死神の業務日報

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エルサベネットの事情

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「あの、これ、良かったら体拭いて下さい」

 女性は部屋の中に入るとすぐに木棚から一枚の布を取り出し、蒼星に優しく渡してくれた。

「あ、ありがとうございます」
「濡れたままで風邪引いたら大変ですしね♪」

 彼女は蒼星にニコッと笑って見せた。
 え? なにこの人ちょっと優しすぎない? これもしかするとワンチャン誘われてる? ずぶ濡れの俺に母性本能くすぐられちゃった的な? 男子高校生を飼いたいお姉さん的な!?

 ラナ・・・ごめん俺・・・大人の階段上っちまうかも。

「部屋汚れてもイケないし」

 なんだ只のビッチか。

 蒼星は、煩悩を取り払うべくきっちり108回体を拭くと、ピッと背筋をのばして見せた。

「それで、話しというのは」
「・・・はい、その前に私はこの町出身の娘エルサ・ベネットと申します、あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」

 彼女は行儀よくお辞儀をすると、少し上目遣いで蒼星を見た。

「あ、はい、えっと俺・・・僕はディケーの町である役人をしていまして、この町には業務の一環で伺いました」
「・・・業務?」

 女性は真剣な眼差しで蒼星の返答を待つような視線を向けた。

「あー、えっとそうですね、説明しなきゃダメですよね」

 正直、蒼星はここで自分の役職や仕事内容を明かすべきではないと考えていた、先ほどの一件でも分かる様に、事件が発生した当時この村はその渦中にあり、リゲル曰く『今でも強い遺恨が残る場所』とのことだった、そんな場所で自分の本当の目的を話すことは、村人達を刺激する事に他ならない行為だ、

 でも彼女の視線はとても真剣で、きっとこの人には真実を話す必要があるんだろうと、蒼星は無意識の内に判断した。

「わかりました・・・僕は【死刑執行人】遊佐蒼星です、魔人ドラグニア・ラルスの死刑執行を担当する執行人ですが、ある目的の為にこの村に来ました」

「そうですか、あの男の・・・」

 エルさは噛みしめる様に言うと言葉を続けた。

「私は、私の父は、あの男に殺されました」
「えっ」
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