死神の業務日報

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山林の戦い

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 だが『白狼』はラルスがあと一歩の所まで追い詰めると、いつもすんでの所で逃げてしまい、ラルスは今だに対峙する事が出来ていなかった。

「ドラグニア少将殿! 大隊編成あと20分程で整いますゆえ、少将殿もご準備の程お願い致します」

「・・・あぁ」

 ラルスは重い腰を持ち上げると、金色の鮮やかな刺繍で国のシンボルが施されているマントを羽織り軽快な足取りで森の中へ入っていった。


【山林の戦い】


「少将どの! 大隊500名、山林への配置完了いたしました!」
「・・・よしっ、補給部隊の現状は?」

「山の北側に約80名、南側に30名が分断されている状態ですが、既に各兵站物資の確保は完了しております!」

「よくやった! あとは・・・孤立した部隊の救援だな」

 開戦から約1年半、ラルスの部隊は元々隠密性の高い諜報業務を任されていたことから、敵国との国境沿いの山脈警護の任についており、苛烈を極める国境沿いの戦闘を経て、山林部隊のスペシャリストとなっていた。

「はい! では少将どのも向かわれますか?」
「あぁ、もちろんだ、私の部隊は特に激しい戦闘の予想される山の北側へ向かう」

「了解であります!」

 ラルスは将校には珍しく自らも率先して戦場に立つ人間で、国境に面した山の北側は特に激しい戦闘が予測される為、自らが先頭に立って戦う事で敵の注意を自らに向け、部隊が動きやすくなるように自らが囮となる作戦を立てた。

 バタッ、バタッ!

「はぁ、はぁ! し、少将どの! で、伝令より通達! 南側斜面にて接敵! 敵中隊強襲により強制的に交戦中! 中隊コードは【白狼】です!」

「クソッ! やられた」

 斜面北側へ向かって進行中のラルスへ伝令からの報告が飛び込んだ、【白狼】はラルスの読みを逆手に取って、手薄になっている南側斜面に強襲をかけ、一気に部隊の分断を成功させてみせた。

「大隊諸君! 直ぐに南側斜面に向かって進行! 救助部隊数名を除き全軍進行せよ! 数では我らが勝っている! 奴らに目に物見せてやれ!」

 ラルスはすぐさま隊を編成し直し、白狼の待つ南側斜面へと進行を指示した。

「・・・今日は厄日だな」

 誰にも聞こえないほどの小さな声で、ラルスは独りごちてみせた。
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