翔莉と悠莉【上】

ハル

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新生活

転校初日

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学校に着くとまず職員室へ向かい、担任の山田先生に挨拶してチャイムの鳴るのを待つ翔莉。

「キンコン・カンコーン」

何処の学校もチャイムは同じだなぁ?

「藤森行こかぁ」

「はい!」

どんなクラスだろうか?元々緊張する性格では無いが、誰も知らない所へ放り込まれる時の、この感覚って何だろう?

教室の前でスッーと息を吸込み、先生の後から教室に入った。

テレビで見るような先生が黒板に名前とか書いて、自己紹介とかするのかなぁとか思ったら、先生が

「転校生の藤森翔莉君だ」と、

だけ紹介して空いてる席を指して座るように手だけで合図してる。

クラス皆んなの興味津々の眼の中、ホームルームが終了した。

休み時間になると女子三人組が早速矢継ぎ早に話し掛けてきた。

「藤森君、どっから転校してきたん?」

「……。」

「家どこらへん?」

「兄弟おるの?」

一言も返せずにいると、

「無口やなぁ。あかんでそんなんやったら彼女でけへんで?でもそん時は私がなったるから。」

後ろから、のちに親友となる圭介が

「お前らみたいな、ブスをなんで藤森が彼女にせなあかんねん。」

あっち行けとばかりに、三人組を追い払う。

「俺、山本圭介 野球部。」

「前の学校で何かやってたん?」

「いや、何も」

「そっか、坊主頭じゃないから野球はやって無いと思ったけど…」

「明日、体育でソフトやるけど希望とかある?」

「少年野球やっていたから、ルールとかは知ってるよ」

「そっか、じゃスタメンや、うちのクラス見ての通り男子が少ないから助かるわ!」

それだけ言うと、圭介は自分の席に戻って行った。

一方悠莉は、最初は緊張したものの、

「藤森悠莉 夢は歌手になる事。」と大きな声で言い、困り顔を作って

「だから彼氏は作りません」と言うと
クラスは大爆笑。

この持ち前の明るさで、クラスに馴染み
一緒に付いて行った母に、もう帰っていいよとばかりに、バイバイと手を振る。

帰りは、男子二人と、隣の席のソラちゃんと四人で無事帰って来た。

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