食べよ…。 」

カリナが面白くなさそうにサラダのレタスにフォークをぐさりと刺す。

「あーでもパパが言ってたけど選手がチケット買うんなら多少は割引がきくとか。
リムジンもレンタルだと思うし…。
プロとは言ってもセカンドチームだから…大卒社会人くらいの月給だとは思う。」

「確かに。
寮に入るか、チームの所有するアパート借りるかも選べるって噂だよね。
私とは住む世界別だと思ってたから深く考えたことなかったけど…。」

それで?とカリナが話を続けようとした。

「あぁ…。
家に誘って色々あたしは話したかったし、一緒にいたいなと思ったんだけど寝たらすぐに帰っちゃって。」

「は!?寝た!?」

カリナが大声で言うもんだから一気に視線があたしに集まったのを感じた。

「違う!!
ハルキがソファで寝てすぐに帰ったの!!」

「焦った…。
てかだめだよ、付き合ってもない男を家に入れたら。
何されるかわかったもんじゃない…。」

「…?
あの人、女には困ってないだろうしあたしみたいなチンチクリン興味ないと思うよ。」

カリナが焼きカレーを食べる手を止めて大きくため息をついた。

「興味ない女をVIP席に招待したりリムジンで迎えに来たりするわけないじゃん。
馬鹿なの?
それがフォトグラのフォロワー1万人いる人の反応?」

「う、うーん。」

それに、とカリナは続けた。

「さっきの周りの反応見たでしょ?
未蘭乃が誰かと付き合うとかなったら男も女も気になる。
何をしていなくても着飾っていなくても目立つ。
そういう存在なんだよ未蘭乃は。」

ノーメイクで帽子をかぶって飲み物を買いにいっただけでヒソヒソとあたしの話が聞こえる。
隣のクラスの名前も知らない男子がバスで話しかけてくる。
全部親の七光りのせいだと思っていたけど、カリナの話を聞いてそうだったんだと気付かされた。

「カリナは…あたしと一緒にいたらやっぱ迷惑?」

「そんなこと思ってたら友達になんかならない。
私が言いたいのは…そのハルキだっけ、その人もトップチームに昇格するんだったら下手なスキャンダル起こせないんだと思うよ。
しかもうちらは未成年じゃん、もしなにかあって…とか考えたら法的な意味でまずいと思うし。
向こうは少なからず未蘭乃に好意はあると思うよ。」

2個なんて大した年の差じゃないのに。 
昨日の今日だから別にいいんだけど連絡来ないし…今思えばあの時の朝まで付き合ってとかってそういうこと?
…空気読めなさすぎじゃん、あたし。

「そういえば話変わるんだけど。
あのカフェによくいる男いたじゃん?  」

焼きカレーを食べ終わってアイスティーを飲んでいたときカリナが話を切り出した。

「ああそうだ。
あたしカリナのことでって、その人にバス停で声かけられた。」

ライアンのことだ。 
あれからDM何も来なかったけどどうなったんだろう。

「そうそう、ライアン。
私のカバンについてるアニメのキャラ見て同じアニメ好きだから話してみたかったんだって。
今日の放課後、一緒にちょっとグッズ見に行こうって。」

「なるほど。
てか、コスプレのアカウントフォロワー5000人になってたよね?」

カリナと仲良くなってから知ったけど、カリナはまあまあなアニメオタクで。

「あくまで趣味、自己満。」

カリナはこれぞヨーロッパの美人といったような綺麗な顔をしている。
鼻がすごく高くて、スタイルが良くて肌が真っ白。

コスプレした写真を見せてもらったけど、カリナの美しさを残しつつちゃんとそのキャラクターになりきっていて、こういうのを2.5次元っていうんだろうなと思った。
いいねもフォロワー数より多いし、そういうカリナもコスプレイヤー界隈では有名人なのでは?と思っている。

「ちなみにライアンはカリナがコスプレイヤーだってこと知ってるの?」

「まだそれは言ってないけどいずれわかるんじゃないかな?
もっと仲良くなったら言うつもり。
それよりも未蘭乃とハルキの方が私は気になるわ。」

ハルキ…ねぇ。



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