死神の業務日報

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違和感の答え③

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「えっ・・・あ・・・えっ!? ここ・・・なにっ」

「うふふ、焦ってるみたいだねー、それにしても、まさか彼女の声を聴いたのが君みたいな人間とは・・・ふふっ・・・興味深いねー♪」

 ん? 何言ってんだこのクソガキ、てかここどこだよ!

  図書館の中か? あーくそ! もうわけわかんねぇ。

「えっと・・・まず、お前は誰だ、そしてここはどこだ・・・

俺は頭がおかしくなった? てかそもそも現実かこれ? ラノベに夢中で寝落ちしたとか? とにかく早く図書館に帰してくれ」

「わー質問いっぱい♪」

 ニコニコしながら蒼星をおちょくる少女に苛立ち、蒼星は思いっきり少女を睨んだ。

「わー怖い♪ 大丈夫だからそんなに怒らないでおくれよー」
「いや、この状況で怒らない方がおかしいだろ!」

「ごめんごめん、ボクも人と話すのは久しぶりだから少し興奮しちゃったのさ♪」

 コクッと小首をかしげて悪戯っぽい表情を浮かべる少女に若干の殺意を覚えたが、

ここで声を荒げたら相手の思うつぼだと思い、蒼星はだまって次の言葉を待った。

「えっと・・・初めまして! 僕は『法の神 テミス』といいます、その名の通り君たちの世界でいう『神様』にあたる存在だよ♪ 

そしてここは、あっち側とこっち側の境目みたいな感じかな? 例えて言うなら乾麺と生麺の間!カップ麺のお湯を入れて1分だった頃ぐらいの場所だよー、

 あっ、あとこれは夢じゃないし、死後の世界でもないよ♪」

「いや、例え分かりづらすぎるだろっ!」

 ボケがあまりにもあからさますぎてついツッコんでしまった・・・少女は椅子の上でお腹を抱えて笑い転げていた。

「はぁ・・・ていうか、説明聞いても全く理解できないんだが、そもそもその話が本当だとして、俺はなんでここに連れてこられた? 

偶然か? それなら直ぐにでも家に帰らせてほしいんだけど」

「ふふーん♪ 残念だけどそれは出来ないなー、君はある意味選ばれてここに居るんだ、そしてこれから君は、あっち側の住人になってある仕事に就いてもらう事になるよ」

「はっ? そんなん納得できるか! 俺はまだ学生だし日本じゃ本人の意思に反して働かせる事は法律違反で捕まるんだよ、

法の女神ならそのくらいわかっとけ、とにかく俺は帰らせてもらう」

 蒼星はそう言うと、少女に踵を返して歩き出した、だがどれだけ歩いても視界は真っ白なままで、どこまで行っても出口が見える気配はなかった。

「はぁ・・・もういいから・・・どうすれば良いか説明してくれ」

 体感で1時間ほど歩いたところで、蒼星はあきらめてテミスの話を聞くことにし呼びかけた。

 すると、また突然目の前に椅子が現れテミスはニコニコ頷きながら蒼星の前に現れた。

「うんうん♪ やっと僕の話を聞く気になったんだね!」
「・・・聞くだけだ!」
「はいはいっ♪ それじゃあ何が知りたい?」
「・・・まず、俺はどこに行くんだ?」

「うん、君がこれから行くところは、エスカと呼ばれる君たちとは別の次元に存在する世界で、君にはそこで『死刑執行人』になってもらいたい」

「しけ・・・はっ? 人を殺せって事か? そんなの出来るわけっ!」

「まーまー、そう慌てないでおくれ、死刑執行人は実際に誰かを手にかける仕事じゃない・・

でもまー・・・これは良いか、とにかく君は、そのエスカで死刑執行人になって、色々な人と触れ合ってほしいんだ、それが君の為にも、彼女の為にもなると思うから」

「はぁ・・・どうせ納得できないって言っても聞かないんだろ? てか彼女って誰だ?」

「ふふっ、やっとわかってきたんだね♪ 彼女は、君を選んでここに連れてきた人だよ、君に救ってほしいと願ってる、まー彼女自身には自覚はまったく無いんだけどねー」

 テミスはニコッと笑って、蒼星を指さした。

「いや、救うってそんな事俺に出来るわけねーだろ、そもそも自分以外の人間に興味持てないやつが、誰かを救うなんて役不足も良いところだ」

「でも君は選ばれた、それはきっと君にしかできない事だからだと思うよ? だから僕から一つだけ贈り物をあげる」

「贈り物?」

「ふふっ、何かは今は内緒♪ でも君ならちゃんと使ってくれると思うから」

「なんだそれ・・・はぁ」

 正直今だに自分に何が起きていて、これから何をすれば良いのか全く分からない、でもたぶんどんなに拒否した所で、こいつは聞く耳持たないし自分ではどうしようもできないんだろう、

それならいつも通り相手の考えに乗っかって、うわべだけ同調しているふりをしておけば、後はどうとでもなるはずだ、表面上は策略に乗ったふりをしながら、何とか帰る方法を探してやる、

俺にはかけがえのない守るべき『普通を絵にかいた様な人生』ってやつが待ってんだ、こんな所でこんなわけわからん奴に乱されてたまるかっ!

「じゃあ、行こうか」

 テミスは少し真剣な面持ちで蒼星に手を差し伸べた。

「・・・ああ、わかった」

 蒼星がテミスの手に触れると、再び視界は白い光に包まれて蒼星はゆっくりと目を閉じた。
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