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3.注目
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しおりを挟む「じゃあ今日はこのへんで。
ミラノちゃん、またね。」
「ごちそうさまでした。」
三人にしては高すぎる会計。
なんなら俺は二人分は食べた。
「じゃあな、ジャン。
火曜日に練習で。」
「おう!」
丁度リムジンが迎えに来て俺と未蘭乃の前に止まった。
酒が入って少し気が大きくなっていたかも。
「お迎えに上がりました。南沢様。」
未蘭乃が運転手に会釈をしてリムジンに乗り込んだ。
「は!?それに乗るの!?」
「未蘭乃ために用意した。
じゃっ!」
ジャンはぽかんとした顔をしてリムジンを見送っていた。
「…ジャンさん、すごく陽気な人だね。」
「疲れただろ、ごめんな。」
楽しかったよ、といって未蘭乃が笑ってくれた。
「次の練習は火曜日?」
「そう。
試合の次の日はオフ。
明日は家でゆっくりするよ。」
「本当はもう眠たいでしょ?
お店にいるときからバレないようにあくびしてるのあたしからまる見え。」
…バレてたか。
疲れもあるけど酒飲むとどうしても眠くなるんだよな。
「あのさ。」
「ん?なに?」
未蘭乃が俺の顔を覗き込む。
「今度は二人で飯でもどうかなって。」
「うん、行こ。」
心の中でガッツポーズしたところでリムジンは未蘭乃の家の前に着いた。
「今日はたくさんありがとう。
VIP席も、リムジンも。
なんだかんだご飯も楽しかった。」
「なんだかんだって!
まあ確かにジャンが舞い上がってるの見て俺も面白かった。」
未蘭乃の手を取ってリムジンを降り、玄関まで送る。
「…あれお父さんは?」
そういえば迎えに来たときも思ったけど車がない。
「出る前はいたの。
あたしが今日見に行ってたのパパが知り合いから聞いて知ってる…。
あ、そうだ。」
未蘭乃が顔を上げて俺の目を真っ直ぐに見る。
透き通るような青くてキラキラした目に吸い込まれそうだった。
「パパの知り合いもパパもハルキのことすごく褒めてたよ。」
「マジか。
あの白崎浩志から褒められるなんて恐れ多いな…。」
未蘭乃が家の鍵を開けたのを見計らって手を離す。
「明日月曜日なんだからちゃんと学校行けよ、悪ガキ。」
思わず未蘭乃の頭をなでた。
…なんか酔っ払ってんのかな。
いつもより、いやいつも可愛いんだけど…。
いつもよりなんか可愛く見えるし、いつもより大人っぽい。
…全然ガキじゃないよお前は。
「…せっかくなんだから上がっていけば?」
「え?あー…。
10分くらいなら。
一括年俸豪邸も見学したいし?」
なんだこの展開。
…マジで?いいの?
スキップしたいくらいの気持ちだったけど冷静を装ってリムジンの支払いを済ませて、未蘭乃の家に上がった。
「お邪魔します。
…いや、リビング広っ!」
人が住んでるにしては片付きすぎているリビング。
でかすぎるテレビ。
L字型のでかいソファ。
「友達が遊びに来るのは初めてかも。
こんな広いけどあたしほぼ部屋で生活してるから…。
あ、おもちのお水替えようっと。」
「おもち…?」
ソファの影から白い毛玉が出てきた。
「うちの猫。
白くてふわふわのもちもちだからおもち。」
おもちはソファの角にすりついてから俺を見てニャーと鳴いた。
「ただいま、おもちちゃん。
座れって言ってるよ。」
「え、じゃあ失礼します。」
おもちは俺が座ると膝に乗ってきた。
ほわほわであったかい。
「ふっ…可愛い。」
「ハルキ好かれてる。
パパには全然寄り付かないんだよ。」
おもちは俺の膝の上でゴロゴロいいながら寝る体勢に入っていた。
「おもちって名前…誰がつけたの?」
「あたし。可愛いでしょ?」
膝の上で寝たおもちを撫でながら未蘭乃がそう言った。
「おもちがいなかったら寂しくて死んじゃうよ。」
「正直、家にお父さんが帰ってこないって言ってるの聞いてて寂しくないのかなって心配してたけど…おもちがいたんだな。」
ちょっと安心した。
…膝のあったかさでなんか眠くなってきたな。
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